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峻烈のムテ騎士団  作者: いらいあす
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第十二話 童貞を殺す鎧 その2「Faulty Tower」

「うわー、全然流行ってないお店があるー」


 そのふざけた言い方の声の主を見るとデーツであった。


「おかえり団長ー」

「俺だってこんなお店やりたくないんですが?」

「そんな釣れないこと言うなよー。せっかくお前にお土産を買ってきてやったというのに」

「お土産?」


 デーツの後ろを見ると、何かを乗せた手押し車を押すバーベラとマァチの姿があった。


「いいないいなタナカ君!お土産なんてさ!」

「どうせろくでもないもんだぞきっと」

「失敬な! 僕たちがせっかく君なんかのために買ってきてやったのに」

「失敬な奴。タナカのくせに」

「どう考えても俺に対しての失敬の方が強いんだが?」


 バーベラとマァチの不満を一心に受けながら、タナカはそのお土産だという押し車の中身を見る。それは漆黒の鎧であった。


「鎧?」


 不思議そうな顔で鎧を見つめるタナカ。


「嫌か?」

「嫌って言うか、まあデザインはかっこいいとは思うが、俺は暗殺者だから鎧みたいな重たい防具は付けない主義でな。

 それよりも、なんで俺に鎧を買ってきたのかが気になる」

「ふっふっふっふー。これはお前にぴったりの鎧だと思ってな」


 デーツは自慢げな顔で押し車の中の鎧を指さす。


「ぴったり? サイズのことか?」

「お前のスリーサイズなど知ったことか。いいか? これはな、"童貞を殺す鎧"なのだ!」


 デーツが喜々しく唱える"童貞を殺す鎧"というワードに、タナカは目が点になる。


「は?」

「だから童貞を殺す鎧だぞ」

「なるほど、タナカ君にぴったりだね」


 ローナもデーツに同調する。


「いやー、これを見つけた時は驚きだったね」

「うん。これ見た瞬間にタナカを思い出した」


 感慨深そうに店先での思い出を語るバーベラとマァチ。だが、タナカは釈然としないままだ。


「だからなんて俺にぴったり?」

「童貞を殺す鎧だぞ? これを着た童貞は……死ぬ!」


 今度はものすごく真剣な表情で語るデーツに、タナカはちょっとした疑問を投げかける。


「なあ、ひょっとしてお前ら俺の事童貞だと思ってる?」

「「え?」」


 その疑問に、今度はムテ騎士団の目が点になる。


「え? 童貞だろ?」

「うん、童貞でしかない」

「もう見るからに童貞」

「女の子と手つないだことなさそう」


 言いたい放題のムテ騎士団に、タナカは残酷な真実を告げる。


「いや、童貞じゃないけど」


 静まり返る空気。やがてデーツが怒りの表情でこう叫ぶ。


「嘘をつくな!!!!」

「嘘じゃねーよ!!!!」


 すると、デーツとタナカの怒号合戦にアストリアが起きる。


「なんだ!!? 夏野菜の反乱が起きたのか!!!?」

「あ、起きたのアスティ。今、タナカが童貞じゃないって抜かし始めた」

「え!!!!? タナカー!!! お前童貞じゃなかったのかー!!! 騙されたああああ!!」


 アストリアが叫ぶちょっと恥ずかしい言葉が、周囲の人々の耳に響く。


「なんでどいつもこいつも、俺が童貞だと思ってたんだよ!?」


 その言葉にムテ騎士団達は顔を合わせて会議をする。


「そういえばなんでタナカが童貞だって思ってたんだ?」

「うーん、醸し出す雰囲気とか?」

「人相とか?」

「もう理屈じゃないんだよ」

「タナカだからな!!!!!」

「言われ放題なのはいつものことだが、いつもよりも癪に触るな。不思議なことに」


 タナカ本人はその怒りの理由が分かっていないが、端的に説明すれば、それは男としてのプライドがさせたものである。

 そんなプライドが、次にタナカの脳にこんな提案をさせた。


「じゃあ、これを着られれば俺が童貞じゃないって証明ができるよな」


 荷台から鎧を取り出し、手甲を装着するタナカ。


「やめろタナカ!」

「残りの人生を無駄にする気か!」

「命を捨てるより生き恥を晒す方がタナカらしいんだよ!」

「誰もが幽霊になれるわけじゃないんだからね!」

「タナカー!! お前のこと好きじゃないが死んで欲しくない!!!」

「なんで死ぬこと確定で話進めてんだ! あと、そんなもんをお土産に買うってどういうことだよ!」


 出会ってから初めてムテ騎士団に本気で心配されているタナカ。

 しかし、彼は聞く耳持たずに次々と鎧を装着していく。そして心配はしたくせに、手を出して止めることはしないムテ騎士団。これが今の彼と彼女らの関係である。


「よし、これで最後だ」


 兜をしっかり被って全ての鎧を装着し終えるタナカ。その体に特に変化はない。


「どうだ? 生きてるぞ」

「むぅー、もしかするとその鎧は欠品があって、完全な状態じゃないかもしれん」


 デーツは鎧を凝視する。


「いや、素直に認めろよもう。俺が童貞じゃないと都合悪いのかよ!」

「悪くはないが、心が許してない」

「許せよ心。あと、着ていて気づいたんだが、背中がガッツリと開いてるのなんで」


 漆黒の鎧は正面から見ると、まるで呪われた暗黒の騎士のような禍々しい雰囲気がある反面、背面は丸見えで、装着者の肌が堂々と露わになっている。


「背中だけであろう? 我と比べれば防御力は高いぞ」


 デーツはマントを少しはだけさせて、自身のビキニアーマーとぶっくぶくのまん丸お腹を晒す。


「やめろ見せるなこのやろう。とにかく俺は童貞じゃない。以上。だからさっさと脱ぐぞ」


 タナカは鎧を脱ごうと、最初に兜を外そうとする。


「あれ?」


 しかし、鎧が彼の頭から離れない。


「ま、まずは腕から外すか」


 気を取り直して、次は腕に着けた鎧に手をかけるも、またしても外れない。


「おい、脱げねえぞこの鎧!」

「あちゃー。どうやら鎧の呪いにかかったようだね」


 ローナが軽々しく言う。


「あちゃーじゃねえよ! どうすんだよこれ! 変なもん押し付けやがってよ!」

「すまんすまん」


 流石に脱げない事を詫びれたデーツがタナカの元へ行こうとするも、タナカは売り場に並べてあるボロい剣を手に取って、その場を離れようとする。


「おい、どこ行くんだ!」

「わからねえ! 体が勝手に!」


 タナカが行く先に男性が一人歩いていた。やがて彼に近づくと剣を振りかざす。


「すみませーんそこの方ー。死ねー!!」

「ええ!?」


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