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峻烈のムテ騎士団  作者: いらいあす
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第九話 はじめてのオルトロスたいじ その4「野盗」

 ローナは嬉しそうにオルトロスの登場を実況したが、広場にはいくつもの悲鳴が漏れている。

 体長5メートルの双頭の顔を持つ犬科のモンスターに、子供達は怯えて親の足元にすがり、老人は祈りを唱えて天を仰ぐ。

 その時勇ましい声が流れてくる。


「おい! こっちだ化け物! このコロト王が相手になる!」


 コロト王がオルトロスと向かい合い、拾った鎧を上半身に身につけ、構えた盾を剣で打ち鳴らしている。

 その勇ましい姿に民から歓声が沸き起こる。


「おっ、コロちゃんやるじゃん」


 これにはローナもナレーションのことを忘れて、素で褒める。

 しかし、周りからは勇敢な王様に見えても、オルトロスには虫けらにしか見えなかったのだろう。


「わうん」


 と、子犬がおもちゃでも遊ぶかのように、前足で軽くあしらわれてしまう。


「ぎえええええええ!」


 軽くというのは、あくまで巨体のモンスター基準の話であって、人間の体を数メートル先まで飛ばすだけの威力は有るわけで。王は様々な骨を砕かれながら飛んで行った。


「大丈夫か!」


 王の元へと急ぐタナカ。朦朧としている王はこっちに来いと言わんばかりに人差し指で手招きした。


「もう無理だ。だからせめて、私の最後の言葉を国民に伝えたい。その道具で見えてるんだろう?」


 タナカは黙って頷き、彼の顔をカメラに映す。


「我が愛するコロト王国のみんな。私は過ちを犯した。

 こんなに危険なことをみんなにやらせていたなんて、考えもしなかった。

 この国に住むなら私の言う事を聞くのが国民の義務だと信じていた。

 だが本当は逆だったんだな。国民の言う事を聞くのが王の義務だったのだ。

 はは・・・・・・今更気づいても遅いよな。だから許してくれとも言わんし、いくらでも陰口を叩いてくれてもいい。

 だが最後に勅令を一つ出したい。もし私の後に王国を治めたい者がいるのなら、どうか、どうか国民のための政治をしてくれ。

 それと、我が妻よ。コロちゃんは君を遠くから永遠に愛し続けるよ」


 王の最後の言葉に、国民達は涙を流す。

 そして伴侶である女王は誰よりも大きな涙を流していた。そして、ふとあることに気付いた。

 さっきまで近くにいたわけのわからないことほざくうるさいバカ女がいないと。


「うおおおおおおおおお!!!」


 その時、モニターの向こうで、わけのわからないことほざくうるさいバカ女ことアストリアが叫んだ。

 ただし彼女は、王に投げつけられていた根菜やその他のゴミで作られた仮面をつけている。

 アストリアの咆哮に、オルトロスは怯む。そこに同じくゴミの仮面をつけたデーツとバーベラが蹴りを入れる。

 一体どういうことだとモニターの前の人々は首を傾げたが、ローナが説明を付け加える。


「おーっと! これは野盗! 野盗の乱入だー! このままじゃクエストを奪われるぞー」


 どう見ても、さっきまで広場にいた人達じゃないか? とみんな思っているのに、あくまでローナは野盗であるとゴリ押す。

 その野党をカメラに映すタナカも、その正体に気づいていながらもとにかくスタッフさんとしてカメラを回し続けた。


「しょうがないでしょベイベー ふふふんふふーん」


 そしてローナの隣でマァチが歌い、その歌をバックに野盗の3人にぼこぼこにされるオルトロスの様子が中継される。

 オルトロスの双頭の片割れはバカ力で殴られ、もう一方の片割れは高速で殴られ、お尻は大きな剣で何度もた叩かれ。最早退治ではなく虐待に片足を突っ込んだ状態だ。

 やがてオルトロスは恐れをなして、洞窟から逃げ出した。文字通り負け犬となったのだ。


「おまえら。スタッフさんは手出し口出し厳禁じゃなかったか?」


 オルトロスを退け、体を伸ばす3人に質問するタナカ。


「我々は通りすがりの野盗だ。なんのことか知らんな」

「そのはみ出たお腹はすごい見覚えあるんですが」

「知らんな」


 と、お腹がはみ出た野盗はタナカのケツに蹴りを入れる。


「え!? 私達野盗だったのか!! タナカ、私たち野盗だったんだぞ!!!」


 声の大きな野盗はもう一人の野盗の手により、高速でどこかに連れ去られた。


「とりあえず、クエストは失敗だ。報酬なしで帰ることになるな王様」


 お腹がはみ出た野盗は倒れている王様の手を取って起こしながら言う。


「命が助かったんだ。儲けもんだよ」

「そうか。じゃあ気をつけて帰りな。いいか、家に帰るまでがクエストだぞ」


 野盗がそう言うと、高速の野党が戻ってきて彼女を抱えて去っていく。


「じゃあ帰ろう。て、君には話しかかけない方がいいな」


 王様の言葉に、タナカは黙って頷きそして彼のあとを追った。

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