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峻烈のムテ騎士団  作者: いらいあす
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第九話 はじめてのオルトロスたいじ その1「国策クエスト」

 要塞ガルガレオスの朝。

 いつもの地下牢で目覚めたタナカは支給された安い麻のシャツとパンツから、暗殺者の正装である忍び装束に着替える。

 そうして要塞の中にある、いつもの共同洗い場の井戸から水をくみ、洗面台で顔とこれまた支給された安い歯ブラシで歯を洗うのが彼の朝のルーティン。

 ムテ騎士団の団員の起きるタイミングは把握しているので、タナカは誰にも会うことのない時間にこの洗い場に来るのだが、今日は先に誰かが洗面台を使っていた。

 一瞬誰なのかわからなかったが、鏡に映る顔を見て、この前のザイモンズパーティの襲撃時に、バーベラが連れ込んでいたギルドの受付嬢だということがわかった。

 特に知り合いというわけでもないが、黙って順番を待つのも失礼なので挨拶をする。


「やあどうも。また泊まりかよ」

「え?! 誰!? 怖! キモっ!」

「おい! 大した会話もしてないが、一応会ってるはずだぞ俺たち!」

「きゃー! 不審者ー!」


 大声で叫びながら、バーベラから貰った指輪を指ごと握る受付嬢。すると、叫び声を聞いたのかバーベラが颯爽と現れた。


「大丈夫かハニー!」

「助けてダーリン! 不審者よ!」

「タナカ! 君は不審者だったのか!」

「ちげーよ!」

「こいつ初対面なのに、私達は知り合いだとか言うの!」

「なに! それは危ない妄想に取り憑かれたストーカーのセリフ!

 タナカ! 見損なったよ!」

「勝手に見損なうな!

 会ったろ前に! あの勇者ザイモンとかいう人の話を聞かない連中が来た時!」


 すると、バーベラの目が点になる。


「いや、彼女はいなかったけど?」

「いたろ! ベッドの上で回復術師とそのあの・・・・・・してる時!」

「はあ? 彼女はリコ。そしてここにいるのはミコさ」

「はあ?」


 タナカも目が点になる。

 するともう一人、受付嬢そっくりな女性がやってくる。


「ごめーんお姉ちゃん。寝坊しちゃって」

「もう、遅いぞー」

「双子!? この間来たのはこっちか?!」

「タナカいい加減にしろ。彼女は妹のアコ」

「ちなみにリコはいとこなの」


 そう付け加えたのは姉のミコ。もっともタナカはまだ判別できてない。なので色々と説明してもらった。


「えーと、この前来たのはデンバー地方にある冒険者ギルドで受付嬢やってるリコさん。

 で、今来てるのがモース地方にある冒険者ギルドで受付嬢やってるミコさんと、その妹で同じく受付嬢やってるアコさんってことだな?」

「タナカ。飯時にぶつぶつうるさいぞ」


 デーツに嗜められるタナカ。そう、彼は朝ご飯の時まで整理するのに時間がかかった。

 ちなみにミコアコ姉妹もバーベラを挟んで仲良く食事中。


「まあわかったところで特に意味ないぞ。

 なぜなら我も見分けつかんからな!」

「右に同じく」

「ローナちゃんもー」

「全然わからん!!!!」


 と、本人達を目の前に失礼なこと言うバーベラ以外のムテ騎士団。


「なんでみんなわかんないかな。全然違うよ?」


 と、不思議な顔をするバーベラ。まあ彼女の場合は裸身まで詳しく知っているのでそう言えるのであるが。


「だいたい血縁関係だからってここまで似るか? ほとんど生き写しじゃないか?」

「はあ? 何言ってんのこいつ」

「ダーリン私この人きらーい」

「うん。少なくとも俺が嫌いな点も一致してるね」


 朝食後、デーツが話を切り出した。


「で、姉妹仲良くバーベラの元でお楽しみをしに来たわけでもあるまい。

 今日はまだ、ギルドを休館するタイミングじゃなかったはずだが」

「「そうなんですよ団長さん」」


 ミコとアコが同時に話す。


「同時に喋らんでくれ。そうだな、今日は妹の仕事ぶりを姉に見てもらうとするか」

「はい。任せてください」


 アコがここに来た理由を話し始める。


「単刀直入に言いますと、迷惑な客が最近増えてまして」

「迷惑? ストーカーか?」


 つまらん相談だと言いたげな顔で、デーツが呆れる。


「そっちの方がまだマシだったかも・・・・・・なんていうかその、国が客なんです」

「国?」


 しかし、国が客という珍妙な単語にデーツは眉をしかめる。


「えーとですね、変な話なんですけど、モース地方にあるコロト王国の国策で、冒険者ギルドに国民を送ってるんですよ」

「国策でギルドにねえ」

「一応、難易度高いクエストなら結構な額になるのは確かなんですが。どうにもそれで財政費を賄うつもりみたいで」

「ふっ。財政を冒険者ギルドでか」


 思わず笑うデーツ。


「笑い事じゃないんですよ。

 最初の内は自国の兵士を送り込んでいたおかげか、それなりに成功率も高かったんです。

 ですがその内、高ランククエストばかりを選ぶようになって、失敗率は増加。

 そして兵士が全滅したのか、今では農家や大工みたいな素人を送り込んでくる始末。

 もちろん全員高ランククエストばかり選ばされて・・・・・・結果はまあわかりますよね」


 アコの表情が暗くなる。


「でも、素人なんだろ? じゃあ高ランククエストなんて受けられないはずなんじゃ」

「ところがですね、実はコロト王国パーティ登録には、コロト国民全員の名前が登録がされてるんです。

 先に兵士たちが高ランククエストが受けられるぐらいにパーティレベルを上げておいて、で兵士が全滅したあとで後釜の一般市民にも高ランククエストをやらせると」

「はあ・・・・・・そんな裏技があったとはな。でも国民全員のパーティなんてよく認可したな」


 デーツはまたしても呆れてしまうが、アコの表情はますます暗くなっていく。


「ルール上、パーティ加入は本人の署名さえあればできてしまうので。

 それに最初は賢い方法だと思ったんですよね。国策でクエストをするって。

 でもこういう場合兵士は高ランククエストで、一般市民は低ランククエストをやると思うじゃないですか? まさか市民に無理強いして高ランクをやらせるなんて!」


 アコは頭をかきむしる。パーティ認可をしたのは彼女なので、その責任を感じているのだ。


「でもルール上は禁止じゃないからこっちも止めるわけにもいきませんし、それに国を相手に出られるほど冒険者ギルドは強くないですし」

「つまり、国に喧嘩を売るなら我らムテ騎士団が打ってつけというわけだな」

「はい。身勝手な相談ではありますが」

「構わないさ。みんな国相手の喧嘩が大好きなんだよ」


 デーツを筆頭に、ムテ騎士団の面々は邪悪な笑みを浮かべた。そしてタナカは"あーあ、これはもうダメだ"とコロト王国に憐みの念を送るのであった。

 そしてコロト王国に向かった一同は、兵士がいなくなって防衛が手薄となったコロト王の住む城を制圧し、コロト王をひっ捕らえましたとさ。


「え!? もうコロト陥落!!?」


 たった一文で収まるぐらいの手際の良さにタナカは驚愕しましたとさ。

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