第七話 ちびっ子ナイトパーリィ その4「真夜中の決闘」
「ねえねえマァチー。次は何するー?」
「早く決めてくれ!!」
「うーん。実は考えてない」
「えー。じゃあローナちゃんが決めていい?」
「私もう一回ボリリングしたい!!」
そんな会話をしながら3人が廊下を歩いていると、中庭のアイアンローズが輝いているのが彼女らの目に映った。
「いつ見ても奇麗だね。いやータナカ君も偉いよね。毎日枯らさずに手入れしてるんだから」
「偉い?」
ローナの言葉にマァチは足を止める。
「ああ!! 団長もあいつはバカだが根性だけは認めるって言ってたぞ!!」
「認める?」
次はアストリアの言葉に反応する。そしてマァチはぶつぶつと何かを言い始めた。
「ん? どうしたの?」
「なんでもない。ただ、次にやるゲーム決めただけ」
「ふむふむ。どんなゲーム?
はいはいなるほど・・・・・・え? マジでそれやるの?」
「やる」
そして、10分経ってローナがタナカのいる部屋に戻ってきた。
しかし彼女の様子は、普段の無邪気とも、人を小馬鹿にしてるだけとも取れる明るさとは打って変わって、何やらおずおずとしていた。
しかし、タナカはその様子に気付けないほどげっそりとした顔で立ちすくんでいた。
「うわあ。大丈夫?」
「大丈夫じゃない。自分があの環境の中に残されたらどう思うよ?」
「死にたくなるね。ローナちゃんもう死んでるけど。
それよりどうする? 次が最後のゲームだけど辞退する気とかある?」
「いや、このまま負けたら今の地獄の上にさらに地獄が上乗せされるだけだ。もう勝つしかねえ」
勇ましいことを言っているが、彼の顔は真っ青だ。
「やりたいなら構わないけど、あーでもなあ。うーん」
「どうした?」
「とりあえず最後の場所まで案内するよ」
そう言って案内してもらった場所は、この要塞の頂上の屋根の上であった。
ただし、屋根と言っても巨大要塞なので瓦や煉瓦が積まれてるわけじゃなくて、平で広大な台地となっている。
そしてその真ん中にはマァチとアストリアが待っていた。
「こんなところで何するんだよ」
マァチ達に近づくタナカ。しかし彼女達の三歩手前でマァチが杖を突きつけてくる。
「決闘。私とあなたのサシの勝負」
「はあ?」
「ねえマァチやっぱり本気なの?」
ローナの質問にマァチは黙ってコクリと頷く。
「ねえ危ないよ。代わりに地獄の金網デスマッチにしようよー」
「それもかなり危険な響きなんだが?!」
「やだ。決闘する。そしてこいつをボコボコにする」
マァチは準備満タンなのか、杖を槍術のように振り回している。
「だいたいみんななんでこいつの存在を許してるの?
私達を殺しに来た余所者で邪魔者なモロダシゴミ虫なのに」
「許してるわけじゃないんだけどな。それにタナカ君はボロ雑巾ぐらいには役に立つし」
「なあ、それは擁護で言ってるのか? それとも宣戦布告なのか?」
タナカの言葉を無視してローナは続ける。
「隙あらば男の頭蓋骨振動させて、脳みそをグチャミソにしたがる程の男嫌いのバーベラでさえ我慢してるのに」
「怖っ」
「他人は関係ない。私はただこいつが嫌い。我慢したくもない。ただ嫌い」
「うーん、だいぶ拗らせてるなー。アスティはどう思う?」
その質問にアストリアは目を見開きながら沈黙を貫いていた。というよりも
「アスティなら寝てる」
「あちゃー。もう夜更過ぎだもんねー」
「立って寝るのは前に見たが、今度は目も開けたままとは」
「とにかく第三者の意見なんていらない。タナカ、どうするの?」
「いいだろう受けてやるよ」
「えええ!? 大丈夫タナカ君!? 確実に死ぬよ!? 遺書はもう書いた!? 葬儀は勿体ないからやらないよ!?」
ローナにあれこれ言われてるが、タナカはマァチと同意見だった。
「第三者の意見なんていらねえ。そろそろこいつとはちゃんと話をつけたいと思ってた。
いちいち毒を吐く態度には限界が来てたんだ。態度に関しては全員似たり寄ったりだが」
「こっちこそお前はここにいるべきじゃないとわからせてやる」
「はあ・・・・・・二人共どうなっても知らないよ? じゃあ始めるよー! でちょん!」
「でちょん?」
ローナは掛け声をかけるや否や、アストリアを念力で浮かせて素早くその場から離れた。
戦いが始まればマァチの稲妻がすぐに飛んでくるのがわかっていたからだ。
そして案の定、マァチの杖からは稲妻が放たれた。
「死ね」
しかし、タナカは地面を強く蹴り宙を舞って避けた。
「お前の攻撃パターンはだいたい把握している」
宙を舞いながらクナイを投げつけるタナカ。
マァチは慌てながらも、杖を振ってクナイを払い除ける。
「あれー? タナカ君、いつの間にクナイを取り返したんだろう?
まあ、誰も見張ってなかったししょうがないか」
決闘の場の隅にまで避難していたローナは、のんびりとそんなことを呟いた。そして同時にこの戦いが面白いものになりそうだとも思っていた。
「雷避けたぐらいで調子に乗らないで!」
マァチは杖から炎を出しながら回転し、周囲に撒き散らした。流石にタナカは近づけずに立ち往生する。
「あっーと! マァチ選手! 炎の壁を作って防御の姿勢に出たー!」
ローナは暇だったせいか、勝手に実況ごっこを始める。
「解説のアストリアさん、この状況をどうお考えですか?
“あっー!! タナカの飛び道具はクナイしかない!! だからなんとか近づいて相手の急所を狙うしか勝ち目ないのに!! こうやって妨害されると一方的にフリだ!!”
なるほどー」
そして寂しかったのか、アストリアの真似をして解説役も兼ねる。
「そうやってれば近づけないと思ったか? 甘いな」
タナカは助走をつけて思いっきりジャンプする。そして炎の中心になっているマァチ目掛けてクナイで切りかかろうとする。
「甘いのはそっち! そんぐらい読めてた!」
マァチは回転をやめて雷を放とうとする。しかし、その時ちょうど真上から降ってきた何かに気を取られて動きを止めてしまう。
「何!?」
「耕すべー!」
降ってきたのは決闘王者カードの農家さんであった。
「あっーとタナカ選手、密にカードを隠し持っていたー! 片付け忘れやがってこのやろう! アストリアさんいかがでしょうか?
“死ねー!!!”
うん、死ねー!」
農家さんカードを囮に使ったタナカは、素早くマァチの背後に回り込んで、彼女の首にクナイを突き立てた。
「動くなよ。このまま負けを認めるんだ」
「やだ」
「やだとかじゃなくって!」
実際タナカがマァチの首を掻っ切ったところで、ローナとアストリアからの報復を免れるわけもなく、結局詰みである。
なのでこのまま彼女には大人しく負けを認めてもらいたいと思うも、当のマァチはゴネ続ける。
「だいたいこの戦いに意味あるのか」
「お前が死ねばある」
「なんでそんなに俺が嫌いなんだ」
「団長がお前を気に入ってるから! なんでお前なんかを!」
「はあ?」
嫉妬。それがマァチがタナカを嫌う理由。しかし、当の本人は嫉妬されるようなことが一切あったと思っていない。むしろ嫌われていると判断するのが妥当だと思っている。そのため、タナカの頭の中で疑問が渦巻いていた。
そしてそこから生まれる隙をついて、マァチは杖から大きな音を出した。
【「おばさん おばさん おばさん おばさん」】
ちなみに音源はタナカのおばさん発言。そして大音響の自分のおばさんコールに思わず耳を塞ぐタナカ。
「口は災いの元」
マァチは若干解釈違いのことわざを放ちながら、杖を屋根の上に突き立て力を込め始める。
すると、杖から青白い光が放たれて周囲を包んでしまう。
「なんだこりゃ! 体が!」
タナカの全身に微弱ながらも電気が流れ出す。そしてその痺れに体が思うように動かせなくなっていく。
「電気のフィールド内にいる者は徐々に電撃で体を焦がされて、苦しみながら死んでいく」
その言葉通りにタナカに流れる電気は量を増し、痛みへと変わっていく。




