第六話 最高ランククエスト その6「超激戦!ザイモンvsローナ」
そして一方、勇者ザイモンはローナ相手に四苦八苦していた。
彼女の霊体に剣を振り降ろし、何度も何度も空振りしている。
「だからー。幽霊には通じないんだって」
それでもザイモンは剣を振るのをやめる気配がない。
そのしつこさに流石のローナもブチギレて、近くにあったそこそこ鋭角な石を念力で動かし、相手のこめかみにぶつけた。
「効かないって言ってるでしょうが!」
「ほびぃっ!」
こめかみからそこそこの量の血が噴き出す。そしてザイモンはそれを抑えながらあることに気が付いた。
「石を飛ばす!? まさか、幽霊か!」
「いや、気づくタイミング絶対そこじゃないと思うけど。
でも、ようやく攻撃が無駄だとわかったならこれで勝負しよう」
ローナは念力で置いてあった騎士の人形二つを空中に浮かせ、そしてそのうち一体をザイモンの元まで運んだ。
「な、なんだこれは?」
「ふっふっふ~。ローナちゃんの真の力は、たくさんおもちゃを持ってること!
というわけでこの二人の騎士さんを戦わせて遊ぼう!」
ザイモンは人形を手に取ってみる。すると、ローナに操られたもう一体の人形が小さな槍を振り回して襲い掛かてきたので、ザイモンは咄嗟に手で振り払った。
「 ダメっ! 騎士さんを戦わせるって言ったでしょ! ちゃんと騎士人形を使ってよね」
「え?」
とりあえず、ザイモンは人形の手を動かして、握られている小さい剣を振らせてみる。
「そうそう、そういうこと」
ローナが操る騎士人形が再度槍を持って向かってくるので、ザイモンも自分の人形を戦わせた。
「やるなー。この夜這い大好きおじさんの称号を持つド田舎ナイトめ! この犬の散歩マニアの称号を持つ冷血ナイトの槍裁きを受けてみよ!」
「なにその称号!?」
犬の散歩マニアの称号を持つ冷血ナイトの槍で、夜這い大好きおじさんの称号を持つド田舎ナイトの剣がはたき落とされた。
「はっはっはー! 正義は勝つ!」
「俺悪役なのか。まあ、夜這い大好きおじさんがいい奴なわけないか」
「決闘の掟として、敗北者は死刑だー」
明るい笑顔で死刑宣告を下すローナ。
彼女は念力で夜這い大好きおじさんの称号を持つド田舎ナイトの首をもぎ取ろうと、引っ張り始めた。
「死刑の場面まで再現するのか」
呆れた顔で、自身の持つ人形の首が引っ張られる様を見るザイモン。しかし、彼は自分の首に違和感を感じ始めた。
「おいっ! なんか俺の首、ひっぱられてないか!? いてっ! いてて!」
「これは呪いの人形。この人形が受けるダメージは、お前とシンクロしているのだー!」
「急に幽霊要素すごい盛り込んできた!!?」
頸椎がミシミシと音を立てて離れていく音が、ザイモンの耳に響き始める。喉仏が皮膚を突き破ろうとしているのではないかと思えるほど喉が締まっていく。顎は軋み、首の筋がぷちっと一本ずつ切れていく。
もうダメだと思った瞬間、ザイモンは力任せに騎士人形を投げつけた。驚くことに、それが運よく宙に浮いていたローナの騎士人形にぶつかり、二つの人形が地面に落ちた。そして人形と同じようにザイモンも地面へと伏すのであった。
「こ、これは! 夜這い大好きおじさんだけが使えるという究極の技"夜這いボンバー"!? こんな土壇場に大技を繰り出すとは、大した奴だ……ぜ」
芝居がかった言葉と共にローナも地面に伏す。
二人の対戦者は地面の上に倒れ、やがて静寂だけがその場を支配した。
数十秒の後に、ザイモンが起き上がって言う。
「あの……これは、どっちの勝ち?」
「ん-? そっちの勝ちでいいよもう」
地面に伏しながら、二つの騎士人形で遊ぶローナ。ザイモンは釈然としない表情で部屋を出た。




