第六話 最高ランククエスト その4「熱戦!ゲントンvsアストリア」
さて、それぞれの部屋の戦いを見ていこう。まずはゲントンの部屋から。
その部屋で待ち受けていたのはアストリアだった。
「お前はあの悪魔の声の!」
「どの悪魔だ?! それより自己紹介だ! 私はアストリアだ!!!」
部屋は戦うのに充分なスペースはあったが、それでも先程の広間より狭くてなっているため、声が今までで一番響いた。
「お、俺はゲントンだ」
「わかったゲントン!!じゃあ戦う!!うおりゃああああ!」
「いきなり!?」
勢いつけて向かってくるアストリアに対し、ゲントンは自慢の戦斧を振りかざした。
しかし、アストリアは自身に向かってくる斧の柄の部分を拳でへし折り、そのままゲントンごと殴り飛ばした。
「うおおお!?」
入ってきた扉まで飛ばされて激突するゲントン。そしてその衝撃音に外で待つタナカはびくっとなった。
「びくっ! は、激しいな」
さて、バカ力に吹っ飛ばされたゲントンだが、彼はその筋肉隆々とした体は伊達じゃなことを証明するかのように、立ち上がってみせた。
「ふう・・・・・こいつはすげえ。そのデカイ声が武器だと思ったら、真の力はその怪力だったとはな」
「声はただの地声だ!!!!!」
「そ、そう。とにかく俺も力が自慢なんでな、負けるわけにはいかん!行くぞ!」
斧での戦いを諦め、拳を構えて突進していくゲントン。彼は自分の全体重を載せたパンチをお見舞いする。
だが、アストリアにとってその重さや勢いは屁でもなかったのだろう。自身の手の平の2倍もする大きな拳を、その手の平だけで受け止めたのだ。
「くっ! まだまだぁ!」
ゲントンは空かさず連続パンチを繰り出すも、アストリアは軽々しく全て手の平で受け止める。そうして彼の疲れと焦りの色が見え始めた頃、アストリアは口を開く。
「お前は勘違いしているぞ!!!!」
至近距離の真正面から聞く彼女の声は、まるで衝撃波で、聞く者を吹き飛ばす勢いがあった。ゲントンもご多聞に漏れず、尻餅をついてしまう。
「な、何を勘違いしてるって言うんだ」
打ち付けた腰をさすりながら尋ねるゲントン。
「私の真の力は怪力じゃないぞ!!! 私の真の力は賢さだ!!!」
彼女の言葉に、一瞬彼の中で時間が止まる。明らかに賢い人間が出すとは思えない声量だからだ。
「私は賢者だ!! つまり賢い!!!」
「えと」
「何が言いたい!! 賢者の格好はしてるけど本当に賢者なのかと言いたいなのか!!!」
「え、あ、うん」
「なんだ言いたいことわかってるんじゃないかと言いたいんだな!!!」
「ま、まあ」
「なぜなら初対面の人みんなそう言うからだ!!!
だから私はいつもこう言う!!私は本物の賢者だ!!!」
「お、お」
「落ちてるパンを食べたらお腹痛くなった!!! そう言いたいんだな!!!」
「それは言いたくない!いや、言いたいとかじゃなく、そもそも食べてない」
「じゃあ私がバカに見えると言いたいのか!!!」
「うん!!」
その一言に鎮まりかえる部屋。
「じゃあ私が賢くないと証明できたらお前の勝ちにしてやる!!!」
「ええ!? そんなんでいいの!?」
「いいぞ!!!でも人の知能の証明は難しいぞ!!参ったか!!」
別に参ってはいないが、それでもゲントンは彼女の言う通り、知能の証明などどうやってすればいいのか検討がつかなかった。
もしかするとこの勝負は膠着するのではと焦り始める。
「ところで賢いってどうやって書くんだ!!!」
「もうできたよ証明!」
膠着しなかった。
「マジかよ!!?じゃあお前書けるのか!?賢いって!!!」
アストリアはベールを外して、中から紙を取り出した。
「ペンがない!!どこ行った!!さっきまであったのに!!家出か!!?」
ゲントンは黙って彼女の頭頂部に刺さっているペンを指差した。
「ここかー!!!!」
技でも出すかのように叫びながらペンを引っこ抜くアストリア。
そして頭から吹き出る血。
ゲントンは言いたいことを我慢して黙ってペンと紙を受け取り、彼の出身地の言葉で“賢い”と書いた。
おそらくこれは、彼が今まで生きてきた中で最も間抜けな瞬間であったろう。
「書けました」
「おう!!!字、綺麗だな!!!ところでこれなんて書いたんだ!!!?」
ゲントン、返り血を浴びながら、賢者アストリアが賢くないと証明して勝利した。




