第四話 ピクニック日和 その1「一方その頃の話」
さて、前回タナカが戦っているさなかのムテ騎士団のピクニックの様子を振り返ろう。
マァチが出したタイガーマーク2号が降り立ったたのは山々に囲まれた高原地帯。ここはミカデウス王国とハンバンド王国のちょうど国境にあたる部分であった。
なぜその場所がちょうど国境にあたる部分だったのかが分かったのかというと、お互いの国が領土拡大のために、ここで合戦を行う寸前だったからである。
しかしそんなこともお構いなしに、タイガー2号とその持ち主ムテ騎士団は、両陣営がにらみ合う最中に文字通り割って入ったのであった。
「なんだあれは?」
と、両陣営が目の前に降りてきた巨大な空飛ぶ塊に対する疑問を各々口にする間にも、ムテ騎士団はタイガー2 号をしまい、 ピクニックシートを広げ、そしてバスケットからたくさんのご馳走を取り出す。
「うむ。 いい高原だな。 地面は座るのにちょうどいい平地、生えている草は足に絡みつくこ とのない長さ、山からは爽やかな風が吹いて、照り付ける太陽の熱を和らげてくれている」
「いい場所を選んだね。マァチ」
「ううん、適当に選んだだけ」
「ちょうどいい位置に降りたローナちゃんのことも褒めて褒めてー」
「わかった! ちょうどいいローナ!
それよりお腹空いた! ご飯食だご飯!!」
マァチがサンドイッチとチキンナゲットと朝ごはんの残りのマッシュポテトを取り分け、 そして水筒に淹れておいた紅茶をティーカップにそそぎ配る。
「それじゃあみなさん手を合わせて、いただきま」
マァチが食事の挨拶の音頭を取ろうとした矢先、ミカデウス王国とハンバンド王国のそれぞれの代表の兵士が一名ずつ、ムテ騎士団の左右方向からやってきた。
「私はミカデウス王国の者だ」
「あ、クソ先に言われた。そ、そして私はハンバンド王国の者だ。我々は今から」
「我々は今から合戦を始める」
お互いに先に言おうとにらみ合う両兵士。こんなところでも静かな合戦が始まっていたのである。
「で?」
「で? じゃなくって我々は」
「我々は今から合戦するんだ。 だから」
「ここで合戦が今から」
「だからね今からねここでね」
お互いに話を進めて埒が明かないので、とりあえずデーツは最も効率の良い交渉方法を試みた。
その方法の名は"ブチギレ"である。
「うるせえごちゃごちゃと!!! お前らの代わりに我が話を進めてやろう!
まずお前はミーちゃんな!」
「ミーちゃん?」
デーツはミカデウス王国の兵士を指さす。
「で、お前はハーちゃん」
「ハーちゃん?」
次はハンバンド王国の兵士を指す。
「まずはミーちゃん、お前が喋れ」
しかしハンバンド王国の兵士が抗議しようと口を開けようとする。
「ミーちゃんだって言ったろ! ハーちゃんは黙ってろ!」
デーツは怒りの表情を浮かべて握っていたカップを握りつぶす。
その恐ろしさにミーちゃんもハーちゃんも言うことを聞かざるを得なかった。
「はいミーちゃん早く!」
「は、はい。今から我らミカデウス王国とハンバンド王国の合戦が始まりますので」
「はい次ハーちゃんね」
「え? あ、えと」
「油断するなハーちゃん!」
「あ、はい! あそこの尖がった岩の影が、まっすぐあなた方のいる場所にさしたのを合図に始まるので、それまでに退避してください」
「ふーん。あっそ」
指パッチンをするデーツ。するとアストリアが立った。
「どっちをやるんだ!!」
「口臭がきついんでハーちゃん」
「え?」
自分の顔の近くで手のひらに息をかけて、口臭をチェックするハーちゃん。 そんなハーちゃんの体をアストリアが持ち上げる。
「ピクニックの邪魔するとこうだぞ!」
ハンバンド王国の兵団に向かってハーちゃんを投げ飛ばすアストリア。
兵団の最前列の隊までの距離、ざっと100メートル。 しかしそんな距離など余裕に越えて、ハーちゃんは奥に控えし師団長の元まで飛んで行った。
「さてミーちゃんもこれでわかったろ?
合戦してもいいが、ピクニックに邪魔をするとああなる」
「え、あ、はい」
「わかったならさっさと戻れ」
「その前に、空から飛んできたあの塊はいったい? あれが気になって気になって」
デーツは指パッチンをし、そしてアストリアがミーちゃんをミカデウス王国兵団の元まで投げ飛ばしたのであった。
「終わった? じゃあ改めて手を合わせていただきます」
マァチが再度音頭を取り、みな手を合わせていただきますと言ってから食事を始めた。




