お互いのジョブ
モフワのいる場所はフィネがわかるそうだ。
まずは正門を通って町を出た。
正門というだけあり、マンヴェンがいた裏門とは違って石積みの重厚な門が建てられていた。
ステイナドラーの南端に位置する町だからほとんど往来がないのかと思ったが、そこそこ人の出入りはあるらしくたまに馬車が俺たちを追い抜いて行く。
町を出て30分くらい経っただろうか。
魔物に出会うこともなく平和に歩いている。
「そだイズミ。」
「ん、どうした?」
「『オープン。』はいこれ。」
ジョブカードを渡されるので見てみる。
【 アドルフィン】
冒険者ランク G
獣拳
レベル15
ステータス
筋力 91
防護 54
敏捷 112
魔力 34
天運 51
スキル
獣の戦(拳法lv1、跳躍lv1、手刀lv1)
一匹狼(孤狼)
「全部表示されてるけどいいのか?」
「コンビなんだから知っといた方がいいでしょ。でも全部じゃないよ?」
…言われてみると名前の表示がおかしい。
「名前の見せてない部分は号で、姓は持ってない。だからアドルフィンが名前だよ。」
「号って流派とかに付くやつ?」
あまり詳しくはないが、姓とは別のもので、名前の前に付くのが号だ。
鍛冶屋や醸造家のような代々何かを継承するような家やグループで共有するイメージがある。
「うん。ま、アタシは継がないから関係ないけどね。」
「そっか。」
何か事情がありそうだが、本人に話す気がないことを聞く必要はない。
それよりもスキルについて聞いておこう。
【獣の戦】も【一匹狼】も聞いたことのないスキルだ。
ちなみに基本職では、拳法や剣術のような個別スキルを修練によって修得する。
必死の努力が必要だが、努力すれば様々なスキルを覚えられるという側面も持つ。
上位職の場合は、初めから強力なスキルが発現している。
例えばフィネの【獣の戦】のように、スキル内にいくつかのスキルを孕んでいる状態で発現するのだ。
その内在スキルのレベル上昇は基本職より遥かに早いし、修練やレベル上昇によって、関連したスキルがさらに発現することも多い。
それが上位職と言われる理由だ。
「この【獣の戦】にある【跳躍】ってどんなスキルなんだ?」
「んっとね、下半身の瞬間的な強化ができるよ。一瞬だけしか発動しないけど、すごい高く跳べるし、細い木なら蹴りで折れる。」
「それは強そうだな。」
「いやぁ、使うの難しくて活用できてないんだよね…。あと【孤狼】は、敵の数が多いほど【獣の戦】の効果が上昇する、ってスキル。」
「なるほど。極めれば強そうなジョブじゃないか。」
「拳法レベルが1でしょ。アタシほとんど闘わないように生きてたから敏捷しか成長してないんだよね。」
フィネが冗談めかして言うので、俺も素直に笑って答える。
「…んん?今の言葉、これからは戦うってふうにも聞こえるぞ?」
「闘うよそりゃ。冒険者になったんだもん。誘った責任を取って、アタシが強くなるまでは守ってよね?」
フィネがにやっと笑う。
「もちろんだ。じゃあ俺の番…『オープン』。」
言ってすぐにフィネにジョブカードを渡す。
【イズミ】
冒険者ランク G
武装支配者
レベル30
ステータス
筋力 300
防護 195
敏捷 220
魔力 X
天運 245
スキル
天賦の才(剣術lv8、槍術lv3、鎚師lv5、投擲lv3、操鎖lv1)
達人鍛冶(精錬、抽出、鍛冶、創剣、
武器強化、武器劣化、属性付与、武具収納)
「うわすっごい!文字多い!」
フィネが内在スキルも見せてくれたので、俺も詳しく表示させたらすごい文字量になってしまった。
「ステータス高すぎ…あれ、魔力のこれ何?」
「表示エラー。1,000超えるとこうなるんだって。」
「千!?ああ!だからあんなにほいほい魔法使ってたのか!」
「へぇ~、天運も異常に高いねぇ…ってこのステータス見りゃ不思議じゃない気もするけど。」
天運は『人生に補正がかかる』ステータスだ。
高いほど良いことが増え、悪いことが減る。
検証のしようがないが、俺の場合は良い人にばかり出会っているから効果は出ているのだろう。
「ちなみにコプト国王は天運がXらしいぞ。」
「うわー、働かなくても生きていけそう。」
フィネがカラカラと笑う。
ちなみにフィネの51も高い方だと思う。
「つーか内在スキル多すぎない?」
「ああ、【操鎖】とかいらないんだけどさ、1回鎖で魔物殴ったら出ちゃって。出ちゃうと消せないしなぁ。」
「発現条件浅いな!」
「えー、この【達人鍛冶】もいいね。これあれば冒険者やんなくても食っていけるよね。この【鍛冶】と【創剣】て違うの?」
「ああ、見てて。まず【創剣】から。」
レベル上昇のないスキルだから表面上わからないが、【鍛冶】と【創剣】は散々使い込んでいるスキルだ。【創剣】は武器を無から創りだすことができる。
ロングソードをイメージする。柄まで鉄のロングソードだ。
「創剣!」
――スタッ。
目の前にロングソードが降ってきて地面に刺さった。
ちなみに創剣と発声する必要はない。
「ぇえ!?」
次は【鍛冶】だ。
普通の鍛冶師の鍛冶作業とは違い、スキルの【鍛冶】は魔力を使用することで金属を武器や防具に変えることができる。
ロングソードを引き抜いて、鉄の盾をイメージする。
「鍛冶!」
剣が光って盾に変形した。
これも鍛冶と発声する必要はない。
「ぇええ!?」
「って感じに、【創剣】は武器を出現させるスキルで、【鍛冶】は金属から武具を作るスキルだよ。」
「すっごぉ…、え、イズミイズミ、【創剣】は材料無しで剣できるってこと?」
「ああ。」
「…大儲けじゃん。」
「そういう発想になるかよ。」
つい笑ってしまう。
「便利に見えて、【創剣】は消費魔力がでかいんだ。これ1本につき150くらいかな?」
「ぼったくり!?アタシじゃ1本すら出せないのかぁ」
フィネの魔力は30くらいだったか。
近接戦闘職だから仕方ないが、かなり低い方だろう。
「【鍛冶】の方は消費が小さいから本職の鍛冶屋より稼げるかもな。でも俺は冒険者がやりたいんだ。」
「はぁ~、そうなのかい。イズミはなんでそんなに冒険者にこだわりがあるの?」
「冒険者同士ってみんな対等だろ?それが良くて。」
「…?」
不思議そうな顔。
まぁそうだろう。
冒険者でなくても対等だ。
聖アロン帝国でもステイナドラーでも領民に身分の差はない。
疑問に感じるのも理解できる。
「俺、聖アロンでは有名なんだよ。結構人助けとか頑張っててさ、でも気付いたら、誰も対等に扱ってくれなくなってたんだよ。」
対等でない関係とは、多くは相手を見下している場合に起こると思う。
それ以外にも一つ、相手を上に見ている場合もそうだ。
俺は後者だった。
ユリアナは俺に敬語を使うが、それは客として見ているからってだけで、ユリアナの言葉には親しみがある。
そうではなく、雲の上の人のような扱いをされると、例えそれが俺への尊敬とか信頼とかであっても、大きな隔たりを感じるのだ。
どんなに丁寧に接されても、疎外感しかない。
「だから対等な関係の人…友達が欲しくて。それで国外に出て冒険者になろうと思ったんだよ。」
「ふーん…ま、人それぞれ事情はあるんだろうから詮索はしないけどね。」
案外あっさり受け入れてもらえた。
いや、単にあまり興味がないだけかもしれないが。
「で、友達ってどれくらい欲しいの?」
「5人。」
「ぶっ!」
フィネが吹き出す。
「…くく、ごめんごめん。意外と少なくて。」
「俺と友達ってだけじゃなく、友達同士でも友達って関係がいい。全員集まって遊べるような。最終的には10人を目指すけど、とりあえず6人集まればだいたいなんでもできるじゃないか。3対3で勝負したり。」
それが俺の冒険者人生での目標で、夢だ。
「なるほどねー。じゃあさ」
フィネがにっこりと笑う。
「あと4人だ。」




