新しい朝と新しい武器④
――ピーッ…ピーッ…
鳥の声が聞こえる。
薄目を開けて窓を見ると、やっと空が白んできたところのようだ。
普段ならもう一度寝る時間だが、今日はやることがあるので早起きをする。
「…うぁ」
体が重い。
自分で思っているよりも疲れていたようだ。
城の探索もだが、それよりも船での移動だろう。
俺にしては珍しく肩が凝っている。
座っていただけとはいえ、無意識に体を強張らせていたらしい。
「あー…」
軽く声を出して詠唱準備し、目覚ましを兼ねて洗浄魔法で体を洗う。
洗濯はフィネが起きてからだ。
今は体だけ洗おう。
ひととおり水を走らせたあとは、窓の外の人がいないところまで飛ばして捨てる。
「よし、やるか。」
早起きした理由は武器作りだ。
フレィアのための剣を作りたい。
ダズの船の上である程度は構想を練っていたからデザインの時間はいらないが、細部の調整までするとそこそこ時間を使うから、さっさと取り掛からないとならない。
フィネも割と早起きだし。
スキル【武具収納】でミスリルロッドを取り出す。
ハルミゥクが生成したミスリルを棒状にしただけのものだが、棒だって立派な武器だ。
こいつを使って【鍛冶】で……いや。
もっと良い素材があった。
再度【武具収納】を使って別の剣を取り出した。
セルテンからの贈り物、隕鉄の剣だ。
細部にまで施された装飾が美しい。
隕鉄は武器用の金属としてはミスリルに劣るが、珍しさではミスリルを上回る。
特別な武器を作るのには格好の素材だ。
それに隕石が炎を纏って降ってくるせいか火との親和性も高く、その面でもフレィアにうってつけと言えるだろう。
すでに出来上がってる剣を素材と言うのもなんだが、これはやっぱり『隕鉄の剣』であって、俺がイメージするフレィアの剣ではない。
セルテンのために苦心して打った鍛冶師には悪いが、俺のスキル【鍛冶】でフレィアが宿るための剣に打ち直そう。
剣身に触れる。
切れ味は良さそうだ。
飾るための薄い剣ではなく、頑強そうな剣身に仕上がっている。少し伸ばしても十分な強度を保てそうだ。
ブレードに浮き彫りされた派手な意匠も変える。センスの良いデザインだとは思うが、これはやはり古城のステンドグラスを飾っていたあのデザインに変えた方がフレィアも喜ぶだろう。
「鍛冶…!」
剣が輝いて形を変える。前よりも長く伸ばし、ブレードの浮き彫りを書き換えていく。
よし、刃はこれで良いだろう。
次は護拳だ。
剣を握る拳を守る部分で、金属板や棒状の鉄を曲げて作るのが普通だ。
が、ここに炎のイメージを持って来よう。
拳を覆うように網状に細い金属を巡らせ、立ち昇る炎のように装飾を付ける。
鍔も少し大きくしたいから金属が足りないな。
やっぱりミスリルも使おうか。
ミスリルを手に取って隕鉄の剣に触れさせ、【鍛冶】を発動して護拳を作り上げる。
ついでに鍔も取ってしまってミスリルで少し大きめのものを付ける。
だいたい形になってきた。
次は色だ。
鍔は赤くする。
『イイズナ』はめっきで色を付けたが、赤めっきはどうしても色味が明るくなってしまうから今回は塗装だ。
昨日買ってきたルデンを鞄から出して手に取った。
こいつはレンガなんかに混ぜて赤く色付ける石粉だ。
ルデン単体では紫がかった茶色をしているが、火を入れると濃く鮮やかな赤を呈する。
剣を床に置き、粉を振りかけて再度【鍛冶】を発動。
「鍛治!」
スキルを発動。
長剣がまた輝き、光を失うと赤い色が見えた。
…良い色だ。
ゆっくりと全体を確認する。
…よし。
ひとまずイメージ通りのものができあがった。
足元に護拳と鍔を作ったときのミスリルの余りが残っている。
元々あった量の4分の1程度だ。
どうせなら使い切ろう。
「鍛冶。」
もう一度【鍛冶】を発動し、護拳から剣身に向かって炎のようにミスリルを伸ばした。
炎と言うよりは植物が伸びるようにミスリルが変化して、しなやかな飾りとなる。
取り回しは多少悪くなるが、今の剣技レベルならなんの問題もない。
様々な方向から眺めて出来を確かめていく。
かなり良い出来だとは思うが、やや粗削りな印象だ。
細部に繊細さが欲しいな。
修正箇所を順に頭に入れていく。
そして五度目の【鍛冶】を発動。
「鍛治!」
今度は大きな光を放たず、修正箇所だけが輝いた。
「よしよし、完成だ。」
全体を再チェック。
満足のいく仕上がりとなった。
…さて、それじゃあ名前を考えようか。
燃えるような赤い長剣。
こいつに似合う動物か…。
ふむ………赤い生き物ってあんまりいないよな。魔物ならたまにいるけど。
鳥なら…クマゲラは頭頂部が赤いな。体が真っ黒だからこの剣のイメージと違うけど。
茶色ならいっぱいいるんだけどな、赤か…
…オオマシコなら綺麗だな。
いや、剥製しか見たことないからやめとくか。
正直、ピンとくるのがない。
困ったな。
少し思考の範囲を広げるか。
花なら赤はたくさんある。
けど、選択肢が増えすぎるし…なら虫はどうだろうか。
赤い虫…も意外といないのか。
蝶も鳥と同じで茶色は多いが赤は少ない。赤い種類もいるんだろうが、実際に見たことはない。
…あ。
てんとう虫。
ナナホシテントウだ!
ピンときた。
しかし長いから…
「ナナホシ!お前はナナホシだ。」
隕石は星が降ってきたものだし、似合いの名前だろ。




