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本部長秘書からの依頼⑤

「あ! …魔道具はどう? 爆裂盾と疾風(はやて)の鎧。」

「……」

「どっちもアドルフィンちゃんには重くて使えないと思うけど、価値はあると思うよ!」

「それでいいよ。案内して。」

「うん! こっちこっち。」


 フレィアが飛んで行く方についていく。

 階段を2つ上がって、5階へ。

 おそらくこの城の中央の部屋だ。

 扉をすり抜けるフレィアに続いて戸を開けると、やはり城主の間だった。

 色は落ちているが赤い絨毯が真っ直ぐに引かれ、その先には玉座が置かれている。

 しかし、元々置かれていたであろうものが持ち出されているのか、妙にだだっ広く感じる。


「えっとね、全部ここにあるんだけど、とりあえず椅子の後ろの壁に立ててあるのが爆裂盾。」


 玉座の後ろには派手な装飾で周りを飾り立てたステンドグラスが()めてあった。

 その脇に、やけに無骨(ぶこつ)な盾が立て掛けてある。


「イズミ、次元袋によろしく。」

「おっけ。」


 次元袋ならフィネも持っているのだが、依頼で回収したものは容量が大きい俺の方に入れることにしている。


「そんでこっち、椅子の裏のこれが疾風(はやて)の鎧。」


 白い全身鎧が玉座に背を預けるようにして座っていた。

 兜は膝の上に置かれている。

 フィネが鎧の状態を確認し始めた。


「白いな。冒険者(おど)かすのに使ったのってこれだろ。」

「そーだよ。」

「魔道具としてはどんな効果があるんだ?」

「人間が着るだけで身体能力向上の魔法がかかるみたい。」

「そりゃ便利だな。」

「どうかな。着た人の魔力を使い続けるから、呪われた鎧とか言われてたよ。」

「着てるだけで?」

「そー。」

「はは、そいつはきついな。だから持ち出されなかったのか。」


 俺には影響はあまりないだろうが、戦闘職の常人が着ればすぐに魔力切れを起こす。

 討伐任務ならともかく、長時間の戦闘になる(いくさ)では役に立たないのだろう。


「そういうこと。爆裂盾の方は単純に忘れ物。尖塔のてっぺんに保管されてたんだけど、誰も気にしてなかったよ。ここまではあーしが持ってきてたんだ。」


 次元袋の口を開けて爆裂盾に被せ入れていく。


「その盾は衝撃を受けると爆発が起きる魔法陣が中に彫られてるみたい。あーしは関与してないから詳しくないけど。」

「…触れただけで、じゃなくて良かったよ。」


 何も気にせず盾に触っていたので、一瞬ぞっとした。

 先にちゃんと聞くべきだったな。

 そして疾風(はやて)の鎧も収納する。

 あとは赫石(かくせき)だけだ。


「宝石はどこ?」


 フィネが言った。


「この壁の中なんだけど…どうやって取り出そっか。」


――パリン!


「ええええええ!?」


 フィネがためらいなくステンドグラスを破壊した。

 わたわたと動くフレィアを無視して、壁に残った破片をブーツで蹴り落としていく。


「で、どこ?」

「あ……えと、そこです。」


 フレィアが壁の中を指差す。

 俺の角度からでは見えないが、フィネには見えているようで、金貨くらいの大きさの赤い石を取り出した。

 きれいにカットされている。


「かなり上等! お前さっき授けたって言ってたけど、これ簡単に作れるの?」

「そんなわけないしょー。宝石にあーしが魔力付与したけど、宝石の質が良くないとこうはならないよ。」

「あーそういう…」


 さっきまでは気付かなかったが、結構な魔力を感じる。

 魔石の一種なのだろうか。


「アタシの次元袋、空っぽだからこっち入れていい? 割れるとやだし。」

「いいよ。」


 フィネが満足げに宝石をしまう。

 それを見たフレィアも、ほっとしたように小さくため息を()いた。


「フレィア、だっけ? アタシの怒りは収まったから一つアドバイスしてあげるよ。」

「アドバイス?」

「うん。ここにいたって暇でしょ。だったらイズミと一緒に来ればいいよ。」


 …ん?


「フィネ?」

「ん?」

「どういうことだ?」

「武器に宿せばいいじゃんてこと。【精霊付与】で。」

「もうハルミゥクがいるから無理じゃないか?」

「え、そうなの?」

「…いや、わからんけど。【精霊付与】っててっきり(ひと)精霊だけなのかと思ってたから。」

「アタシはどんどん増やせるのかと思ったけど。」

「ふむ。」

「あのー…なんの話をしてるかわからないんだけど。」


 ハルミゥクに聞いてみるか。

 スキル【武具収納】を発動して『イイズナ』を取り出す。


『はいはーい!』


 声と共にハルミゥクが現れた。


「お、出た。」


 フィネが言った。

 早速、実体化したらしい。


「こんにちは。今日もまた新しい方がいますね。」

「精霊!?」


 フレィアが大声を上げた。


「んー? 火の精霊さんですか。」

「あああ…そうだけど…」

「私は地の精霊のハルミゥクと言います。」

「っ。あーしはフレィア。」

「…ふーん、イズミ様、そういうことですか。」


 ハルミゥクがじと目で言った。


「どういうことかはわからないが、聞きたいことがあってな。」

「なんですか?」


 俺より先にフィネが口を開いた。


「イズミの【精霊付与】ってさ、精霊の人数の制限あるの?」

「ありませんよ。」


 フィネが「ほらね」って顔で俺を見る。


「…フィネに感謝だな。」

「ふっふ~ん。」

「フレィア、俺のスキルに精霊を武器に付与するってのがあるんだ。それを使えば連れ出すことはできる。」

「…あー、イズミ様?」

「うん? どうした?」


 ハルミゥクがフレィアに何か目くばせしながら言う。


「その辺の説明はしなくて大丈夫です。私たちってそういうのわかるので。それに…あ、なんでもないです。」

「それになんだ? 最後まで言ってくれよ。」

「いえ、なんでもないです。私の勘違いでした。ほら、フレィアさん、どうします?」

「え!? 行く行く。絶対その方が楽しそうだし。」

「決まり! それじゃあイズミ様、フレィアさんにも専用武器を作ってくださいね。」

「あ、ああ。」


 なんだかハルミゥクに仕切られてしまったが、いいのだろうか。


「フレィアさんはどんな武器が好きですか?」

「剣! 錆びてないやつ!」


 それは最低限だ。

 この城にある剣は全部錆びているのだろうか。


「ほかに何かないか? 長剣とか短剣とか大剣とか曲刀とか。」

「じゃあ赤い剣がいい。」

「色か。剣身(ブレード)は無理だが、赤を入れることにするよ。」

「やった!」

「ではでは、精霊体になってイズミ様のマントか何かに宿ってください。」

「うん。」


 フレィアが見えなくなった。


「イズミ様、ちょっと不安なので【精霊付与】するときは私も呼んでください。」

「わかった。」

「では。」


 【武具収納】で『イイズナ』を収納する。

 フィネと二人きりになった。


「しかし良かったのか? かなり怒ってだろ。」

「あの宝石でチャラだよ。」

「ならいいんだけど。」

「じゃあ帰ろ。なんかすっごい疲れたし。」

「珍しくうろたえてたもんな。」


 慌て姿のフィネを思い出す。

 フィネは扉に向かって歩き出した。


「忘れてよ恥ずかしい。」


 俺に背を向けたままそう言った。



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