大商業都市カルスルエ①
「みーえーたぁー!」
「あれがカルスルエか。さすがにでかい町だな。」
山道の途中、木々が途切れたところから下界が覗けるようになった。
この山を下りれば広い平野になっているようだ。
正面には巨大な湖があり、その湖畔の一部に面した大都市が見える。
ステイナドラーの代表都市、カルスルエだ。
高い城壁に囲まれた多角形の城塞都市になっており、街の中央には四角い塔がそびえ立っていた。おそらくそこにはステイナドラーの君主である代表がいるのだろう。
「ここで休憩しようよ。」
「そうだな。」
土魔法を使って地面を隆起させ、ベンチを作る。
フィネが端にちょこんと座り、俺は少し間を開けて隣に座った。
「フィネは行ったことあるんだっけ?」
「ないね。だから最初は道案内を頼まないと。」
「道案内?」
「うん、ステイナドラーは人の行き来が活発だからね、大きな町には観光案内がいるんだよ。初めて町に来た人の案内をして小遣いを稼いでる。」
「小遣い? 子供なのか?」
「そう、孤児院暮らしの子供が多くて、銭貨5枚もやれば大喜びだよ。」
「へぇ。」
「まずは冒険者ギルドとセルテン商会の場所を確認しないとかなー。あとご飯のおいしい店も。」
セルテンとはオーベルンで別れ、カルスルエで合流することにした。
魔法でひとっ飛びでもいいのだが、道を覚えるために俺たちは徒歩を選んだ。
対してセルテンは馬車。山は迂回しなければらないとしても、速度では敵わない。今回は護衛もしっかり連れているし、どうしたって俺たちよりは先に着いているだろう。
「最初に商会がいいよな。ええと、まずレッサードラゴンの素材代金を受け取って、宿を割引で紹介してもらう。あとなんかリングくれるとか言ってたな、セルテンの客である証明の?」
素材代金は金貨で1,000枚。
持ち歩くには重すぎるからカルスルエで受け取ることにしている。
「上客って言ってたよ。かなり割引きするって。」
「買い物のたびにセルテンさんに借りを作るみたいな感じがするな。」
「そう思わせるのも狙いでしょ。アタシは全然思わないけどね、うしし。」
「フィネはいい性格してるよな。」
「褒め言葉でしょ?」
「もちろん。」
「あ! 思い出した。あれ売ろうよ、あれ、ミスリルの棒。」
ああ、ランスの『イイズナ』を作ったとき、素材として土の精霊が作ったミスリルか。
余りをスキル【鍛冶】でロッドに変えて【武具収納】でしまっておいたものだ。
すっかり忘れていた。
「そういえばそうだな。それに…スケルトンが落とした魔石もついでに売るか。」
「ぉー、そんなのもあったね。一気に大金持ちだねぇ。」
フィネが上機嫌そうに言う。
「家でも買って引退するか?」
「冗談でしょ。まだまだ稼ぐよー。」
「ふっ、だよな。」
「あ、イズミ。魔物が来たよ、空から。」
フィネが言い終わる前に殺気が降ってきた。
チラっと見るとコウモリのような羽を生やした魔物が急降下してきている。
「フレイムダガー。」
動きが直線的すぎてまともに狙う必要もない。
得意魔法の炎の短剣を飛ばしてやる。
「ギッ…!」
うめき声が聞こえ、近くの地面に落下した。
尖った耳に長い尻尾が特徴的だ。
「ただのインプか。」
「さっすがー!」
フィネがそう言いながら鎖をポケットにしまっている。
自分も鎖鉄球で迎撃する用意ができていたらしい。
「でもさ、イズミ。」
「うん?」
「ここまで意外と魔物に会わなかったよね。えっと、3体?」
「そいつ除きで3体だな。リトルベアと、ガンガドーラにロックマウス。」
「少なすぎない?」
「うーん…街道沿いだしこんなもんじゃないか?」
「そうなんだ。いっつも森の中とか山ん中とか動いてて、あんまり街道使ったことないからそういう常識はないんだよね、アタシ。」
「そうなのか?」
「うん。あれ、言ってなかったっけ? アタシ家出してきてんの。」
「聞いてないな。別に問題もないけど。」
「ないの?」
「ないな。」
フィネが俺とは反対の方を向いた。
表情を見られないようにしているつもりだろうが、口の端が吊り上っているのが見える。
あらためてカルスルエを見る。
城塞の外側には農地が広がっており、民家も結構ある。
街の外に暮らす者も大勢いるようだ。
一部の農地は壁内にあるし、今も作りかけの壁が見えるから増築を繰り返して街を徐々に大きくしているのかもしれない。
その結果か、城壁で囲った町は角の多い多角形となっている。
湖の方向には埠頭が数本伸び、船が数隻確認できた。
小さい船もたくさん泊まっているようだ。
「でかい町だよな。」
「イズミそれさっきも言ってたよ。」
フィネが笑う。
「そだ、カルスルエに入る前に一回ステータス確認しよーよ。」
「そういえば最近全然見てなかったな。」
レッサードラゴンの件でバタバタしっぱなしだったせいか、まるで確認せずにここまで来てしまった。
フィネの言うとおり一度確認しておいた方がいいだろう。
ジョブカードを取り出し、『オープン』と唱える。
【イズミ】
冒険者ランク F
武装支配者
レベル35(+2)
ステータス
筋力 364(+27)
防護 238(+20)
敏捷 293(+31)
魔力 X
天運 270(+10)
スキル
天賦の才(剣術lv9*up、槍術lv4*up、鎚師lv5、投擲lv3、操鎖lv1)
達人鍛冶(精錬、抽出、鍛冶、創剣、武器強化、武器劣化、
属性付与、精霊付与、武具収納、武霊解放)
「ふむ、レベルが2つ上がったな。あとは剣術と槍術か…」
「わぉ! アタシは8個も上がったよ! 髑髏窟のときほどじゃないけど、でもやっぱでかいなぁ。」
フィネがジョブカードを差し出してきたので自分のカードと交換した。
【 アドルフィン】
冒険者ランク F
獣拳
レベル41(+8)
ステータス
筋力 219(+42)
防護 144(+32)
敏捷 254(+48)
魔力 62(+10)
天運 51
スキル
獣の戦
(拳法lv5*up、跳躍lv5*up、
操鎖lv2*up、手刀lv3*up)
一匹狼(孤狼、簒奪)
「レベルは完全に抜かれたな。」
「レベルよりステータスっしょ。マジでこのジョブ強いよね。」
「フィネの【一匹狼】もめちゃくちゃ強かったぞ。」
「あー、すんごい調子上がってったもんね。でも敵が大量に出てくるなんて状況そうそうあってほしくないわ。」
「ふはっ、言えてる。」
フィネにジョブカードを返し、自分のカードをしまった。
フィネも胸ポケットにカードをしまう。
「そういや【武霊解放】ってやつ? 試しに使ってみようよ。」
「ああ、ハルミゥクももう回復しただろうしな。試してみてもいいかもしれないが…」
「どうかした?」
「『イイズナ』はでかいからな。基本的には突きしかしないし。ヒュージトータスみたいなでかくて硬い魔物なら有効だけど、今はあんまり使いどころがないと思って。」
「むむ……じゃあそういう依頼受けよ。」
「なるほど、それなら一石二鳥か。」
フィネが立ち上がった。
俺も立ってベンチを土に戻す。
休憩は終わりだ。
「よーし! あとちょっと、がんばろーぜ!」
「おう!」




