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新しい朝と新しい武器②

 ギルドに着くと、建物の外にまで人が(あふ)れていた。


「ねぇアニー、なんかあったの?」


 フィネが女性冒険者に声をかける。


「お?アドルフィン?久しぶりね。」

「うん、久しぶり~。」

「なんでも北の街道にでっかいレッサードラゴンが出たらしいんだってよ。依頼は全ストップだけど、特別報奨ありの討伐隊組むから待ってろって言われてみんなで待ってんの。朝からずっと。」

「ほぇー…北の街道…」

「どんな個体なのかの情報はないのか?」


 俺が割って入って聞く。

 北の街道なら夕日の丘とは別方向だが、もし(ディノ)REX(レクス)種なら俺が倒したやつかもしれない。


「えー、さっき名前言ってたけどあたしは憶えてないわよ。ジャックは?」

「あ゛?」


 肩幅の大きい男が振り返った。

 目つきだけで人を殺せそうな顔つきをしている。


「レッサードラゴンの名前、憶えてない?」

「…ディノドルン、とか言ってたな。」

「だってよ、お兄さん。ありがとねジャック。」


 ジャックが何も言わずにまたギルドの方を見る。


「なるほど、助かる。」

「いやいや、名前だけじゃわかんないでしょ?」

「実際に見たことはないが、特徴ならだいたいわかるぞ?(ディノ)=ORN( ド ル ン)種はでかい(とげ)が特徴的な魔物だよ。大型種だけど、棘を武器にするから比較的力が弱い。ただし素早い。棘の生え方は個体によって違う。だったかな。」

「へー、お兄さんすんごい詳しいね。会うのは初めてだっけ?」

「ああ、イズミだ。」


 女性冒険者が手を出してくるので握手する。


「あたしはアンネ。そのままアンネでもアニーでもいいわよ。」

「よろしく、アニー。」


 フィネに合わせてアニーと呼ぶことにしよう。

 フィネが俺の顔の前に手を上げた。


「はいはい!普通の依頼受けらんないなら今日は別のことしよーぜ。」


 一理あるな。これだけ人数がいればレッサードラゴンも脅威にはならないだろうし、俺たちは別のことをしてもいいだろ。

 今はハルミゥクと話すのを優先したいし。


「…だな。とりあえず町の外に出よう。」

「オッケー。」

「だったらお二人さん、裏から出た方いいよ。正門は封鎖されてるから。」


 だろうな。正門はそのまま北の街道に繋がっている。


「ありがとう、アニー。」


 そう言って俺たちは裏門に向かった。





 裏門を開けると、外にマンヴェンがいた。


「お、モンヴァン!」

「アドルフィンか。またギルドに寄らなかったのか?緊急依頼が出るぞ。」

「知ってるけど、アタシにレッサードラゴン討伐とか無理だって。」

「偵察・索敵なら得意だろ。」

「見つけるのはいいけど、逆に見つかったら死ぬじゃん。走んの速いんだよ、あいつら。」

「なんだ、レッサードラゴンを見たことあるような口ぶりだな。」

「なぁマンヴェン!…こっちは別に封鎖してないんだろ?」


 話に無理やり割り込む。

 (ディノ)REX(レクス)種の話になったら面倒だ。


「ああ、通るのは構わねぇがよ。」

「てかモンヴァンは参加しないの?」

「それこそ無理だ。」


 マンヴェンは門番をやりながらも筋骨隆々とした肉体を維持している。

 鍛錬を怠っていない証拠だ。


「無理そうには見えないがな。」

「ああ、外見はそうでも、ナカをやっちまってな。長時間の戦闘はできねぇんだよ。」


 そう言ってマンヴェンは腹をさすった。

 内臓か。


「そっか、じゃあしょうがないね。でも門番は天職だと思うよモンヴァン。」

「マ・ン・ヴェ・ン!さっきからお前わかってて言ってるだろ。」

「にししっ、じゃあそろそろ行くねー。」

「おう、気を付けろよ、アドルフィン、イズミ。」

「ああ、また。」


 俺の名前もしっかり憶えているのか。

 やるな、マンヴェン。





「さて、と。この辺でいいかな。」

「いんじゃない?ハルミゥクを呼び出すんだよね。」

「そのとおり。」


 町から離れ、周りからも見えにくくなるところを探してこの岩陰に着いた。

 スキル【武具収納】を発動して『スサノオ』と『イイズナ』を取り出し、地面に置く。


「わっ!なにその槍!?」

「今朝作ったんだよ。」

「へぇぇ、鍛冶?創剣?さっすが、アタシが寝てる間にできちゃ…って(おも)ぉ!」


 フィネが『イイズナ』を持とうとしたが、片手では上がらず驚く。


「こんなの扱えるの?」

「これから試して調整かな。」


 『イイズナ』を取り、フィネから離れて構える。


 馬上槍(ランス)は突き専用の槍だ。普通の槍とは扱いが異なる。

 と言うか、そもそも馬の突進力を利用するもので、人は馬上で支えるだけの武器だ。地上で使うこと自体がおかしいとも言える。

 だが、俺にはスキル【天賦の才】の内在スキル【槍術lv3】がある。ジョブの筋力補正と合わせれば…


――スッ。


 真っ直ぐ、ぶれずに突きを放つ。

 ほとんど音も鳴らない。


――ヒュッ、ヒュッ。


 何度か突きを繰り返す。

 いい感じだ。


 次に横振り。


――ブォン!


 槍の重さに筋肉が(きし)むようだ。

 振るには空気抵抗が大きすぎて無理か。


「ふぅ…」


 槍を下ろしてフィネのところへ。


「見てのとおりだよ。」

「結構(つら)そうに見えたけど?」

「でも扱えてただろ?」

「まぁ…レベル上がればマシになりそうかも?」


 地面に『イイズナ』を置いた。

 俺としては上々の結果だったのだが、見てる側には異なる印象を与えたようだ。


「で、どうやってハルミゥクを呼び出すの?」

「それは…」


 寝てるって言ってたし、声かければ起きるのだろうか?

 試してみるか。

 『スサノオ』に向かって声をかける。


「ハルミゥク!専用の武器を作ったぞ!起きろ!起きろ!おーい!」


「…かなりやばい()だわ。」


 フィネが何か言っているが、聞こえないことにして声をかけ続ける。

 それだけでは反応がないのでぺちぺちと刀身を叩くと、『スサノオ』がうっすらと光を纏った。


「お、もしかして起きたか?」

『ふぁい…?もう準備できたんですか?』

「ああ!できたぞ!」

『じゃあ実体化しますねー。』


 ふわっと光が舞ったかと思うと空中に女性が現れた。

 地の精霊、ハルミゥクだ。


「お、出てきた!」


 フィネが声を上げる。

 おそらくさっきの声は俺にだけ聞こえていたのだろう。

 ハルミゥクが手で差しながら言う。


「イズミさんにー、アドルフィンさん!…ですよね?」

「ああ。あらためてよろしく、ハルミゥク。」

「よろしくー。」

「はーい、よろしくお願いします!しっかし仕事速いんですねぇ。まだ半分も回復してませんよ、わたし。」


 人間なら一晩寝れば全魔力が回復する。

 規格外に魔力が多い俺でも、丸2日まではかからない。

 精霊は魔力量が尋常じゃないと聞くが、もう少しで丸2日になるというのに半分にもならないとは。


「そりゃあ悪かった。早く見せたかったんだよ、こいつを。」


 『イイズナ』を持ち上げて見せる。


「きゃー!!なんですかこれ!?かわいいいぃぃ!!」


 いきなり大声を出すので俺もフィネもビクッとした。

 ハルミゥクが片手で槍を取る。


「え、重くないそれ?」

「精霊に重さなんて関係ありませんよっ。えー、良い色してる。うっとりしますねぇ。あ!イズミさん。この模様とか、わたしの髪型イメージしてます?」


 そのとおりだが、面と向かって聞かれるとなんだか恥ずかしい気持ちになる。


「まぁ…」

「きゃー、イズミさんたらわたしのこと好きすぎません?人間ってホント精霊のこと好きですよねぇ。」

「イズミ…」


 フィネが(あわ)れむような目で俺を見る。訂正したいが、これはなんと言えば正解になるのか…。


「ランスっていう判断も良いですねぇ。剣だったらどうしようと思ってました。うんうん、わたしとしてはメイスが好きなんですけどー、このランスなら全然ありです。」

「そりゃ良かった。なら合格か?」

「んー、そうですねぇ…うん!75点!!」



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