髑髏窟⑥
【ルイ・ガートゥ】
冒険者ランク D
大魔法師
レベル35
ステータス
スキル
大いなる魔(魔法増幅lv5、魔導効率lv3、詠唱省略、魔砲)
魔の代償(負傷増幅、漏洩体質、反動)
ふむ、ステータスは隠したままで、スキルが見られるように表示したようだ。
スキルは【大いなる魔】と【魔の代償】か。
魔法の増幅と魔力の効率化に、詠唱省略まであるのは強いな。魔砲ってのはわからないが、遠距離アタッカーとしては無類の強さを発揮しそうだ。
そんで、その代償が別スキルになってる。どれも嫌な感じのスキル名だ。
「この一番最後の【反動】というのが、負傷中は魔力回復が遅くなるというものです。」
まぁ、信じても良さそうだ。
フィネを見ると、目が「いいんじゃない?」と言っている。
俺が勝手にそう思っているだけかもしれないが。
あれ?今ルイは「負傷中は」って言った気がするな。
「今、負傷中って言ったか?」
「ええ。脚を怪我してしまって。」
なら回復しとこう。
「ヒール。」
「え…?」
驚いた表情でルイがローブの裾を持ち上げた。
白い脚があらわになり、思わず目を背ける。
脚のどこを怪我していたのかは知らないが、太ももまで出すのはマズいんじゃなかろうか。
「治ってる…」
「魔法が使えるのか!?」
呟くルイに続いてアランが言った。
「あ、ああ。簡単な魔法ならな。」
「すごいな!魔術師なのにあんなすごい剣術が使えるなんて!」
「いや、ジョブは近接だよ。」
「ならもっとすごいよ!もしかして魔法剣士なのかい!?だったら…」
「アラン!その辺にしとけ。ルイの治療、感謝するよ。」
「構わないよ。そうだ、水と食料欲しいよな。」
背負い鞄から水筒と食料を出して渡す。
「恩に着るよ。礼は必ずする。」
「困ったときはお互い様だろ。」
スケルトンを確認すると、こちらを見ているが、近づいては来ない。
やはりここは安全なようだ。
俺たちも食事にするとしよう。
「じゃあこの扉の先にボスがいるの?」
「ああ、そのはずだよ。オレたちは入ったことがないけど。」
食事の間だけで、フィネはあっさりと彼らと打ち解けていた。
まだ緊張しているのは俺とダンの2人だけだ。
「ボスってどんなやつだかはわかる?」
「あまり詳しくはないわねぇ。話に聞く限りだと、大広間に入るたびに違うボススケルトンがいるらしいわ。共通してるのは大型であること、急所骨が複数あること、全部の急所骨を破壊しないと倒せないこと…くらいかしら。」
「へー。」
「オレたちって男2人で敵の攻撃受けつつルイの攻撃魔法で弱点とか関係なく吹っ飛ばすスタイルだから、弱点を狙い撃ちしなきゃならないボス討伐は最初から諦めてるんだよね。」
「そーなんだ?」
「ああ、あと外見で言うと、馬型とか、悪魔のような見た目のとか、骨の山みたいなのとか、超巨大スケルトンとかかな。ダン、他にもなんかあったっけ?」
「10匹の犬型スケルトンを使役するやつと、八本腕だな。」
それは恐ろしいラインナップだ。
相手によって戦い方も随分違うものになるだろう。
「うへー、そんなに種類あるんだー?」
「多分もっといるんじゃないかな。攻撃方法も全然違うから、探り探り戦うしかないらしいよ。」
かなり面倒そうだな。
2人でやれるだろうか…?
「どうするフィネ?」
「行くだけ行ってみようよ。」
即答か。
「アドルフィンさん、行くって?」
「ボスにチャレンジしてから外に戻ろうと思ってたんだ。ちょっと行ってきていいかな?」
「えぇ、そんな散歩に行くみたいな感じで大丈夫ですの!?」
「大丈夫。ヤバかったらすぐ戻るから。」
「戻る…って、一度入ったらボスを倒すまで出れないのではなくて?」
「そうなのか?」
ルイの言葉にアランが反応した。
ルイも俺と同じ印象を持ったようだが、アランはフィネ派か。
フィネに言われたのと同じことを聞いてみよう。
「どういう原理で?」
「え…?」
ルイが俯き加減で考え始めると、ダンが口を開いた。
「鍵穴も閂もないみたいだし、少なくともこっちからは閉じ込められないよな。」
「だよなー。」
「えっと、やるとすれば…」
ルイが天井を仰ぎながら話しはじめる。
「魔力検知を発動スイッチにして、魔力を持つ者が大広間に入ってきたら力魔法で扉を閉める。封鎖は、扉に物理的な錠を付けて力魔法で閉じれば楽ね。魔法開閉なら鍵穴は必要ないし。力でこじ開けられないように錠と扉の稼働箇所だけに結界用の防御魔法を張る。」
なるほど、俺とは発想が違うようだ。
ふむ、防御魔法を稼働箇所に限定するのか。
防御魔法は小さいほど強力になるし、それなら消費魔力も小さくなる。
「ボススケルトンの魔力が消えたら、または侵入者の魔力が消えたら魔法を解除して錠も開錠する…とかどうかしら?」
ふむ、ルイは俺よりも魔法に精通してそうだ。
だが…
「それを永続発動するとして、魔力源はどうするんだ?」
「…あ。」
返答を待ってみる。
他の3人は話の中身がわかっていないようで、首を傾げている。
「無理ですわね。巨大な魔石が何個も必要ですし。」
「やっぱそうだよな…てことは、中に入っても戻って来れるよな。」
ボスが大きいスケルトンだから扉を通れず、部屋から出てしまえば安全になる。という前提も怪しいかもしれないとは思うが。
「なんとなくボス戦って逃げられないイメージがあったけど、よくよく考えたらそうですわね。イメージだけで話してしまってごめんなさい。」
「いやいや、俺も最初ルイさんと同じ意見だったから。」
「イズミ、アタシら全然話についていけない。」
フィネが俺の裾を引っ張る。
「ああ、大丈夫、納得したから。これで安心してボス部屋に入れるってことだよ。」
「ふーん…ま、いいや。じゃあ行こ。」
フィネが立ち上がった。
俺も立つ。
「オッケ。じゃあ3人とも、ちょっと待っててくれるか?」
「ええ、ご健闘を。」
「アンタたちくらい強ければ倒して帰ってきそうだな。」
フィネが扉を押すと、ゆっくりと開いていく。
そして2人でボス部屋に入った。
すぐにスキル【武具収納】を発動して『ツキノワ』を収納し、大剣の『スサノオ』を取り出した。
「広いね。戦いづらそう。」
あの3人が大広間って言っていたとおり、かなり大きな空間だ。
中央に何か石筍のようなものが生えている。
その奥に、大きなスケルトンがいるのが見えた。俺の背丈の倍くらいはありそうだ。
人型ではあるが、頭蓋骨が草食動物のような形状をしている。加えて、頭から巨大な鹿の角が生えている。
武器は大剣で、両手でそれぞれ見た目が異なるが、どっちも『スサノオ』よりも大きそうだ。
「広いな。俺は動きやすいが。」
「じゃあぶち当たるのは任せた。アタシは弱点探すね。」
「了解。」
ルイの言っていた中だと「悪魔のような見た目」のやつが近いだろうか?
おそらくはそいつとも別な個体だろうが。
鹿頭だし鹿野郎とでも呼ぶか。
「つっても正面から受けるのはキツそうだから、囮役ってことで。」
「はいよっ。」
そう言ってすぐにフィネが右に走り始める。
壁沿いを移動して後ろに回るんだろう。
俺も正面に向けて歩きながらフレイムダガーを十数本飛ばしてみる。
ボスの目が赤く光り、魔力が迸った。
魔法がきそうだ。
スケルトンが魔法を使うことがあるとは知らなかった。
一体何をしてくるのか。
少しの期待を持ちつつ防御魔法を展開する。
そして背中に光を感じた。
「後ろかよ。」
振り向いて受け…ようと思ったが、その光は攻撃魔法ではなかった。
「あー、スケルトンが魔法を使うとは思わなかったしな…」
独り言を呟く。
そして入口の扉が閉まり、何重にも防御魔法がかけられてしまった。




