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髑髏窟④

 1時間は経っただろうか。

 ひととおり蹴散らしたら小さな休憩を挟む、というのを繰り返し、スローペースだが着実に奥に進んでいる。


 遠目でも岩壁が青くなっているのがはっきり見える。薄暗い洞窟には似合わない澄んだ青だ。

 詰所(つめしょ)の男にはこの辺までにしておけと言われたが、相変わらず大した敵は現れていない。

 流石に一撃とはいかないけども、フィネの2~3撃でスケルトンが崩れるくらいには弱いから、レベル上げをするには不十分だ。

 まだまだ奥に進もう。


「あ!イズミ、見てあれ、黒い霧のやつ。」


 100メートルほど先に黒い鎧を着たスケルトンがおり、霧のようなものを(まと)っているのが見えた。


「あれが一段階強いってやつだな。」

「だね。そろそろこいつを解禁しようかなっと。」


 フィネがズボンのポケットから鎖の塊を取り出して地面に落とした。

 ベルクス。端に鉄球が留められている鎖分銅のような武器だ。もう一方の端にはリングが付いている。

 フィネはリングをグローブの上から小指に嵌め、鎖を手繰り寄せて絡まりを(ほど)いた。

 そしてリング側から腕に巻きつけていく。鎖は長いほど扱いが難しいから、短くして使うのだろう。

 鉄球から50センチくらいはぶら下げた状態で止めたが、きれいに腕に巻かれた鎖は武器というよりは手甲(てっこう)のように見えた。


「それ、骨砕くにはちょうど良さそうだな。」

「イズミ怖いこと言う。」

「え、いや、そのためのものじゃないのか?」


 俺の言葉を待たずにフィネは駆け出していた。

 俺も小走りで追いかける。離れすぎない程度にしなければ。


 フィネは走るのが速く、すぐに黒霧スケルトンに迫った。

 そいつがぎこちない動作で両手持ちの大剣を振り下ろしてくる。


「よっ!」


 フィネの掛け声が聞こえた。

 大剣を大きくかわすわけでもなく、軽くよけてすれ違っただけのように見えた。が、スケルトンが崩れ去った。

 すれ違いざまに一撃入れていたようだ。まったく見えなかった。


 フィネは勢いのままに前進するようだ。

 俺も真面目に走らないと置いて行かれそうだな…。





 フィネの動きはどんどん良くなっていった。

 レベル上昇というよりも体とスキルの使い方がうまくなっているという感じだ。

 スキル【跳躍】を使い瞬間的に加速して蹴りを繰り出し、次の瞬間には敵の死角から鉄球を放つ。

 獣人の天性というものなのだろうか、緩急のあるアクロバティックな動きは踊っているかのようにも見える。


 髑髏窟(どくろくつ)は奥に行くほど少しずつ狭くなっているようだが、逆に魔物の数は徐々に増えてきていた。

 ほとんどはフィネが倒している。しかし、数が多すぎるのであぶれて俺に向かってくるスケルトンも出始めている。

 そろそろ一度しっかり休憩をした方がいいかもしれない。


「フィネ!」

「んー!?」


 フィネが目の前にいたスケルトンを蹴った反動を利用してこちらに跳んでくる。


「どった?」

「一回休憩しよう。」

「休ませてくれないっしょー。」


 スケルトンはもう距離を取っても襲い掛かってくるようになっている。

 フィネの言うとおり長い休憩時間は作れないだろう。

 とはいえそれは「このままでは」という話だ。それならスケルトンが進入できない区画を作ってしまえばいい。


「試すだけ試したいことがあるんだ。」


 俺が得意な生活魔法の一つ、土魔法の応用で俺たちを囲う柵を作る。

 足元の岩石に魔力を走らせ、半径10メートルくらいの円状に、岩の柱を並べて立てた。

 柱には狭い隙間ができたから、柵というよりも即興の檻と言うのが良さそうだ。


「おぉー。」


 フィネが感心した声を出す。


「これなら入って来れないし、敵の武器も届かないだろ。」


 幸いまだ遠距離攻撃するスケルトンは出現していない。

 ただし、この洞窟はどういうわけか地面から湧き出るようにスケルトンが出現しているようだから、檻の中にも湧く可能性がある。それは排除しなければならない。


「中に出たやつは俺がやるから、ちょっと休みな。」

「ありがとー。」


 言ってフィネは地面に座り込んだ。

 マットくらい敷きたいところだが、そういえば荷物は門番の詰所に置いて来てしまっていた。帰りに回収しないと。


 俺も座る。

 腰に吊るした水筒から水を飲むと、もう空っぽになってしまった。

 給水魔法で水を注ぐ。


「フィネは水、まだある?」

「あと一口で終わり。やばやば。」

「了解。」


 フィネから水筒を受け取り、同じく給水魔法で水を注ぐ。


「ホント助かるわ。一家に一台イズミだよね。ボス部屋まではもう休みなしだと思ってたし。」

「ボス部屋?そんなのがあるのか?」

「んー…正式にはなんて言うのかわかんないけど、えっとねー…」


 考える仕草。


「進んでいくと扉があって、扉の前は休憩所として使える。扉を通ると大きな部屋で、でかくて強いスケルトンがいる。って感じ?色んな人の話を混ぜ合わせるとだけど。あ、あとそいつを倒すとお宝が手に入るって。」

「ほうほう。そこがゴールか。」

「んーん、ボス部屋のあとにも洞窟は続くって。もう1つボス部屋があって、その奥には強力な防御魔法の結界があって進めなくなるんだって。」


 強力な防御魔法?

 しかも永続するような大魔法か?

 内側から防御するということは、中に守りたい何かがあるってことだろうか?

 もしかして、この洞窟自体がその何かを守るためのもの…いや、これは邪推か。

 歴戦の冒険者が進めていないなら俺が行っても同様に進めないのだろうし、興味本位で開けていい蓋じゃあないだろう。


 そうだ、それよりもボスを倒せるかが問題だ。


「ボスは倒せると思うか?」

「んー?」

「強いスケルトンがいるんだろ。俺たちで倒せるかな?」

「さあねぇ?でもチャレンジしてみようよ。ヤバかったら逃げればいいんだし。」

「逃げれるのか?」

「でかいってことは扉通れないってことでしょ。部屋から出さえすれば簡単に逃げれると思うけど。」

「扉、開かなくなったりしないかな?」

「えー、どんな原理よ。」


 ボス部屋と聞いて、入ったらボスを倒すまで出られないんじゃないかと思ったが。

 原理か…そうだな、あらかじめ魔法をかけておくとして…


「扉の開閉をトリガーにして、扉の外側から(かんぬき)をかけ、かつ周辺に防御魔法をかけて通れなくする。さらに第2のトリガーを設定…これはスケルトンが倒されること?いや、その判断ってできないから、時間経過か、スケルトンを倒さなければ触れられない位置にスイッチを置いておくとかか。んで、その第2トリガーによって扉の(かんぬき)と防御魔法を解除。を、人が来るたび、何度も発動するように…?」

「ごめん、何言っているかわかんない。」

「あ、すまんすまん。やろうとしたら物凄い大魔法になるなって話だよ。そうだな、チャレンジしてみようか。」

「ね。お宝欲しいし。」

「お宝ってどんなものなんだ?」

「魔石か宝石。運が良ければでっかい魔石が出て大儲けだよん。」

「運か。」

「そそ、アタシたち天運値高いからね、期待大!」



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