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語らい②

「全部で銀貨75枚と銭貨4枚になりました。」


 町に戻ってすぐに冒険者ギルドに来て、ロスコ草を納品した。

 ついでにモフワ討伐の時に倒したホーンラビットの角なんかもまとめて納品したが、結構な額になったようだ。

 明細書と『実績』が差し出されるが、すぐに答える。


「ユリアナの査定どおりでいいよ。」

「承知しました。申し訳ございませんがギルドでは銭貨の取り扱いができないので、銀貨75枚になります。端数分として、兎の尾が銭貨5枚での引き取りなので、こちらをお返ししますね。」


 銀貨とテールラビットの尾が出される。

 銭貨1枚分おまけしてくれたようだ。


「ありがとう。」


 素直に受け取る。


「ねぇねぇユリアナ。」


 フィネがカウンターに両腕を置いてユリアナに絡む。


「今日仕事終わったら飲み行かない?それか家飲みでもいいけど。」

「うーん…うちの売上貢献もしたいけど、たまにはレストランにも行きたいね。黄金屋とか、パープルグラスとか。」


 ユリアナはイエスの回答もなく行き先を考え始めた。

 今日の夕飯は一人で食うことになりそうだ。

 そういえばまだ宿で夕飯を食ったことがないな。

 朝のパンはおいしいし、結構期待ができるんじゃないだろうか。


「じゃあ一回帰ってから出直す感じでいいかしら?」

「いいよー。」


 話がまとまったらしい。

 フィネと二人でギルドを出て宿に行く。


 そういえば宿の名前は大麦亭と言うらしい。

 看板を探すと…外の吊り看板にはINNとしか書かれていない。


 …ああ、カウンターの壁に大麦亭と書かれていた。

 なぜ今まで気付かなかったんだろうと思うくらいはっきり大きく書いてある。


「イズミ?」


 眺めている内にフィネがチェックインしてくれたようだ。

 慌てて銀貨を6枚、カウンターに置く。


 鍵を受け取って2階に上がると、フィネが自分の部屋の前で言った。


「ユリアナはアタシの部屋に来るだろうから、こっちで待ってよ。」

「ああ…うん?どういうことだ?」

「イズミの部屋に呼びに行くの面倒(めんど)いってだけだけど。」

「俺も一緒に行くのか?」

「当たり前じゃん。え、何、嫌?」

「いやいや、ユリアナと二人で行くのかと思っただけだよ。」

「…?」


 フィネが「お前アホか?」とでも言いたそうな顔をした。





「レッサードラゴン!?」


 ユリアナが声を上げて驚く。

 ちょっと声が大きいが、賑やかな酒場なので周りに不審がられることはなさそうだ。


「そうそう。馬車が襲われてたんだけど、イズミ助けるとか言ってさ。」

「えぇ、戦ったんですか!?」


 俺に向かって言う。答えに迷うがフィネが先に口を開いた。


「でっかい剣で一刀両断!」

「倒したのっ?」

「ね、イズミ。」


 フィネは俺に振ってワインをあおった。


「まぁ、首落とせば倒せるよな。」

「いえ、そんな簡単な話じゃありませんよイズミさん!レッサードラゴンなんて小型のものでも緊急依頼が出される危険な魔物なんです。そもそも戦おうというのが危ない、って言いたいところですが……本当にお強いんですね…。」


 前のめりに話し始めたユリアナも、最後の方はため息交じりに背もたれに体を預けた。

 呆れたと言わんばかりに(ひたい)に手を当てている


「世の中にはもっと強いやつもいるだろ。」

「それはそうかもしれませんが…。あ、あとそういうのはギルドに報告してくださいね。」

「ランクFがそんな報告しても嘘くさくないか?今回は証拠もないし。」

「た・た・か・う・ま・え・に!報告してください。」


 素直に頷くことにする。

 今回は緊急だったし、しょうがないと思うが。


「にっしし、怒られてやんの。」

「フィネちゃんもだよ!」

「うぇ…はーい。」


 フィネが肩をすくめる。


「あれ?そういえば素材は取らなかったんですか?」

「ああ。馬車を助けたって言ったろ?そいつが商人だったからその場で売ったよ。」

「そうなんですか。その方はご無事で?」

「ヒールで治る程度の怪我しかしてなかったから大丈夫だろ。迎えの馬も来てたしな。」

「ですか…。もう、レッサードラゴンは本当に危ない魔物なんですよ。もし大型だったらいくらイズミさんでもどうなっていたか。」


 (ディノ)REX(レクス)種は大型だと思うが。


「え?あれ結構な大型だと思うけど。イズミ、なんて言ったっけ、ティラノレックス?」


 フィネも同じことを考えたらしい。


「ディノレクスだよ。」


(ディノ)REX(レクス)種!?」


 またユリアナが大声を上げる。


「最大種じゃないですか!?ランクBのパーティで討伐するような魔物ですよ!」

「そうなのか?じゃあレベルが低かったんだろ。思ったより硬くなかったし。」


「…何かの勘違いでは…ええと、馬車の3倍くらいの大きさでした?」


 俺も答えようとしたが、フィネの方が早かった。


「もうちょい大きいかな。でも高さは2倍程度。」

「間違いじゃないみたいね。はぁ…」


 ため息。


「すまんなユリアナ、心配かけてるようで。」

「あ、いいえ、心配と言うか、ええと…イズミさんがすごすぎて言葉が見つかりません。」

「ねー。イズミすごいよね。パーティ的にアタシ役に立ってないから凹むんだけど。」

「そんなことないぞ。フィネの知識がなきゃ何もできてないだろうから、すごく助かってる。」

「ナビゲーターかよぉ。あー、むかつくから明日からレベル上げする!」


 フィネがグラスに触れるが、空っぽであることに気付いてほとんど飲んでいなかったユリアナのグラスを掴む。


「あ、フィネちゃんそれ私の…」


 言い終わらないうちにユリアナのグラスは空になった。



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