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77.もろもろ説明中でしたか

「ナタリア様。こちらに書かれているのは一体なんでございましょう?」


「なにって、先ほどマティウス様にそのように言われましたでしょう?間違いがございまして?」


ナタリア様の手帳には『夜空に明るく輝く月の光のような白金が縁取るお美しい顔かんばせには、凍える冬の風の眼差しではなく、春に咲く華やかな花の笑みを浮かべて』と書いてあった。


こんなくだらないセリフを書きとめた目的がわからない・・・はっ!まさか、殿下ではなく、マティウスにこういうことを言われることが、課金対象だったの?

えー、あんなときめきもないものに支払いをするのは嫌だわ。返品希望よ。


「たしかに、マティウス様からこういうことを言われはしましたが、わたくしには不要ですわ」


「んまぁ!エミリアーヌ様には不要でも、必要とされる方もいらっしゃるのですよ!」


このようなものを?という疑惑と不満を乗せて手帳を返すと、ナタリア様が目を細める。


「エミリアーヌ様。貴女、学院に入る準備はなさっていて?」


「・・・通常考えられる準備でしたら」


「んまぁ。貴女、エリザベル様と仲がよろしいのでしょう?お兄様もいらっしゃるのに・・・ああ、なるほど。ふんふん、そういうことですのね、ええ、そうでしょう、そうでしょう。侯爵家ともなればそのような根回しなど必要ないのでしょう。わっかりましたわー」


ナタリア様がなにかひとりで納得しているけれど、面倒くさそうだから相手にしなくていいかしら。


それにしても、話が学院のことに切り替わったということは、マティウスは課金イベントとは関係がない?

もしかして、わたくしまた勝手にひとりで盛り上がっていただけで、殿下から受けた勘違いしそうな感満載の行動もイベントではなかった?無料?

あー、ありえるわねー。

また早とちり→勘違い→思い込みのコンボを決めてしまったようだわ。

はぁ、大失敗。無料ならばもっと幸せに浸れたのに。


「ちょっと!エミリアーヌ様。いくらご自分には関係ないからといって、興味すら持たないのはどうかと思いますわ。わたくしのように!伯爵家の者であっても情報は集めるべきですのよ!」


「・・・マティウス様の情報を?」


「仕方がありませんわね。わたくしが!お教えして差し上げますわ。いいですこと?学院には数多くのクラブがございますのよ!」


「ああ、兄は剣術クラブに入っていると聞いたことがありますわ」


「ええ、ええ、やはりロイスバル様は堅実ですのね。それは学院の公式クラブですわ。実はそれとは別に、非公認のクラブが多数存在しますの。でも、そちらの方が人数も多くて派閥もありますのよ。そして!そこへ円滑に入れていただくには、手土産が必要ですの!特に情報は喜ばれますわー」


あ!はいはい!例の、“美しき者(Beautiful)仲良き(Love)哉の会”は間違いなく非公認クラブでしょうね。

もう入会する気満々で、オペラグラスは会員専用の品を斡旋されるのか、自分で用意するのか、それを確認しないといけないとは思っていたけれど、手土産も必要なのね。

そして手土産には情報が喜ばれる、と、ふむ。

ロイス兄様とラウルのいちゃいちゃ情報でいいかしら。

腐っているだけに腐るほど脳内に貯め込んであるけれど。


「まあ。そうですのね。わたくしも書きとめることにしますわ。教えていただいて助かりました。なれど、マティウス様のおっしゃるお世辞を必要とするクラブなど、く、いえ、あまり面白みは無さそうですのに、ナタリア様はそこへ入会希望ですの?」


危ないわね。

淑女たるもの、うっかりでもくそつまらないなどと言ってはいけませんわよ、わたくし。


「んまぁ。わたくしは別のクラブへ入会する予定ですけれど、面白くないだなんて、酷いですわー。そのクラブでは真面目に研究していますのよ、どう言えば女性に喜ばれるとか、嫌がられるとかを。人間関係をより良くしようという高尚な研究なのですわ。ですから研究対象はマティウス様に限りませんの。ただ、マティウス様はよく研究材料を提供してくださるので、集めやすいのですわー。ああ、違うクラブに入るわたくしにそんな情報は必要ないだろうとおっしゃりたいのでしょう?いいえ!そんなことではいけませんわ!情報というのは手広く集めなければ。同じ学院内ですもの、繋がり!というものはどこかでございますの。取り引き、駆け引きは必須でしてよ!エミリアーヌ様もいつまでもぼんやりしていてはいけませんわー!おわかりになりまして?」


「はぁ。わかったような気がします」


くだらないことを研究しているクラブもあるということだけは。

要はモテたいだけなのでしょう。


「まったく。貴女、王太子殿下の婚約者候補だった頃はもっとしっかりしていたのに腑抜けましたわね。仕方がありませんわ!同じ候補者だったよしみで、わたくしが!学院の情報を流して差し上げます。この!わたくしの情報ですのよ!頼りになることでしょう」


「ええ・・・よろしくお願いします」


まぁ。どうやら、悪役令嬢の取り巻き第一号が誕生したようよ。

ゲームで見た記憶はないけれど、悪役令嬢の側にはこんな強烈なモブもいたのね。


「では、かわりにエミリアーヌ様は今の情報をよこしてくださいませ。王太子殿下がなぜもう婚約者候補ではないエミリアーヌ様に対してあのような態度をとられているのか。あと、なにをあきらめないとおっしゃっているのかを」


ええ、たしかに殿下は先ほど『諦めはせぬからそちらが諦めてくれ』と、お父様に宣言なさっていたわね。

殿下が諦めないもの?ああ、ひとつしかないわ。


殿下は、ご自分に合う魔石探しを諦めない。

だから、少しでも見つけだす可能性があるわたくしに優しくしておく。あの行動に納得ね。

単純だから、少し優しくすればいいように利用できるとお考えなのでしょう?正解です。

ああ、好意を持たせておいて乙女の恋心を利用しようだなんて。

そんな腹黒さも素敵です(ハート)


え?クロードとどこが違うんだ?ですって?

・・・ち、違うのよ。わたくし的には違うの、いいのよ、殿下ですもの。


たぶん今、お父様と話し合われているのもきっとそのことについてなのでしょう。

きっと娘LOVEのお父様が、わたくしのお出かけを渋ったので交渉なさっているのだわ。

ご命令くださればよろしいのに『エミリアーヌとの今後のために』、つまり、魔石が見つかるまで気分よくわたくしを連れ出せるように下手に出てくださって。


それにしても、殿下が魔石を探されていることを、ここで生きた拡声器であるナタリア様に探られてしまうわけにはいかないわ。

せっかくメアリに口止めしたのに、あっという間に広まってしまうことでしょう。

あぶない、あぶない。止めなければ。


「ナタリア様。そのことについてはお調べにならぬように、と、ご忠告申し上げますわ。首が飛ぶことになりましてよ」 わたくしの首が。


「んまぁ・・・エミリアーヌ様はとんだことに巻き込まれておいでですのね。ええ、ええ。わたくし、引き際は弁えておりますわ!リリメリル様の二の舞はごめんですもの」


「リリメリル様?あの腹黒、いえ、彼女がどうかしまして?」


そういえば、前にお茶会でサンドリア伯爵家がどーのとちょこっと聞いた気がするわ。


「んまぁ!なんてこと!あれほどの騒ぎでしたのにご存じないだなんて!貴女、さすがにサンドリア伯爵家がお取りつぶしになったのはご存じでしょうね?」


「え?お取りつぶし?サンドリア伯爵のせいで、いえ、王太子殿下の婚約者候補が10人になったのは、そもそもサンドリア伯爵が言い出されたことがきっかけでしょう?なのに・・・ああ、リリメリル様がなにかやらかしましたのね?」


そう、王太子殿下の婚約者候補が10人もいたことには理由がある。

我が国の貴族の婚姻についての不文律に、他国から妻を娶った場合、次の世代は必ず国内から嫁を選ぶというものがある。

我が家もそれに該当するので、アルフ兄様は仕方なく子爵家などと・・・いえ、それはもういいわ。

ロイス兄様は・・・我が国の平民・・・・・・・・・・それは置いといて。


現在の王妃様も国外からの輿入れなので、王子たちは国内から王子妃を選ぶことになるわけだけれど、今ある公爵家の令嬢は幼児しかいない。

そればらば侯爵家から、ということは、年回り的にエリザベルお姉様かわたくしが王太子妃に決まったはず。

そこへ自分の娘をねじ込んできたのが、サンドリア伯爵なの。


年に一度、その年国家に利益をもたらせた貴族は、王より褒章が与えられる。

そこでサンドリア伯爵は『褒章の代わりに我が娘を王太子殿下の婚約者候補に加えていただきたい』と希望した。

なにをお考えなのか(不敬)陛下はそんなふざけたことを承諾された(不敬)

そして『それでは、うちも』的に伯爵、子爵が追随し、ファドリック侯爵家に至っては養女を出してきた。

それで結局10人にもなったというわけ。


当時『どうせ侯爵家から決まるものを。まあ、褒章に割く予算が浮いたな』と、宰相であるシャルルのお父様がわたくしのお父様に言っていたのを知っている。

お父様が『それだけいるのだから、うちの娘は候補から降りていいだろう』と返事したのも知っている。

2日ほど口をきかなかったら、あっさりお父様は撤回してくださったけれど。


サンドリア伯爵が本気でリリメリル様を王太子妃にしたかったのかはわからないけれど、少なくともリリメリル様はその気だったのだから、なにかしらやらかしたに違いないわね。

それで家までお取りつぶしに?


怖い、怖い。

やはりわたくしはマイルドな悪役令嬢目指し、ヒロインには逆ハーレムを築いてもらわなければ!





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