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58.Sing, 侵害 song

「に、兄様、ロイス兄様!起きて下さいまし。まずいですわ」


「う・・・ん、不味いならいらない・・・」


ガタガタと皆が立ち上がる中、いまだ隣で寝ているロイス兄様を起こさねばとコソコソ声を掛けたのだけれど、首が斜めになってしまっただけで起きる気配はない。

ならば揺すぶろうかとロイス兄様の腕に掛けようとした手を、後ろから扇で止められた。


「わたくしが立ち上がれば後ろからは見えないでしょう。歌が終わるまでは寝かせて差し上げなさい。お式が終わればまたあちこちから声を掛けられてお忙しくなるでしょうし」


「はい・・・・・・エリザベルお姉様、シャルルはどういたしましょう?」


作法に厳しいお姉様がそうおっしゃるならばと、ロイス兄様はそのままにしてわたくしは立ち上がる。

その際、真後ろを伺うと、シャルルも座ったままで動く気配がない。

うなだれているからこちらも爆睡の様子。


「ああ、こちらは隠せないわね。起こしましょう」


スパン!


隣のシャルルを一瞥したお姉様が、立ち上がりがてらシャルルを閉じた扇で叩いた。

上から頭を、ではなく、真横からおでこを。

スナップの効いたいい音がしてしまったけれど、幸いにもまだ周りがガタガタしているので目立ってはいない。


「痛っ!ええー、なんですかー?」


「シャルル、起きて。最後にお歌を歌うのですって」


「もうそんな時間ですか。イテテ。今、僕を叩いたのはエリザベルお姉様ですね?もっと優しく起こしてくださいー」


両手でおでこをさすり、口を尖らせながらエリザベルお姉様を見上げるシャルルに対し、お姉様が扇攻撃を再開する。


「そ・ん・な・顔をしてももう可愛くないのよ!は・や・く立ちなさい!」


扇でパシパシとおでこに当てた手の甲を叩かれたシャルルが、渋々と立ち上がる。

お姉様はなぜか昔からシャルルに対しては厳しめなので、気にはならない。

また少し背が高くなった気がするシャルルがきちんと立つと、エリザベルお姉様はロイス兄様の真後ろに位置を据えて、心持ちいつもよりよけいに背筋を伸ばされた。


うーん、確かにお姉様の真後ろにいらっしゃるトラビスタ侯爵からは見えないでしょうけれど、死角は少なそうですわよ、お姉様。

あ、わたくしの前に立つお母様がちらりとロイス兄様を見て眉をひそめられたわ。

これは起こさないと後で兄様が怒られるのではないかしら。


それでもエリザベルお姉様が張り切って隠しているようなので、もうロイス兄様に声を掛けることも突くこともできない。

こっそり横からロイス兄様の足を踏もうかしらと考えていると、祭壇の両脇に20人ほどの聖歌隊の子供達が現れた。


そして大きな音で前奏が始まったのに、それでも起きる気配のないロイス兄様。

もう諦めましょう。あとでお母様に怒られてしまったら、フォローして差し上げますからね、エリザベルお姉様が。


さてと、お式はほとんど見逃してしまったけれど、歌くらいは真面目に聴きましょうか。


席の前の長テーブルにある楽譜を手に取る。

楽譜は事前に置いてあったもので、2枚重ねてあるので2曲歌うらしい。


先にどちらを歌うのかしら。

まあ、楽譜を見ればわかるわね。


え?譜面は読めるのか?ですって?

教養として一通り楽器は習うので、当然ここにいる貴族の皆様は読めるわよ。

それに悪役令嬢はハイスペックですからね。

わたくし演奏()()結構上手なのよ~、おほほほほ。


♪♪♪~


ああ、こちらの曲ね・・・って、やだ!これ、もしかして有名な映画音楽ではないの?

道理で前奏に聞き覚えがあると思った。

ちょっと!ゲームの音楽担当者!手抜きが過ぎるわ。

歌詞が違おうとも著作権侵害よ!


え?ゲームの中では流れなかったし、こちらの世界には取締り機関がないのだからいいだろう?

んー、そうね、わたくしが捕まるわけではないから別に気にすることではないわね。


♪神よ~♪清き光よ~♪


ふんふん。

歌を捧げると言っても、歌いたい人だけが歌う感じね。

聖歌隊の美しい澄んだ歌声を、低いおっさん声が台無しにするのは気がひけるのでしょう。

男性はほぼ歌っていなさそうよ。


ちっ。

聖歌隊の近くにクロードの姿を発見してしまったわ。

そうだった、ヤツは聖歌隊にも所属しているという設定だったわ。

顔が良くて、背も高くて、声も良いだなんて。

あー、素敵ねー(棒)

おモテになるのは仕方がありませんわね~。

わかったからこちらを見ながら歌わないで~。


♪共にいつくしみ~♪


・・・うっ。この斜め後ろから聞こえるのはエリザベルお姉様の歌声なのね。

そういえばあまり聞いたことがなかったかも。

なんでもお手本にできるお姉様にも苦手なことがあるのね。


え?そういうお前は歌っているのか?ですって?


いいえ。

わたくしは幼少期に『二度と人前で歌ってはいけないよ』と言われたことがあるので楽譜を眺めているだけですわ。


え?音痴なの?ハイスペック設定はどうした?ですって?


たぶん、楽器演奏はゲームのイベントにあって、悪役令嬢が素晴らしい腕前を披露してヒロインにドヤ顔する場面があるから上手なのだと思うわ。

でも、歌唱はなかったのよ。

だから手抜きなのでしょうね、プログラミングが。


あ、ちなみに、楽器ができないヒロインに、バイオリンのような楽器を手取り足取り教えるのはクロードよ。

背後からルーチェを抱きしめるようにして手を重ね・・・あー、身震いしちゃったわ。


はぁ。それにしても、ほんと、手抜きゲームよね。

せめてもうひとりくらい用意してくれてもよかったのに。


え?なにを?ですって?


もちろん、悪役令嬢を、ですわ!





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