表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/97

54.新郎の妹の心労はまだ続きます

「責任を取って・・・」


「殿下?一体何を?」


「あわわわわ」


消えたはずの処刑台への道筋に、思わぬところからまたもや明かりが灯ったのかと息をのむわたくしと、突然何を言い出すのかと訝し気にしながら殿下の元へと戻るアラン。

そして慌てふためくメアリを見渡された殿下が、フッと素敵に微笑まれる。


「いや、なに。たいしたことではない。簡単な頼み事だ」


頼み事?

ご命令下さればよろしいのに、わざわざ依頼という形に?


・・・ああ!殿下の御考えが理解できたわ!

メイドが王族を煩わせてしまったことへの罰だというのに、おやつを取り上げるだけで済ませるというのは外聞が悪いので、侯爵令嬢に罰として何かをさせたということにして事態を収めてくださるということね!

そして実際の依頼は簡単な内容にしてくださると。

ああ。なんと寛大な処置なのでしょう。

ついでにわたくしの処刑もチャラにしてくださらないかしら。


「はい。なんなりとお申し付けくださいませ」


処刑免除の期待も込めて、両手を胸の前で合わせ、ちょっと小首をかしげた仕草で申し出てみれば、殿下が一歩後ろへふらりと動かれた。


ああ、また殿下に引かれてしまったわ。

漫画や乙女ゲームを参考にしてみたけれど、まだ悪役令嬢でもない小娘と、彼氏いない歴=享年のハイブリットに、あざとカワイイはハードルが高いわね。

きっと、これをすんなりとできてしまうところが、ヒロインたる素質なのだわ。


「なんなりと・・・」


「マルセルム嬢!男性に向かってなんでもと言うのは危険です!」


殿下がつぶやきながら引いているというのに、アランが越権してでもわたくしを咎める。


ええ、わたくしだって、そんなことを簡単に殿方に言ってはいけないことくらいわかっているわ。

でも、王太子殿下の頼みとあらば、そうそう断わることができるはずがないでしょう?

それならばいっそ、なんでも積極的にやります!という姿勢を見せて、心証を良くしようという作戦なのよ。

・・・それも失敗したようだけれど。

ふう。計算高い女になるのも、経験値不足では難しいのね。


それにしても、ほんとうにバルトもアランも、兄弟揃って心配性よね。


「ご忠告ありがとう存じます。でも殿下だけにしかこのようなことは申し上げませんわ」


わたくしがアランにそう宣言すると「私にだけ・・・」とつぶやいて殿下がくるりと後ろを向かれた。


「殿下!」


アランが今度は殿下に向かって咎めるような声で呼びかける。


「わかっておる。私は変なことは言わぬ。だが、しばし待て」


やはり、わたくしの変な発言に引きまくられてしまったようで、殿下はわたくしに背を向けたまま無言になってしまわれた。


変なことしか言わぬ令嬢には、なにを依頼しても無駄かと考えこまれているのかしら。


これ以上失態して、面倒だからやはり処刑にしようと言い出されないように黙って殿下の沙汰を待っていると、メアリがスススっとわたくしの後ろへ寄ってきた。


「あの~お嬢様~。罰は明日からですよね?」


そうコソコソと囁きかけてきたメアリに「今日からよ」と短く返事をする。

一日でも早く終わった方がいいでしょうという、寛大なわたくしの配慮よ。


「結婚式のお菓子・・・」というメアリの絶望したかのようなつぶやきを聞き流していると、殿下が至極真面目な表情でこちらを向かれたので姿勢を正す。


依頼は簡単といわれども、それは殿下基準での簡単かもしれない。

一体何を頼まれるのかと、緊張でごくりと喉が鳴る。


「エミリアーヌ・・・いや、もう少し待ってくれ」


一瞬目が合ったのに、殿下はそうおっしゃるといつも優雅な殿下にしてはめずらしくどかりと椅子に腰かけ、両手で麗しのお顔を覆われた。


もし殿下の頼みが難題だった場合は、諦めてメアリの首を差し出しましょうと気合を入れてお言葉を待っていたのに、肩透かしを食らってしまったわ。


もしかして殿下はお疲れなのかしら。

いけない、お茶も出さずにいたわ。

でも、ここは教会だからメアリに命じても出せないでしょうね。

では、せめてさっきアランが持ってきてくれたお水を・・・コップがひとつだけ・・・それでお出ししたら、わたくしと間接キ・・・いやん。


「あー、エミリアーヌ。来週時間は取れるだろうか?頼みというのは属性の魔力を上げる魔石探しだ」


「魔石探し、ですか?」


わたくしが不埒な妄想に悶えている時に、殿下にさらっと依頼を告げられてしまったので、つい聞き返してしまった。


「ああ、ロイスバルとル・・・ラウルが持っている魔石は、エミリアーヌが選んだのだろう?」


ドキリと心臓が跳ねた。

もしかして、これはゲームの強制力の一環?

ゲームの王太子ルートでは、悪役令嬢が贈ったはずのアクセサリーを一切見かけることがなかったのに御所望なの?


はっ!そういえば、ただ公式グッズだからとあの時はあまり考えずに購入したけれど、悪役令嬢と婚約もしていないのにすでにアンドリューとロイスには魔石のアクセサリーが渡っているわ。

個別ルートでは使っていなかった殿下が、わざわざ悪役令嬢から受け取りたいと言い出されるということは、きっと逆ハーレムルートの攻略対象者全員でのなにかしらのイベントで必須アイテムなのね。


どうしましょう。

シャルルの分は手元に確保してあるけれど、王太子殿下とクロードの分は購入しなかったわ。

すぐにあの時我が家へきた商人を呼んでもらわなくては。

まだ売れ残っているといいのだけれど。


「承りました。至急商人を呼びまして、来週までにはご報告いたします」


「あ、いや、王都に私が行く魔石を扱う店があってだな、その、来週一緒に行こう!」


え?どちらのお店に?

王室御用達と侯爵家御用達は同じかしら。

王都に魔石を扱う店はどのくらいあるの?


それに運よくあの商人と同じ店だったとしても、あれだけの数をいちいち店に並べ直したりはしないでしょうから、殿下の魔石は移動販売専用に持ち歩いているものかもしれないのに。

前に殿下の分を見たので出してくださいとか言うのは変でしょう?


・・・え?ちょっと待って。

そのまえに、一緒に行こうっておっしゃった?

待って、待って!

わたくしひとりがお店に行かされるのではなく、一緒に?殿下もお出かけを?わ、わたくしと?


脳内がパニくって返事もできないわたくしを気にもせず、殿下が理由をご説明くださる。


「自分に合う魔石を手にすると、これは自分の石だ、手放してはいけないという気持ちになるそうだ。私も今までたくさん魔石を見てきたのだが、なんとなく合うかなという程度のものしかめぐり合っておらぬ。でも、ロイスバルもラウルも、エミリアーヌに選んでもらった魔石でそれを経験したと言っておってな。それでエミリアーヌに選んでもらいたいし、それならば一緒に行った方がよいだろう?ああ、ほら、これが今私が持っている魔石だ」


殿下がベルトに下がっている魔石の入ったアクセサリーを、わざわざ外して見せてくださる。

かなり大きくて色の濃い、見るからにお高そうな綺麗な魔石だけれど、すぐに違和感を感じた。


なにか違う・・・あ、色が黄色だわ!

王太子の公式グッズはの緑色のキャツアイ。つまり風属性のなのに。


「それは地属性の魔石、でしょうか?殿下は風属性の魔石を御所望なのでは?」


「いや、私が上げたい魔力は地だ。私は4つの属性を持っているが、風の魔力は強すぎて複合魔術を使う時に他とのバランスが取りにくい。特に使いたい魔術に地の魔力が足らず、あまりうまくいかないのだ。だから風属性の魔石はいらぬ。地属性の魔石を選んで欲しい」


・・・え?殿下は今、公式グッズはいらないとおっしゃったの?

公式グッズなのに必要ないとはどういうこと?


王太子の公式グッズを風と決めたのは、まさかイメージで?

運営?作家?どちらに苦情を入れたらいいの?


そして、依頼の魔石を見つけるすべを完全に無くし、またもや処刑の危機に立たされるわたくしへの補償は、どこがしてくださるの?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ