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04.お兄様たちがやってきた



「違うのよー!」


ラウルが出て行った扉に向かって叫ぶ。ただし小声で。


ノートを覗かれていたことと、イケメンの顔が近かったことにドキドキしただけなのよー!

決して好きだからってことではないんだからね!勘違いしないでよね!

あああ、ただのツンデレになるぅー!


ううう、まだ猶予があったのに早まったわ。

よく考えてからお父様に言うべきだった。

ラウルと婚約すれば、本当に、確実に、絶対に、ヒロインは逆ハーレムルートに乗ってくれる?

本当にあの怪しい男(ラウル)が婚約すべき執事なのか確認してか・・・する術はあるのー?


それに、今までお父様の隠し子疑惑でつれない態度をとっていたから、今更どう接していいのかわからない。

前世でも彼氏がいたことはないのよ、別にラウル自身を嫌いってことでもないけれど、急に懸想しているだなんて・・・恋をしている振りなんてどうやるの?


逆ハーレムルートを目指そうと決意したにも関わらず、ラウルと婚約することが現実味を帯びてきて焦る。

だって、結婚相手なのよ、ちょっと一回、もう一回考えさせてー。


駄目だわ、お腹が空き過ぎているわ。

結局少ししか書き込めなかったノートを眺めつつ、朝食を頂くことにした。


傷のある頬をあまり動かさなくて済むようにと考えられたであろう、やわらかい物ばかりのメニューで、難なく平らげた。

後で料理長にお礼を言っておきましょう。

あ、前世の記憶が戻る前のわたくしは、使用人にお礼を言うような性格ではなかったわ。


でも、ゲームと現実の生活は違う。

悪役は恋のスパイス的にヒロインの前でちょっぴりやり、16歳以降も処刑されずに生きるのだから、家の中での態度は少しづつ改善しなくては。


今日は包帯姿で無様に食事するところを見られたくないから人払いをしている。

なのでお茶のお代わりを入れてくれる侍女がいない。

こういう時、アンならちょうどいいタイミングでポットを持ってくるのに。


アン、いつもありがとう。休暇を楽しんでね。

一週間と言わず、3日で戻ってきてもいいのよ。



―――コンコン


誰かが扉をノックしてきた。

ぎゃ!朝食を下げにまたラウルが来たの!?


ばっとノート閉じ、さっと引き出しにしまう。

後で隠すところを考えなくては。


「ど、どうぞ」


身構えていると、少し開かれた扉から茶色い小箱がぬっとあらわれ、続いて顔を出したのは、長兄のアルフレット・マルセルムだった。

23歳の彼は物腰は柔らかいがとてもしっかりとしていて、頼りになる次期侯爵様。

半年後に結婚式をあげる婚約者がいて・・・ああ、その人にもつれない態度を取ってしまっているわ。


「アルフ兄様・・・(ごめんなさい)」


情けない声が出た。


アルフ兄様とは10歳も年が離れているせいか、お父様同様とてもわたくしに甘い。

たぶんそのせいでアルフ兄様の執事が逆に厳しくしてくるのだと、今になって思う。

わたくしのためだったのね。今後は逃げずにお小言も受けましょう。

ひーん、全方位対人関係の改善までやらねばならぬとは。


「エミリア、具合はどう?傷はまだ痛むかい?ほら、お見舞いだよ」


アルフ兄様が手に持った小箱を軽く揺らす。


「そ、その箱はチョコレートですね!?」


今までの自分の態度を反省して下がっていたテンションが跳ね上がった!


「ははは、その様子では大丈夫そうだね」


わーい!チョッコレッイトー♪

この世界、そうやすやすとチョコレートは売っていないのよ。

そしてアルフ兄様が持っているのは、わたくしが大好きなお店のものなの。


「わざわざ買ってきてくださったのですか!?」


「ああ、ロイスがな。自分で渡せばいいのに私に押し付けてくるし」


そう言ってアルフ兄様が脇に退くと、次兄のロイスバル・マルセルムがあらわれた。


「べ、別にたまたま近くを通りかかったから買っただけだ」


ふふふ、嘘ね。

王都から少し離れた辺鄙な村にあるお店なので、近くを通る用なんてないはず。

昨日は狩猟大会があったのに、買いに行ってくれたのだわ。

ゲームの中でもヒーローが馬を飛ばして買いに行き、ヒロインにプレゼントする場面があった。


「ロイス兄様、買ってこさせたのではなく直々に買ってきてくださったのですか?うれしいです。大切に頂きます」


包帯が巻かれた顔でも満面の笑みが浮かぶ。 あ、ちょっと攣れて痛い。


「た、たかがチョコレートに大げさだぞ!」


ロイス兄様がツンとそっぽを向いた。


「あー、エミリア、体調が大丈夫なら、お茶を飲みながら話をしないか?」


にこにこと私達のやりとりを見ていたアルフ兄様がそう言うので、テラスにあるテーブルへと移動した。

アルフ兄様が手配していたのか、すぐにメイドのメアリが紅茶とフルーツを持ってきた。


「こちらのフルーツはアルフレット様が買ってきてくださったものですよ」


メアリがテーブルに、カットされたいろいろなフルーツを並べていく。

私の大好きな桃もあるわ!アルフ兄様にお礼を言ってから頂いた。 おいしーい!


包帯を汚さないように気を付けながら食べていると、ガチャン!と部屋の中から音がした。


「申し訳ございません」


と、朝食のお皿を片付けていたメアリの声がする。

またドジっ子メアリがお皿を割ったのね。


「大丈夫ー?怪我しなかったー?」


「「「え?」」」


わたくしがメアリに向けて声を掛けたら、メアリと兄様たちが驚いた。

むー、そんなに驚くことないじゃない。

さっそく対人関係の改善を謀って、いや図っているだけなのに。


「あー、ところでエミリア。王太子殿下の婚約者候補を降りるそうだね。どうした?あんなに頑張っていたのに」


アルフ兄様が、ものすごく怪訝な顔をしながら問うてきた。


「ええと、それはその、違うというかまだ考えたいというか・・・お父様は了承してくださいましたが、家のためにはやはり王太子殿下と結婚した方がいいのですよね?」


次期侯爵様にも関わることなので確認しておかないと。


「いや、その心配はしなくていい。エミリアが殿下のことを好いていると思ったから言わないでいたのだが、今、我が家は少々立場が強くてな。無理に王家に嫁ぐ必要はないのだ」


「そうだったのですか」


よかった。それなら大手を振って王太子ルートを回避できるわ!


「でもな、ラウルは少し考え直して欲しい。我が国の王家より厄介だ」


アルフ兄様が少し申し訳なさそうに言ってきた。


「そう・・・ですよね」


やっぱり執事と侯爵令嬢では無理があるわよね。

きっと逆ハーレムルートは特別で、ボーナスルートだから成立したのだわ。

執事(ラウル)との婚約がなくなったことを、喜んでいいのか、それでは処刑回避はどうしたらいいのか、わからなくておでこに両手を当てた。


「べ、別にお前がラウル以外に嫁ぎたくないのなら、ずっと家にいても問題はないぞ」


今まで黙ってフルーツを食べていたロイス兄様が、わたくしが落ち込んだと勘違いしたのか、そう慰めてくれた。




さて、ここで先に言っておきましょう。

このロイス兄様こそ、二人目の攻略対象者。

そしてツンデレ枠担当なのです。





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