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30.只今、沈黙の刑が執行中

 ・・・はぁ、困ったわ。


ここは前回と同じ、王太子殿下のお住まいの最上階。

そして殿下のご指示通り、今回はサロンのテラスの方に用意されたテーブル席についている。

今日もお天気がいいので日差しが暑いくらいだけれど、ここは上に布が吊ってあり、日陰となっていて快適。


でも前回よりテーブルが小さいせいで、目の前にいらっしゃる殿下が近い。

いえ、このくらいは普通のサイズなのだけれど、わたくしにとっては近すぎる。

それなのに、もうかれこれ10分ほど、殿下の前に黙って座っているという苦行にさらされているところなの。


推しなのですもの、画面越しでそのまま顔を見ていろと言われれば、何億光年でも喜んで見ていられるけれど、現実ではじっと見るわけにもいかず、かといってそっぽを向くわけにもいかないので、目のやり場にものすごく困っている。

前回は殿下が顔を背けていらっしゃったから見つめることができたけれど、今日はこちらをしっかりと見据えてこられるのでよけいに無理。


もう視線を下げた先に見える範囲の殿下のお洋服の刺繍は、全て目視でなぞってしまった。

いつもわたくしが刺しているエスペル王国の模様とは若干配列が違うけれど、あの部分は守りのまじないだわ。

・・・せっかくだから王族だけが身に付けられる獅子の柄を絡めて・・・うん、わたくしだったらこういう図案にするのに。

頭の中で描きながら視線を殿下から横へ外すと、殿下の右後方に控えた従者と目が合った。

この前、さんざん謝罪してくれた人だわ。

あの方、今日も申し訳なさそうな顔をしているわね。


わたくしが背後を見ていることに気が付いた殿下が、バッと後ろを振り返り、なにやら従者にサインを送る。

すると従者はやれやれと言わんばかりの顔をして、わたくしの視界から移動して消えた。

これから謝罪をさせる相手の気をそらさせるなということですね。


改めて姿勢を正して殿下のお言葉を待つ。


今日は時間通りに現れた殿下にまずはご挨拶をと思ったのに、いきなり座れと言われ、また謝罪もさせてもらえず今に至るのよ。

今、メイドが紅茶を淹れなおしてくれているけれど、殿下はお茶にも手をつけずになにかずっと考えていらっしゃる。


きっと重要な出来事があって対処法などを考えておいでなのね。

それならわたくしなぞ、さっさと追い出してくださればいいのに。

時折、なにか言いたげにされるけれど、こちらから話しかけることはできないので、ひたすら待つしかできることはないのよ。


ああ、わたくしが先ほどずうずうしくも勝手なことをしていたから新たな処罰をお考えなのかしら。

殿下がここへいらっしゃる前に済ませたのだけれど、報告があがるのが早いのね。


はぁ、そうだったわ、謝罪にきたのに楽しくて調子にのりすぎたわ。

しかも皆さんは、お犬様を探すのに忙しかったはずなのに。


え?なんのことだ、説明しろ、ですって?

ええ、聞いて下さるのなら、今から1時間ほど前のことからお話しするわね。



―――ランチタイムを終え、体力も気力も回復したわたくしは、豪華な休憩室を後にしたわ。

結局あまり落ち着けなかったから、次回は普通のお部屋を取ってもらいましょうと思いながら。

そしてまたあの中庭の長い回廊を経て、王太子殿下の居住棟のホールに入ったの。


すぐに前回と同じ案内人が来て、今日はこの一階のサロンもご用意できますと言われたけれど、もう本当にこれでここへ来るのは最後だから、殿下のおっしゃっていたテラスにも出てみたいと思い、最上階のサロンを希望したのよ。

指定の時間より早く来たのは、また階段を上がるのに時間を要するのを見越してのことだし。


この為に履きならした靴を履いてきたし、そして今日までなんども我が家の階段を往復して鍛えたかいもあり、今回はなんとか休むことなく例の階段を最上階まで上がることができた。

そして(寝室)の扉も忘れずに、ちらり(しっかり)と見ながら廊下を進んだ。


テラスは日差しが強いので、時間まではサロンの中でお過ごしくださいと言われながらサロンに入ったわたくしは、すぐにお目当ての人物を見つけ、真っ先にお礼を言いに行ったわ。


「ごきげんよう。この間は(たくさんの薔薇を)ありがとう存じます。それで、お礼といってはなんですが、本日はお菓子をお持ちしましたのよ」


わたくしはそう言って、下から付いてきたメイドに持たせていた箱を指し示す。

中には例のスノーボール。

そうよ、白くなくてもスノーボール!を持ってきたの。

またお母様がエスペル王国から三盆糖を取り寄せて下さったので、作ってきたのよ。


「え?わたくしですか??ええと、たいしたおもてなしはしておりませんが」


「いいえ、とても嬉しゅうございましたわ」


わたくしの目の前にいるのは、メイド服を着た殿下の恋人様。

立って並ぶと13歳のわたくしよりかはいくぶん背が高かった。


あいかわらず可憐ね。


あ、これ、傍から見たら悪役令嬢がいじめているように見えたり・・・しないわよね?





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