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27.扇は装備品

「まあ、なんてお可哀想なお姿なのでしょう」

と、侯爵令嬢のエリザベル様。


「ごきげんよう、エミリアーヌ様。お加減はいかがですか?」

と、伯爵令嬢のカトレア様。


「エミリアーヌ様がお顔に包帯しているの!リリィ、魔獣怖ーい」

と、ぶりっ子。じゃない、伯爵令嬢のリリメリル様。


「ごきげんよう、エミリアーヌ様。候補から辞退なされたと聞いた時は驚きましたわ」

と、伯爵令嬢のジュリエーヌ様。


「エミリアーヌ様、ごきげんよう。もう出歩かれてもよろしいのですか?」

と、子爵令嬢のフローラ様。


「ごきげんよう。エミリアーヌ様。思ったよりもお元気そうでなによりですわ」

と、子爵令嬢のクレアマリー様。


「エミリアーヌ様、ごきげんよう。あの、あとでお伺いしたいことが・・・」

と、侯爵令嬢のクラウディア様。


振り返った先には色とりどりのドレスを着た、わたくしのかつてのライバル。

そう、王太子殿下の婚約者候補たちがいた。


わたくしが辞退したので婚約者候補は9人のはずだけれど、ここにいるのは8人。

わたくしの肩を掴んだのはクラウディア様のようね。

同じ侯爵令嬢なら、まあ、許して差し上げましょう。


「ごきげんよう。そのお怪我では仕方がないこととはいえ、エミリアーヌ様のような美しかった方が王太子妃になれないだなんて、本当に残念ですこと。ふふっ」

と、扇で笑いを隠しているつもり、はないようね、伯爵令嬢のマリレーヌ様。


デジャヴだわ。

ドリル装備でピンクのフリフリドレスを着る伯爵令嬢は、同じことを言わなくてはならない決まりでもあるのかしら。


「あら?その台詞最近どこかで・・・ああ、ナタリア様だわ。まあ、マリレーヌ様、ナタリア様とまったく同じことをおっしゃるだなんて、程度が、いえ、仲がおよろしいのね」


「なっ・・・」


そういえば、欠けたひとりはナタリア様だわ。早くも落選したのかしら。

またエンカウントするかもと、対ナタリア戦用に一番頑丈そうな(武器)を持ってきたというのに、残念。


「エミリアーヌ様、そのようなお姿でわざわざ王城までいらっしゃるなんて、本日はどのようなご用向きでこちらへ?」


先ほどわたくしのことを可哀想だなどとほざいたエリザベル様が怪訝そうに問うてきた。


「ああ。少し調べものがあって今まで図書館におりましたのよ」


嘘は言っていないわ。2時間後が本命なだけで。


「もう王太子妃にならないのにお勉強するだなんて、リリィ感動ー!」


「わたくしたちは王太子殿下とのお茶会でしたのよ」


でしょうね。

はぁ、この煌びやかなドレス軍団の後に、地味なドレス姿で殿下の前に出なくてはならないのね。

でも、お茶会もそろそろ3、4回目辺りのはずなのに、まだ8人も残っているの?


「殿下はとてもお忙しいようで、まだ2回目のお茶会ですの。それも10時から1時間半の予定でしたのに、11時を過ぎた辺りで急にご用ができたと中座されて・・・時間いっぱいまでお待ちしたのですけれどお戻りになられなかったので、お暇してきたところですわ」


わたくしの疑問を正確に読み取ってくれたカトレア様が答えをくれた。

なるほどね。この前も急用がおありでわたくしも10分でしたもの。

王太子ともなると本当にお忙しいのね。

11時過ぎというと、わたくしが図書館に入った頃だわ。

ああ残念、うまくすればちらりとでもお姿が見られたかもしれないのに。

婚約者候補たちとのお茶会ですら時間を削られるようでは、わたくしは5分でもお会いできればいいところかもしれない。

まあ、本日も謝罪なのですもの。短いに越したことはないわ。


「あら!カトレア様!もうまったく、これっぽっちも関係のないエミリアーヌ様にはなにもお教えする必要はないのよ」


「ふっ、マリレーヌ様は本当にナタリア様と似ていらっしゃるわね。ナタリア様も同じことをおっしゃっていらしたわ」


「なんて失礼な!」


似てると言われて失礼だという方が失礼なのではないかしら。


「ねぇ、今日もだぁれもリリィとお話してくれないのー?いじめなのー?みんなでリリィのこといじめるのね。リリィ泣いちゃうー!」


「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」


リリメリル・サンドリア伯爵令嬢。

一番年下だからと甘えた声を出しても、あなたがこの中で一番腹黒いことは全員がわかっているのよ。

今はわたしたちを貶めようと、通りかかる貴族に聞こえるように言ってるようだけれど、聡い殿下の前ではそんなふざけた話し方はしないはずよ。


「皆さま、そろそろ帰り」「だからエミリアーヌ様も意地悪して、リリィにご婚約をしたお話をして下さらないのー?リリィ、ちゃんとおめでとうございますって言えるのにー」


「「「「「「「え?」」」」」」」


エリザベル様が解散を促そうとしているところを、リリメリル様がいかにもわたくしが婚約したかのような言い方で遮る。


なぜか吹き上がる水の高さが一気に上がった中庭の噴水を横目に見ながら、手にしている扇を口元へ広げ、冷静にわたくしはリリメリル様に問うた。



「一体、なんのお話かしら?」と。





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