24.あ、袋も一枚ください
ラウルは王族?
それならば魔力属性を三つ有していてもおかしくないし、お父様の態度がおかしいのも、王太子殿下に対して不敬を咎められないのも納得がいくわね。
まあ、わたくしったら国家機密に気付いてしまったわ。
お父様とアルフ兄様は当然ご存じよね。
そこでお互いのアクセサリーを並べ、自分の魔石の方が良いものだとラウルと張り合っているロイス兄様はたぶん気が付いていないわ。
そういえば先ほどは、うっかり肘鉄を食らわせて不敬罪になるところだったわね。危ない危ない。
でも、王族ならばなぜ侯爵家で執事を?
王族として扱えない理由とはなにかしら?
我がライニッシュ王国の現国王陛下には正妃様の他に側妃様がいらして、お子様は王子が三人、王女が二人。
お二人いる王弟殿下にもそれぞれお子様が四人いらっしゃる。
どなたかがよそでおいたをした結果だとして・・・仮に陛下のお子様だとすると、王太子殿下と異母兄弟・・・うーん、まったく王族のどなたとも似ていないわね。
きっとラウルはお母様似なのね。
ラウルの顔から思うに、かなりの美人だわ。
それで陛下か王弟殿下のお手付きにされてしまったけれど、お母様の身分が低くて側妃にはできなかったとか・・・まさか庶民?
いえ、王太子ルートであれば次期王妃には庶民であるヒロインがなるこの世界、側妃であれば無理はないはず。
物語によくあるパターンとしてはお母様は旅の踊り子で、ラウルを置いて消えてしまった?
本当に王族の子かわからないから、王位継承争いから外すために身分を隠されている?
命までも狙われて・・・は、学院に通っているくらいなのだから無さそうね。
きっと、わたくしの想像では思いつかないほど複雑な事情なのだわ。
気が付かなかったふりをして、これ以上首を突っ込むのはやめておきましょう。
・・・そういえば、次期王妃はどうなるのかしらね。
王太子ルートの場合はヒロイン。
以外のルートの場合は殿下の婚約者候補のうちのどなたか。
では逆ハーレムルートの場合は?
一妻多夫は認められていないから、一番身分の高い王太子がヒロインを妻として、王妃の周りに攻略対象者たちが侍るのかしら?
ふっ、嫌な構図だわ。
まあ、そこまでいけばわたくしにはもう関係がないわね。
さあ、もうどうでもいいことは放っておいて、楽しいお買い物に戻りましょう。
先ほど並べていた3つのアクセサリーのうち、ロイスのものはもうロイス兄様が頬ずりをしているので、アンドリューのものと、シャルルのものを自分の前に並べ直す。
・・・ロイス兄様、それはまだお支払いが済んでおりませんわよ。
あ、そういえば、アンドリュールートでは魔獣から助けたお礼にもらったと言っていた気がするわ。
これを贈れば目に見える功績の証になって、もうアンドリューは我が家へ来なくなるかしら。
シャルルのは、悪役令嬢と婚約解消をしていないバッドエンドしか見ていないけれど、だからこそ最後までつけていたわね。
無事に逆ハーエンドを迎えて、いつか仲直りした時のために一応買っておく?
そう考えながらも、わたくしの目にはあるひとつのアクセサリーしか見えていなかった。
あの風属性の緑色のキャッツアイは、カタログによればレオ・・・王太子のものだわ。
推しである王太子の物なのにも関わらず、恵美が即決で買わなかったのには理由がある。
あれだけやった王太子ルートで、一度も見たことがなかったからなのだ。
ロイスとシャルルはエミリアーヌに好意があったから付けていた。
アンドリューは功績の証として。
クロードは聖女とのつながりを示すため。
・・・王太子とはまったくの政略的な婚約ですもの、嬉々として使う物ではないわね。
ゲームのエミリアーヌは絶対にこれを贈ったはず。
でも、まったく使ってもらえなかったのだわ。
可哀想に、きっと、どうして?と思っても殿下には言えなかったのでしょうね。
わたくしは贈ることはないけれど、それでも一度くらい触りたいと手を伸ばしていると、ロイス兄様に声を掛けられた。
「エ、エミリアの属性が決まったら、お返しにアクセサリーを買ってやらないこともないからな」
「まあ、ありがとう存じます。楽しみにしておりますわ」
ふふ、残念ながら光と闇の属性の魔石はとんでもなくお高いので、その時は別の物をおねだりいたしますわね。
ロイス兄様とラウル、アンドリュー、そして迷った末にシャルルの分も買った。
このままの状態でプレゼントするのも芸がないので、あとで細いリボンに名前を刺繍して飾りに付けましょう。
最後に王太子殿下の分を手に取り、一度だけそっと撫でてから戻した。
え?もうひとりの攻略対象者の分はどうするのか、ですって?
クロードのものなんて目にも入らなかったし、買うわけがないわ。
それにしても、悪役令嬢からのプレゼントを公式グッズにするっていうのもどうなのかしらね。
「お嬢様が魔力を発現するのはまだ2年も先の話ですね。その時にまだお傍にいられたなら、私もなにかお返しをいたしましょう」
また近いところからラウルが囁いてきたけれど、もう肘鉄を食らわせる訳にはいかないので、睨むだけにとどめる。
「ふん、あなたのことだから、きっとあつかましくいると思うわよ。その時にはものすごくお高いものを買わせるから覚悟なさい!」
そう言うと、ラウルが先ほどよりうれしそうに笑った。なんなのよ、もう。
王族かもしれないけれど、わたくしは媚びたりしないんですからね!
とりあえず、ラウルが逆ハーレムルートにおける悪役令嬢の婚約者となる執事ではないことが判明したわ。
婚約しないでおいてよかった!
―――わたくしはこの時完全に失念していた。
アルフ兄様がラウルのことを考え直すようにと言っていた時に『我が国の王家より厄介だ』とも言っていたことを。




