23.※あくまでも支払いはお父様のお財布から
ちょ、ばゕ、なんで耳元で言う必要があるのよ!
即座に右後方にいるヤツに、うっかり振り向きざまに肘鉄を食らわせてやろうと、右腕に力を入れて肘を振ってみたけれど、すっと避けられてしまった。
ちっ。
くやしいから舌打ちしたい人、第二位に格上げしてやるわ。
残念ながら、まだ一位の座はクロードから奪えないけれどね。
「・・・ロイス兄様、ラウルがアクセサリーを選んで欲しいそうですわ」
まだうれしそうに黄色い魔石がはめ込まれたアクセサリーを眺めているロイス兄様に、ラウルの言葉を押し付ける。
「えー、私もお嬢様に選んでいただきたいです」
ラウルめ、イケメンのくせにニヤニヤとしていて本当に残念なヤツだわ。
睨んでみても効きゃしない。
だいたい、なんでもう使用人が入ってきているのよ!
「え?ああ、そうだ。ラウルももうすぐ誕生日だったな。エ、エミリア、ラウルにも選んでやってくれ」
はぁ?なんでわたくしがっ!?
そうは思ったものの、お誕生日ならば仕方がない。
寛大なわたくしは、並んでいるアクセサリーを見渡す。
すると、ぱっとひとつの魔石に目が止まった。
ふむ、これがラウルっぽいわ。
なんだかよくわからないけれど、ラウルにはこれっぽかったので、ラウルを睨みながら黙って指で示した。
「ああ、いいな!あ、いや、素敵ですね。気に入りました」
ラウルまでとてもうれしそうにアクセサリーを手に取り眺めている。
あなたたち、男のくせにアクセサリー好きだなんて、おしゃれさんか。
ちょっと、そんないい笑顔をこちらへ向けないでちょうだい!耐性がないのだから。
「べ、別に適当に選んだのよ!」
「どれ?・・・ああ、エミリア、それは適当過ぎだな。ラウルの魔力属性とは違うものだぞ」
ロイス兄様がラウルが持っているアクセサリーを見てそう言う。
わたくしが選んだのは緑色の魔石。つまり風の属性用のものだった。
「「え?」」
ラウルと声が重なる。
いや、ラウルの魔力属性を知らないわたくしが間違いに驚くのは当然だけれど、なぜラウルまで驚くのよ?
「え、だってその魔石は風属性じゃないか。ラウルの魔力属性は火と水だろ?この間の訓練で火と水の複合魔術の練習をしていたし」
なによ、ぜんぜん違うじゃないの。選びなおしね。
仕方がないので火と水のアクセサリーの方へ目を向けようとすると、まだ未練がましく風属性のアクセサリーを持ったままのラウルが迷うようにキョロキョロしていた。
そんなに気に入ったの?
でも、使えない無駄な物は買わないわよ!
「あー、ええと、その、風の魔力も持ってるから大丈夫っ!」
ラウルが思い切ったようにアクセサリーを握りしめて言い出した。
「「は?」」
こんどはわたくしとロイス兄様の声が重なった。
「すごい!三つも魔力属性があるの?すごいわ!!」
「王族なら三つ四つは珍しくないと言われるけれど、王族じゃないのに三つはすごいな」
そんなことがあるのね、それはすごいことだわと、素直にすごいとはしゃいでしまってからゲームのロイスルートを思い出した。
しまった、ロイスは地属性しか持たず、それすらも魔力が低くてコンプレックスなのだった。
ロイス兄様に悪いことをしたわ。
「あ、ああ、まあ・・・でもロイスだってすごいじゃないか。地の魔力は学院一強いのだから」
めずらしく顔を赤くしたラウルが、そう言って自分からロイス兄様に話題をすり替えた。
「へ?学院一ですの?」
あら?まただわ。またロイス兄様の設定がバグってるわ。
「ああ、まあ、今はそうだが。べ、別に学院の中だけだし、そ、そんなたいしたものじゃない!」
聞けばロイス兄様の属性は設定どおり『地』のみで、最初に魔力が発現した時の魔力量は平均よりも少なかったのだそう。
でも、学院で訓練を始めた途端に魔力量が増えて、今では教師より強いのだとか。
どういうことかしら。
攻略対象者たちが魔力を発揮していたのは、アンドリュールートの悪役令嬢が召喚した魔獣退治の時・・・うーん、その時のロイスはどうだった?
一度しかやっていないし、基本レオ・・・王太子の活躍だけに注目していたから覚えていないわ。
え?なぜ王太子殿下が華々しく魔獣退治をしたのに一度しかやらなかったのか、ですって?
だって、アンドリュールートなのですもの、アンドリューが一番活躍したのよ。
推しが補助役だなんて、つまるところ、つまらなかったのよっ!!
ふぅ。
あ、そういえば、ネタバレ満載のファンブック2が出る時に『ロイスの秘密が明らかに』っていう宣伝文句があった気がする。
このことを示していたのかしら?ぜんぜんわからないわ。
はぁ、やはり無理してでもファンブック2を買うべきだったわね。
それにしても、ラウルには三つも魔力属性があるだなんて。
ロイス兄様にひとつ分けて欲しいわ。
せめてふたつあれば複合魔術が使えるのに、いくら魔力量が多くてもひとつでは技が限られてしまうもの。
つまりは、王族で四つの魔力属性を持つ殿下はすごい魔術の使い手で、いかにかっこよくて素敵なのかってことなのだけれどね!
そう考えていて、ふとあることに気が付いた。
普通の貴族ではありえない、三つの魔力属性を持つラウルは、もしかしたら王族なのではないかということに。
レオンハルト 『風』>『水』=『火』>『地』
ロイスバル 『地』
シャルルジーク 『水』=『風』
クロード 『水』>『地』
アンドリュー 『火』=『風』
ラウル 『火』>『水』>『風』
エミリアーヌ 『闇』≫『光(極小)』
ルーチェ 『光(強大)』
というたいした意味のない設定をここに置いておきますね。こそっと




