13話 収束
一波乱起こった後の話し合いは意外にもあっさりと終わる。ほとんどは黒蛇を倒したことで発生する報酬の支払いや素材をどう扱うかの話ばかりであった。組合長の提案に問題はなく、ただ同意して契約書にサインするだけしかやることはなかった。
やるべきことも終わりソルとエルミースが部屋から出ていこうとする。
「ああ、少し待ってください。ソル君」
オルクスは自分の作業台から一枚の紙の丸まった髪を取り出すとソルの方へと放る。
「これは何ですか?」
「それは私の紹介状です。君はまだ泊まるところも決まっていないでしょう? 探すのも面倒だと思うのでそれを使ってください。宿泊費も掛からずに確実に部屋を確保できますから」
「いいんですか?」
「当たり前ですよ。有望な新人に投資するのは私の義務のようなものですから。場所はエルミース君に聞いてください。同じ宿に泊まっていますから。お願いできますね? エルミース君」
エルミースは先ほどまでの怒涛の展開に疲れたのか覇気のない顔をしている。呆然としているようだが辛うじて両省の返事を漏らす。
「ああ、はい、分かりました。案内します」
了承の返事を聞き、安心したのかオルクスは笑みを浮かべる。
「それではお二人ともまたお会いしましょう」
「はい、これからもよろしくお願いします」
「よろしくお願いします……」
ソルとエルミースはそう言って部屋を後にする。ギルドを出て街の通りを進んで行く。
「それでエルミース。宿はどこらへんにあるんだ? ここから遠いのか?」
ソルが話しかけるとじっとりとした視線を少女は向ける。エルミースは大げさにため息を付き自分の心情を間接的にアピールする。
「近いわよ。ここから五分も掛からないわ。それよりも……」
エルミースは無言で距離を詰める。手を伸ばせば触れるくらいの距離まで近づくと青い瞳を真っ直ぐにソルへと向ける。
「あなたもう少し平和的に行動できないの? 黒蛇の時から思ってたけど無鉄砲というか生き急いでるといううか……。巻き込まれたこっちの気持ちも考えて欲しいわね」
「別にいいだろ? 結果的に説くしかしなかったんだから」
少女は半眼でソルへと厳しい視線を送る。
「結果的にはね。でも、もし黒蛇があなたの予想以上に強かったり、組合長が本気であなたに嫌悪を抱いていたらあなたの人生は終わっていたわよ」
確かにエルミースの言い分は正しい。今回は偶然うまくいっただけ。特にオルクスとの話し合いの時は認められなかったらエルミースがとばっちりを受けていた可能性はある。
「確かにそうかもしれない。だが、黒蛇の話を聞いて戦力は見積もったし、オルクスの件はあの人の気まぐれだ。俺を責めるのもお門違いだと思うぞ」
「別に攻めてはいないわ。でも、これからはもう少し思慮深く行動した方がいいと言っているのよ。田舎に住んでいたあなたには分からないかもしれないけど人の社会は合理的なことばかりではないの」
「なるほどな。つまり、お前は俺に忠告してくれてるということか」
「ええ、そうよ。だって、これからあなたは私のパートナーになるんだから」
ソルは突拍子もない発言に耳を疑った。
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