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12話 組合長オルマス

 ソルは腰につけている刀が邪魔だったため腰から外し、隣に置く。そして、オルクスと対面するようにソルとエルミースは座る。


「さて、エルミース君と……」


「ソルだ」


「ああ、ソル君ですか。私は組合長のオルマスと申します。以後よろしくお願いしますね」


 組合長は柔和な笑みを浮かべて、軽く頭を下げる。ソルはその様子に内心驚く。組織のトップというものはもっと傲岸不遜なものだと思っていたからだ。実際今まではそうだった。ソルは自分の中との常識の乖離に少し困惑する。


「ではエルミース君とソル君、君たちが黒蛇を倒した経緯を聞かせてもらっていいですか?」


「えーとですね……」


 エルミースが答えあぐねている横でソルは困惑している思考を振り切りるため呼吸を整え、代わりに返答する。


「邪魔だと聞いたから倒した。特に理由はない」


 ソルの言葉にオルクスが余程面白かったのか声を出して笑いだし、エルミースはあたふたとしている。


「な、なるほど。実に端的で自分に忠実な答えですね」


「別に面白い答えを言ったつもりはないんだが……」


「確かにそうですね。あなたにとってはそうかもしれません。ですが、私にとってはとても面白い回答でしたよ」


 ソルは迂遠な言い回しをするおルクスに眉を顰める。


「遠回りに言うのはやめてくれ。俺はあんたを知らないのだからそんないい方されてもわからない」


 ずけずけと言いたいことを言うソルにエルミースは慌てて耳元で囁くように警告する。


「あなたあまり失礼な口をきかない方がいいわよ。この人はこの街……いや、国でもかなり発言力がある人だから」


「気にしなくていいですよ、エルミース君。無礼な振る舞いくらいで話し合いの場を壊すような愚かなことはしませんから」


 聞こえないように言ったつもりだったエルミースは苦い表情を浮かべつつ誤魔化すように笑みを作っている。


「すみません、ソル君。話が抽象的なのは私の悪い癖ですね。では、分かりやすく端的に言いましょう」


 優し気な表情を浮かべ、、オルクスはソルを真っ直ぐに見据える。


「あなたのような生意気で身の程知らずは私の好みだと言ったのですよ」


 組合長のその言葉にソルはむっとした表情を浮かべ、エルミースは彫像のように固まる。


「確かに俺の態度は褒められたものではないかもしれない。だが、身の程しらずと言われる謂れはないぞ。あんたたちが殺しあぐねていたあのでかいだけの蛇を殺したのは俺なのだが……」


 オルクスはソルの挑発的な言葉を受けても一切表情を変えない。それどころか余裕を表すように長い足を大げさい組む。


「ソル君、あなたは勘違いをしてますよ」


 オルクスの紫紺の瞳がモノクル越しにソルを捉える。その視線は先ほどまでの柔和なものと違い針のような鋭さがあった。


「あの黒蛇は倒せなかったわけではありません。敢えて倒さなかったのです。私が赴けば一瞬で終わったでしょう。ですが、そうする意味もあまりありませんでしたので放置していたまで……それだけです」


「……何が言いたい?」


「あなたは大したことはありません。あまり調子には乗らないでくださいと言っているんです」


 ソルとオルクスの間に見えない火花が散る。先ほどまでの雰囲気とは打って変わり得も言われぬ緊張感がその場を支配する。エルミースはいつもの組合長との違いに唯々困惑している。


「不満そうですね。ならば、この場で証明してみてくださいよ。あなたの実力を」


「どうしろと?」


「私に一撃当てて見なさい。ほら、何時でもどうぞ?」


 オルクスは手を大きく広げ、攻撃を誘ってくる。


(なんだ、こいつは。エルミースの反応を見るにこいつは人格者だと思っていたが違うのか? それとも何か目的があって煽っているのか?)


「どうしました。遠慮はいりませんよ」


 ソルの心の中を見透かすようにオルクスは催促してくる。ソルは覚悟を決め、木造の床が軋むほどの衝撃で駆け出す。その勢いのまま掌底をオルクスの胸目掛けて打ちこもうとする。だが、ソルの手は何故かオルクスの体をすり抜けていく。まるで彼の体は元々そこにはなかったかのように。


 ソルが驚きに囚われていると凄まじい衝撃波が彼を襲う。見えない何かに吹き飛ばされ、ソルは壁にたたきつけられるかのように見えた。


「魔操流体術<風神脚/カザグルマ>」


 ソルは足に風を纏い、宙へ向かって蹴り上げる。一回転することで勢いを殺し、難を逃れた。正体不明の攻撃を分析しつつ、次の攻めに移ろうとした瞬間、ぱちぱちという部屋中に響いた。


「いやー実に見事ですね。まさか初見でこれに対応するとは思いませんでした」


 オルクスは嬉しそうに笑う。態度の豹変具合にソルもエルミースもぽかんとしている。


「今までのソル君への挑発行為はすべて演技です。本当に申し訳ありません」


 そう言ってオルクスはその場に立ち、深々と頭を下げた。


「あなたの力を試したかったものですから。……許してはもらえませんかね?」


 悪戯をした子供が親に許しを請うようなあどけない表情を浮かべている組合長にソルは毒気を抜かれる。張っていた気が抜け思わずため息がこぼれる。


「構わない。俺の態度も組織の長に対する態度ではなかったからな。これからはちゃんとした対応を心がけます。こちらこそ申し訳ありませんでした」


 ソルもオルクスに倣い頭を下げる。


「そう言ってもらえると助かります。では、そろそろ本題に入りましょうか」


 オルクスとソルは元の位置に座り、再び話を始めるのだった。


 







 


 


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