11話 狩り人組合
辺境という言葉が引っ付いているがガーランベルクは決して小さい街ではない。およそ一万人ほどの人間を抱える大都市だ。しかも、その約半分が狩り人で構成されている。
必然的に組合も大きくなっていく。そのためソルとエルミースが街に入るとすぐに視界に入ってくる。
「見えるでしょ? あの大きな建物が狩り人組合よ」
黒みがかった頑丈そうな木材で作られており、大きさもあってか存在を大きく主張している。ソルはその大きさと存在感に思わず言葉を失う。
「驚いているようね。まあ、あなたは都会育ちじゃなさそうだし仕方ないわよ。大陸最大の国であるシールス王国の王都でさえあれほど大きな建物は数えるほどしかないから」
シールス王国という言葉に聞き馴染みがないためソルはあまり親近感が湧かなかった。しかし、隣の金髪の少女が気を使っていることは分かっている。そのため無用な質問は呑み込んだ。
「そうか。だが、別に俺は田舎者なことを気にしてはいないぞ」
「はいはい、わかりました」
そう言って歩き出すエルミースの表情はとても理解したという風ではなかった。無用な言葉が誤解を生んだらしい。そのとこにソルも気づいているが訂正したところで逆効果なことは理解できた。だから、ソルは黙って歩を進める。
狩り人組合の姿は捉えているが意外にも歩くと門から十分ほどの時間がかかった。のろのろと歩いたわけではなかったがそれだけ街の規模が大きいのと人も多い。そのため、それらを避けて通らなければならない。それに独特な装束を着ているせいか通りを歩いていると人の視線がソルに集まり、それに伴って人も集まる。
誰も話しかけてこなかったのは幸いだったが、それでも時間と心の平穏は失ってしまった。ソルは大きなため息を付きながら建物に入っていく少女についていく。
「そんな大きなため息つくことないでしょ? 別に不幸なことがあったわけじゃないんだから」
「不幸ではなくても不快なんだよ。あんただって知らない街で知らない人間にじろじろと見られたら嫌だろう?」
思い当たることがあったのかエルミースは苦笑いを浮かべる。
「確かに嫌だわ。あの好奇の視線に晒されるとなんか体を虫が這いずったみたいな感覚に襲われるのよね……」
何か掘り起こしてはいけない過去を掘り起こしてしまったかもしれないとソルは少女の顔を見て後悔する。何せ緑色の宝石のような瞳は光を失い、口は半開きで引きつっている。どうしたものかとソルが真っ黒な髪を掻きむしっていると二階の方から一人の男が下りてくる。その男は紫がかった髪を携え、紫紺に輝く右目の前には煌びやかなモノクルがその存在を主張していた。
「ふむ、来ましたね、エルミース君」
先ほどまで上の空だった少女だったが男の声を聴き、姿を捉えると歪んだ背筋を正す。
「<組合長/ギルドマスター>! まさか、あなたが直々に対応なさるのですか?」
「当たり前ですよ、今回の出来事はここ数十年のなかでも上から数えられるほどの吉報です。私が出てこない方が可笑しいでしょう」
ソルは目の前の男に緊張しているエルミースを見てこう思った。
(ここまでエルミースが畏まるということはかなりの重鎮なのだろう。組合長というほどだし狩り人の中では絶大な権力を持っているはずだ。この男に嫌われるのは面倒になるかもしれんな。だが、こんな弱そうな男が長であることを狩り人は認めるのだろうか?)
ソルは疑問を持ちつつもある程度の今後の方針を固める。彼の内心を察したのか組合長は不敵な笑みをソルに向けた。
「そちらの方が話に聞いた黒蛇を倒した人ですかね? お二人ともこちらへ来てください。色々と聞かなければならないことがあるのでね」
そう言って男は階段を上っていく。周りにいる狩り人たちも組合長の発言にざわつき始めていた。それもそのはずである。長年討伐できなかった黒蛇が倒された報告がなされ、しかも倒したのが少年少女なのだから。
ソルたちはそんな反応は無視して上へと上がっていく。狩り人組合は全四階で構成されており、食堂、受付、依頼の張り出し、組合長の自室となっている。
ソルとエルミースは四階の組合長の自室に通された。
「さあ、中にどうぞ」
ソルは堂々とエルミースは緊張気味に中へと入っていった。
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