世界が望んだ死
魔導士。
その中でも常軌が異なる存在、大賢者。
リザリオンの称号を得るに至るのは現代にただ一人。
ルシフルという名の美しい女性。
不老不死であり、世界各地をグリフォンに乗って旅をしている。
ルシフルはその観察眼から、次期リザリオン候補になり得る才能の発掘を趣味にしていた。
砂漠地帯の村、ベベ村。
地下水が豊富に沸きてくる泉を中心に王都が出来ており、ベベ村は北西に位置する小さく、弱い村だ。
昼過ぎ。
ルシフル「あちゃあ・・これは・・」
村人は家に籠っている。
窓から、壁から、ルシフルを見ている。
ルシフル「・・あの~~~、何か食べ物売ってくれませんか~~?お腹ぺこぺこで~~~・・」
《シーーーーーーーーーン》
ルシフル「仕方ない・・じゃあ・・こんなのどうでしょうか~~~?」
無限収納空間から、来る途中に狩った魔物を取り出す。
巨大なサソリ。
村人達『おお・・おお・・おおおおおおお・・』
出てきた、出てきた。
長老「・・あんた・・何者ですかな?」
ルシフル「あたしはルシフル、この子はギル」
ギル「ぎるるるう」
ルシフル「世界協定のまあ、お偉いさんだよん、リザリオンって知ってる?あれ私」
村人らは大いに歓迎した。
それはやはり頼みたい事があったからだった。
夜。
食卓に並ぶ魔法水と、サソリ肉のから揚げ。
ルシフル「王都の悪行?来るとき通ったけど・・別に何も感じなかったけどなあ・・」
長老「そ・・そんな筈ないですじゃ・・もっとよう調べてくださらんか?地下から湧き出る黒い水についてこの土地の事を何か言っておる筈ですじゃ」
ルシフル「・・ふむ・・まあ・・バンロウだね・・」
長老「・・ばんろう?」
ルシフル「バンロウ・・燃える黒い水の事よ、この土地から大量に出るのは本当なのね?」
長老「!!・・ほらみろ!!やっぱりあの黒水は貴重だったんだねえか!!だからあんの役人どもさ・・ハ!?」
ルシフル「・・」
皆『・・』
ルシフル「・・役人が5人、行方不明なんだって・・何か知らない?」
長老「・・お前さんは・・この村をどう思う?」
ルシフル「・・今年中に死ぬ村」
長老「・・そうだ・・そんな事・・みんなさ解ってる・・でも・・2週間前・・アイツが・・魔法で黒い水さ掘り当てたんだ・・燃える水・・あれさえ売れれば・・この村さ生き返る・・立て直せる!いんや、それだけにとどまらねえ、下手すりゃ王都だって」
ルシフル「覆すほどのお金がこの村に雪崩れ込む?」
長老「・・そ・・そだ」
ルシフル「・・無理だね」
長老「な・・どしてだ!!?」
ルシフル「・・まず、王都がこの土地を奪う、これは必ずやる、次に、掘り当てた少年・・問題はむしろコッチだね・・え?・・ふうんそう・・少女なんだ」
長老「!!??」
皆『!!??』
長老「ま・・まさか?」
ルシフル「・・ごめんねえ・・心・・読めんの、あたし」
長老「・・お前は・・国の回し者かえ!?」
ルシフル「バンロウが出た土地なんて・・直ぐに売れば良かったのに・・お金に目が眩んだね、結果、命を失う事になる、公務執行妨害、及び、役人5人殺害確定犯罪により、沙汰を下す、大人しく王都に連行されろ、職務を邪魔する者は容赦はしない!」
長老「・・儂らは・・王都に見捨てられたんだ!!それでも税金が上がったからって・・3倍払えって・・・・・儂らにすりゃ・・国から先に殺されたようなモンじゃ!!救ってくれなかったのに!!黒い水が出た途端にあいつらあ・・」
{役人1「あのね?村の半分くらいが税金滞納してるんじゃあ仕方ないですよね?だからこちらとしてもここまでが精一杯の譲歩なんです、解ります?村の土地50%で済ませてやるって言ってんですよ、早く指の契約法印、押してくださいよお・・ねえ?・・村人全員奴隷になるよりマジじゃあないですか?・・はははは」
村人1「〈ブン〉」 包丁を振り上げた。
役人1「はは・・は?〈ドス〉}
長老「怒って何が悪い!!人として!!人間としてえ!!悪いのはあいつらじゃあ!!国じゃああ!!儂らはまっとうな人間じゃああ!!あいつらの方こそ人の面した化け物よ!!」
村人らが武器を取る音が聞こえる。
家の外からも聞こえる。
ルシフル「・・どんなに綺麗ごとを並べても、あんたらがやった事は犯罪よ」
長老「・・5人殺せば悪で、村人200人殺す国は悪ではないと?」
ルシフル「・・それは・・私が決める事ではないわ」
長老「・・では誰が決めるのだ!?お前にお金をくれる豚共かあああああ!!やれええ!!」
村人らは一斉に包丁や、鎌で襲い掛かる。
が。
〈ピキーーーン〉
村人全員が凍った。
ルシフル「・・反応は・・っと」 探る。
ルシフル「・・いた」
5分前。
お母さん「ここに隠れてるんだよ、絶対3日は出たらだめだよ、いいね?」
奇形児、顔半分が変形している、醜い少女「嫌だあ!!ママ!!ママあああ!」
お母さん「ごめんねええ・・美人に産んであげれなくて・・ごめんねええ・・」 抱きしめた。
醜い少女「うううん・・いいの・・お母さん、優しい・・大好き・・ママ・・」
お母さん「あんたはきっと生き残る・・あんたは不思議な力を持ってる・・大丈夫・・だから〈ピキィーーーン〉
《ヒュオオオオオオオオオオオオオオオ》
醜い少女「お・・おかあ・・さ・・ん?・・ママ?・・ね・・ねええ・・ママ?」
凍ったお母さん「 」
醜い少女「ママ・・どうしたの?・・ママ?・・ねえ?・・ねえ?・・ねええ?あたしはここだよ?・・ねえ?・・さっきみたいに抱きしめてよ・・ママ・・ねえ・・ま〈ドガシャアアリイイイイン・・・カラカラ・・》
風で倒れ、バラバラ死体になった。
醜い少女「・・・・」 バラバラになった母親のパーツを組み立てようとするが。
醜い少女「・・・・」 上手く出来ない。
醜い少女「・・・・・・・」母親の左腕を抱きしめる。
《グシュジュ・・ボゴ・・ボロロ・・ドジャ》腕が途中で折れ、地面に落ちた。
醜い少女「・・う・・」《パアアアアアアアアアアアアアアアアアア》醜い少女の周りに大小様々な形の歯車が現れた。
その歯車の形は菩薩に似ている。
その歯車に繋がっている線と、世界の空間の境界線から出ている線と繋がっていて、醜い少女の体を通って口に繋がっている。
〈シュパン〉 ルシフルが現れた。
ルシフル「・・あ・・いたいた・・んねえ・・あんたさ・・なにやって・・なに・・「ソレ」・・」
ルシフルは見たことがない魔法に出会う事、実はとても多い。
魔法というのはプログラムだからだ。
個人で作ったプログラムには癖、模様が独特であり、デメリット、メリットがある事も当たり前にある。
想像出来なかった。
質も、仕組みの欠片さえも。
ルシフル「・・ハ!?やばい・・殺す!!出でよ火の精霊!!ゴウレン!!」
《クカ!!!!!オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ》
ルシフル「やった!?」
醜い少女「・・」 無傷。
ルシフル「雷よ!!ゴッドシルドリア~~~~~~ファアストおおおおおおおおおおおおおお!!」
《ゴロロロロ・・ビカア シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!》
ルシフル「今度は?」
醜い少女「・・何が・・悪かったの?・・国が悪かったの?・・人の本質が悪かったの?世界が悪かったの?」
菩薩に語り掛ける。
菩薩は優しく笑うだけ。
ルシフル「止めろおお!いや!やめてえええ!!何をしようとしてるか解ってんの!?世界の理とを繋ぐ魔法なんて使ったらあああ!!」
醜い少女「・・私のお母さん・・帰して」
ルシフル「!!・・お・・お金なら・・宝石だって・・そ・・そうだ・・リザリオンの証の・・ほ・・ほら・・赤いロザリオ・・これ・・ね?・・ほら・・これあげるから・・はは・・ははだからお」
醜い少女「お母さんは?」
ルシフル「・・お願い・・止めて・・」
醜い少女「お母さんを返して」
ルシフル「お母さんは犯罪者だったの・・仕方なかったの」
醜い少女「・・村の人達はただ・・生きたかっただけ」
ルシフル「それは殺人の理由にはならないわ!」
醜い少女「貴女はさっき、何人殺したの?」
ルシフル「犯罪者は殺してもいいのよ!」
醜い少女「皆で虐めたら正義?正義って・・多数決で決まるの?そうなの?」
ルシフル「・・お願い・・止めて・・この世界には・・貴女の知らない美しい食器や、洋服や、踊りや、良い男や、ベッドの中の気持ち良い事が山ほどあるのよ?だからお願い」
醜い少女「・・」
菩薩を見る。
微笑んでいる。
お母さんが最期に抱きしめてくれた温もりを思い出す。
ルシフル「さあ、楽しみでしょ?ならーー・・」
醜い少女「・・この村は・・皆に虐められて・・死んだ」
ルシフル「いや、だから」
醜い少女「皆から虐められたこの村から・・皆が笑ったこの村から・・皆が嫌ったこの村から・・滅べばいい」
ルシフル「やめてえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
醜い少女「あなた達が望んだ滅びだ・・受け取って・・すぅーーーーー「ボ・ツ・メ・ツ」」
仕組み。
それはあらかじめ全て決められていたように作動した。
まず、その村の黒い水が爆発。
岩盤が崩れ、地盤が崩壊。
マグマの圧力が変化。
王都の裏にそびえたつ山々が次々噴火。
火砕流が発生。
新幹線より早く街に雪崩れ込む高温の煙。
空から降って来る溶けている赤い巨石群。
世界の活火山も噴火。
噴煙によって、太陽光が遮られていく。
極寒。
全ての陸の生物が死亡。
次に、海の生物が全て死亡。
光合成プランクトンの死滅による、食物連鎖の起源の絶滅が原因だった。
こうなってしまった星の原因はルシフルだろうか?
そうだろうか。
醜い少女だろうか?
そうであろうか。
支配階級制度。
優劣をつける仕組み。
そもそもの原因は、コレではないのか?
リンゴの木は誰にでもその実を与える。
リンゴの木はその実を与える者を選んだりはしない。
世界から虐められた国、村があったとしたら。
その村からボツメツが始まるだろう。
そしてそれは。
指を差し、笑っていられなくなるのだ。
そう。
他人事のように笑って、さもなくば、無関心でいられるのもその日、時までだ。
そしてそれは、「皆」が選んだ結末。
皆が虐めた者、国によって、世界は滅ぼされる。
少数派が弱い時代は終わったのだから。
核というモノがある限り。
反物質というモンがある限り。
中性子というモノがある限り。
細菌兵器というモノがある限り。
ウイルス兵器というモノがある限り。
・・。
選ぶのは皆の中の、あなただ。
《END》




