魂の憑着と、余剰の廃棄について
生命は、肉体と魂でできています。
ある女性のおなかの中で、精子と卵子が出会い、ひとつの肉体ができました。
近くでは、魂がぐるぐると飛びまわっています。
生まれたばかりの肉体は、まだ未熟で、魂を受けいれることができません。
だから魂は、少しの間、待たなければならないのです。
飛んでいる魂は無垢な光をはなっていました。
まっさらな魂です。
まだ、世界をしらない魂です。
しばらくして、肉体は十分に成長し、魂とひとつになるときがやってきました。
無垢な魂は、期待するように光をゆらし、肉体へと飛んでいきました。
そのときです。くすんだ光をはなつ魂が、間にわりこんできました。
くすんだ魂は、元の肉体が滅び、回収される途中でした。
その魂は、後悔していました。
やり直したがっていました。
ちょうどよく肉体を見つけた魂は、そこにもぐりこんでしまいました。
困ったのは無垢な魂です。
居場所がなくなってしまいました。
世界に存在できる魂には限りがあります。
無垢な魂は、くすんだ魂のかわりに、世界のどこかへと、回収されてしまいました。
さて、ここにひとつの生命が生まれました。
この生命の半分は、前世の記憶をもつ魂でできています。
この生命のもう半分は、才能あふれる肉体でできています。
彼は後悔を胸に生まれます。二度と同じ失敗をしないでしょう。
彼はやさしい人間に育ちます。だれからも愛される存在になるでしょう。
彼は世界の英雄になります。もし彼が別の人間だったら……なんて、だれも考えはしないでしょう。