表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

体感ゲームで十八禁サービスを受けようとする者

作者: 寿

短編です。


 俺、高校三年生。

 最近十八歳になったばっか。

 つまり学校さえ出ちまえば、十八禁もバッチリな訳。

 だけど発売元の遵法精神とか良心とかいう奴のおかげで、そーゆーサービスが受けられないガッカリな存在。


 なんの話かって?

 わかんねーかな?

 擬似体験ゲームの話さ。

 最近サービスが始まった、擬似体験RPGゲーム「ドグラの国とマグラの森」の話だよ。

 このゲーム、いわゆるファンタジー系のバトルゲームなんだけど、職種を選んだりクエストしたり。武器を選んだりスキルを獲得したりな自由度高いゲームなんだけど、実は十八禁のサービスが受けられるんだよね。有料だけど。

 まあ、実際にプレイすればわかるかな?


 ってなわけで、早速ジャックイン!

 そら、中世欧州風な建物と、石畳の街。ドグラ王国に到着だ。

 生きている城と雪をかぶった山脈が、なんとも名作劇場だろ?

 まあ、名作劇場にしちゃあ魔族やらニンフやらドワーフやらが横行して、剣だ槍だ鎧た盾だと、かなり物騒なんだけどな。

 設定としては、人間と人外の戦争が終わって百年。人と人外は協定を結んで、ともに暮らせる国を建てた。それがこのドグラ王国って感じ。

 もちろん人間が統治してるけど、そんなことは話の本筋じゃない。

 みんなが知りたいのは、十八禁の方だろ?

 わかるわかる。

 でももう少し待ってくれ。先にやることがあるんだ。

 まずは俺の装備を確認。

 粗末な斧に革の胸当て、回復用の飲み薬は最低限。

 そう、これからバトルに出るのさ。平和な国とは言え、軍備は欠かせない。常に演習が行われている。

 そして俺のお目当ては………報酬の銀貨なんだ。

 六人一組、十二人一組のどちらか選んで、演習に参加。成績によって報酬の銀貨は額が変わってくる。

 銀貨を目的にした俺にとっては、必死の戦場なんだ。

 なに? その割りに装備がショボい?

 高価な装備は、全部銀貨に替えたのさ。

 ということで、ドワーフな俺、出撃じゃっ!




 ………バトル終了!

 こっちの装備がショボいからって、ナメた連中が攻めてくる攻めてくる。

 だが俺も簡単には「撤退」なんかしない。

 最低でも二人倒してから、「撤退」させてもらったぜ!

 まあ、そんなこんなで復活した後で一人。合計三人を倒し、俺の成績は十二人中四位。まあ、悪い成績じゃない。

 報酬の銀貨は数字上のものだけど、チャリンチャリンとコインが鳴る音は、やっぱ格別よ!

 さて財布がふくらんだところで、ここからが本番さ。

 やたらとリアルなくせに、イケメンやら八頭身美人しかいない街中を駆け抜けて、目指すは中央の図書館だ!

 受付に立つと開かれるウインドウの、司書に会うという項目をつっつく

。すると隠し扉が開いて、別室に案内されるという仕組み。

「あら、また来てくださったんですか?」

 別室に入ると、司書のメルが微笑んでくれる。

 この世界では珍しい黒髪。そしてローブのようなゆるやかな衣装。だけどはっきりわかる、巨乳。

 もう一度言います、巨乳。

 大事なことだから、もう一回。

 巨乳。

 そう、彼女こそは運営が用意してくれた、銀貨や課金次第でいろいろなサービスをしてくれる、公式名称アイドル。ユーザーがつけたあだ名は、搾り取る女。

 ンなことに銀貨を使うなよ、とは言わないでくれ。なにせこのアイドル、街中のあちこちになんと十八人もいるのだ。十八人もいれば君ぃ、絶対に銀貨を投入したくなる女の子が、一人や二人はいるから! 嘘じゃないって!

 と、さっきからメルが待ってるな。彼女のそばで開いているウインドウ。こいつを確認するか。

 ひとつは「写真撮影」とある。これは彼女にあれこれポーズを要求して、好きな画像をファイルすることができるんだ

 その下が、「オプション」となっている。

れは眼鏡や帽子といった小物から、衣装チェンジまでできるという優れもの。

 さらにその下が、「動画」とある。俺は銀貨の投入が足りなくて、まだ動画は見れないんだけどね。

 動画サイトで拝見したところによると、どうやら歌って踊るものらしい。こちらも銀貨の投入次第で、さまざまな衣装にチェンジできる。

 たったそれだけのために愚かだなぁ、なんて大人の意見は無粋なもの。

 実際、たったこれだけのサービスを受けたいがために、演習に励む者は数多い。

 そしてギルド名からして、〇〇ちゃん同盟とか〇〇ちゃん友の会というのが数多存在する。

 ということで、俺もさっそくメルに眼鏡と学生服を………。さらには「こんなサービスまであるのか?」という筆頭、褐色肌を採用してみる!

 ………うむ、イイ! 学生服に褐色肌というのが本物の学生っぽくて、登校一番教室に入るなり、「オス」、「おはよう」なんて言葉を交わしたくなる。

 そして黒髪を惜しむなかれ。ここは贅沢に、一本おさげ! 太目の三つ編みをほどこしてみよう!

 この髪型にはマジックがかかっていて、髪の編み目ひとつひとつが光沢を放ち、世の男性を虜にするという効果がある。もちろん俺も、打ちのめされた一人なのだ!


 さて、紳士的な撮影のひと時を楽しんだところで、未練たらしくウインドウを開いてみよう。

 下から二つの項目。

 俺には開くことを許されていない項目。

 十八禁、そして衣装チェンジのオプションという項目。

 何しろ擬似体験ゲーム。

 大人のサービスも擬似体験できるというのだ。

 ………しかし俺は十八歳とは言え、まだ高校生。発売元の良心とやらのおかげで、大人のサービスは受けられずにいる。

 なんだよ? 機械の擬似体験で大人の階段のぼるのが、そんなに恥ずかしいのかよ?


 仕方ないだろ、だって俺はジェンダー。

 俺なんて一人称だけど、身体は女。でも心は男。

 恋をしたいし、ぶっちゃけ一発ヨロシクしたい。でも、女の子たち相手にそんなこと告白したら、気味悪がられるだけ。

 だから俺としては、このゲームに大人のサービスがあることを、心から感謝している。


 掲示板をのぞいたら、俺みたいなのは結構いるみたいで、男だけど男が好き。今日は〇〇君のサービスを受けたとか、女だけど女の子が好き。今日は〇〇ちゃんを抱いちゃった、という書き込みが存在している。

 彼らもまた、このサービスに感謝している者たちなんだ。


 ということで、待ってろよメル!

 学校卒業したら、真っ先にお前を抱いてやるからな!

 ………あ、そうそう。ここだけの話。

 俺みたいな人間のために、擬似のオ〇ンチンをオプションでつけることができるサービスがあるんだ。

 まったく、どれだけ俺から搾り取るつもりだよ?






 そして、その時が来た!

 本日三月三十一日。時刻は午後十一時五〇分。

 つまり、四月一日午前〇時になると同時に学校を卒業。

 大人のサービス解禁というシュチュエーション。

 期待に存在しない名刀をふくらませ、俺! いま! 全裸待機中!

 もうすぐだ。

 あと一〇分ほどで、メルを抱ける。

 早鐘を打つ心臓に、落ち着け落ち着けと呼び掛ける。

 よし、早目にジャックインだ!

 先駆けてメルを抱きに行くぞ!

 ………………………………。

 ………………………。

 ………………。

 ………。

 へい、みんな知ってるかい? 世の中には働いちゃならねぇ職業ってもんがあるんだぜ。

 ひとつは坊主。

 ひとつはお巡り。

 そしてもうひとつは、エラー画面という奴だ。

 だがその働いちゃならねぇエラー画面が、俺の目の前に輝いていた。

 よぉ、エラー画面。

 なんでお前、そんなにキラキラ輝いてんだよ? 俺の気分はゲンナリ落ち込んでんのによ?

 反射的に怒りが込み上げる。

 だが刹那の感情に身をまかせるのは、愚か者のすることだ。

 クールに考えよう。

 何故、今この時に、エラー画面がお仕事に励んでいるのか?

 よもや………まさか………いや、だがしかし。

 世の中には俺とまったく同じ考えの、高校三年生男子があふれているとか?

 そいつらが一斉に、俺と同じ気持ちの高ぶりをこらえきれず、アクセスしたとか?

 日本全国の新卒者たちの、一斉アクセス。

 どこまで飢えてんだよ? 俺もだけど。

 どこまで盛ってんのよ? 俺もだけど。

 少しは自重しろやっ! このサルどもがっ! ああそうさ、俺も同じだけどなっ!

 だが自分のことは棚にあげて、叫ばせてもらうぜ!

「ふざけるなーーっ!」




 翌日、ギルメンに事の顛末を打ち明けた。

 ギルメンは俺の肩を叩いて言う。

「よ、去年の俺」




終り

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ