カード狩り
「ワイルド・ラプターに体温の上昇を装備!攻撃力1800だ!」
竹田は装備魔法のコンボ攻撃でさらにアタッカーを増やした。
現在の戦況、竹田のライフポイント2400。場にはワイルド・ラプターとサイクロプスと魔人テラ。
対する加藤のフィールドには守備のホーリー・エルフが1体。そしてライフポイントは1800。
ホーリー・エルフの守備力は2000!そう簡単には突破されない数値。ここはコイツで持ちこたえるしかない!
「おい、加藤。ホーリー・エルフで凌ぐつもりか?そいつだけでこのターンを乗り切れると思うな!」
竹田は魔人テラとサイクロプスを生贄にしてブラック・マジシャンを召喚した。ブラック・マジシャンの攻撃力は2500。
勝敗は決した。
敗北した加藤はアンティカードのブルーアイズホワイトドラゴンを竹田に渡した。
「グヒヒ、スターターボックスについてるウルトラレアのブルーアイズホワイトドラゴン!こいつはお宝だぜぇ」
翌日、加藤は学校を休んだ。
「加藤が無断で休むなんて絶対何か理由がある!!」
昼休みの時間、短気だが友達思いの村野は高杉に熱くそう語った。
加藤は小学校の頃から学校成績を気にする奴だった。加藤は既に某有名大学に進学する事を希望して日々の勉学に励むガリ勉野郎だ。
そんな加藤が無断欠席するはずがない。高杉も村野と同じ気持ちだった。高杉と村野は加藤の見舞いに行く事に。
高杉と村野、そして加藤。三者はまだ中学1年生である。高杉と村野は中学に上がれば携帯電話を親から買い与えられる事が確定している。
が、まだ所持する段階にまではいたっていない。小金持ちの加藤は既に持っており、連絡相手が親と自宅しかないと嘆いていた。
そういう事情もあって高杉と村野は帰りに直接加藤の家まで見舞いに行く事に決定。
加藤の家は学校から徒歩5分という生徒からすれば神立地という家に住んでいた。建てられたばかりでそれなりに広さもある良い家だ。
インターホンを鳴らすと加藤の母親が姿を見せた。
「高杉くんに村野くん?龍一ったらカードが、カードがって寝込んでしまってるのよ。事情も話してくれないから私どうしたら良いか分からなくて・・・」
その時、高杉は思い出した。竹田のレアカード狩りの事を。
「おい、高杉。加藤はもしかして竹田に狩られたんじゃ・・・」
「どうやらそうらしい。加藤を復活させるには竹田と賭けデュエルをするしかないようだな」
「ん?2人は何か知ってるの?」
加藤の母親に話して事を大きくしたくない。そう思った高杉は加藤家を上手い事言って後にした。
竹田はほぼ毎日放課後に狩るために学校を徘徊しているはず、ならば今も学校内で獲物がいないかと探しているに違いない。
「村野、竹田と戦って加藤のカード取り戻すぞ」
「高杉、お前の方が俺より僅かながら強い。お前に竹田は任せたぜ」
高杉と村野は学校へ超速で戻った。
学校の門まで来た高杉と村野は作戦を立てることに。
「竹田を見つけて勝負を挑むのは得策じゃない。奴は一応この学校ではそれなりの腕を持つ決闘者だ。挑まれたら本気で向かってくるだろう」
「それで高杉は本気の竹田に勝てるのか?」
「無理だと思う。奴の方がカード持ってる事だし、戦いの数も奴の方が上だからな」
「それじゃあ、どうする?」
「奴から勝負を挑んでくるように上手く差し向けよう。弱く見せながら」
高杉は竹田らが出没しそうな場所に見当つけて、村野とデュエルを行った。竹田の事だ、すぐにレアカードのにおいを嗅ぎつけてやってくるに違いない。
校内はもう人がほとんどいない。奴らにとって俺達は絶好のカモだ。
「ゾンビランプで村野を直接攻撃!」
「ぐわああ!また負けたーーー!」
机を向かい合わせて、そのような三文芝居を30分程やっていると竹田が姿をみせた。
「へへへ、良さそうなカード持ってるじゃねえか。どうだ?俺とカードを賭けてデュエルってのは?」
きたきた、よーやくおいでなすったぜ。しかし、すぐに勝負を受けずに一度高杉は退いてみる事にした。
「いやいやいや、俺なんかのデッキじゃ瞬殺だぜー。遠慮しとくよ」
「そーー言わずにさぁぁ?」
しつこく迫る竹田。ここらで勝負するか。
「分かった。そこまで言うなら勝負しよう」
村野が座っていた席に竹田がついた。ゲームスタートだ。
竹田のアンティはブラック・ホール。高杉のアンティはブラック・マジシャン。本来竹田はブラック・ホールではなくブルーアイズを提示するのが普通であった。
が、竹田は万が一にもブルーアイズを失うリスクを回避したのである。だがそれは同時にもし竹田は負けた場合、アンティカードを差し出す覚悟が感じられる行動であった。
「デュエル!」
高杉の弔い合戦の始まりである。