ハンデ?
「しかし国枝にも困らされるぜ。デッキは上級モンスターばかりだってのによぉ」
「そうですねぇ」
「お前なんっつったっけ、あー、村野か」
「はい」
「国枝のいうエキスパートルールでやってみっか?」
「僕はまだエキスパートルールでしたことないので、どうぞお手柔らかにお願いしますね、大塚先輩」
大塚は思った。まだ大会で一度も戦ってない雑魚の上に、エキスパートルール未経験者か・・・これは楽勝だな。
しかし、一戦も交えてないだけで、相当の実力者なのかもしれない。
こいつは用心しないとな。俺のデッキは公式ルール用に構築されたデッキそのまま。
デッキが回らず事故でも起こしたら大変だ。
まだ、戦いに入る前だ。デッキを一度再構築したい所だが、年上の俺からそれは言えねえ。プライドが有る。
この村野とかいう奴、ルール変更されたのにも関わらず、特に動揺する様子もなく、デッキ編集もせず、俺とのデュエルに臨もうとしてやがる。
村野がルール変更を事前に知ってたとは考えにくい。しかしその可能性はゼロじゃない。
もし予めデッキをエキスパートルール用に変えていたのか?
いや、声をかけたのは俺からだ。
村野は俺をはめようとデッキを変更していたわけではない。もしや、誰でもよかったのか?
初見殺しで最初の一人目を確実に殺すために、村野は獲物を待っていたのか・・・?
くっ・・・杞憂で終わるといいな。
だが、俺は一度挑まれたデュエルからは逃げねぇ。ここまで準備は整ってんだ。
今の俺の最高のデュエルを見せてやる。それで奴を圧倒してやる。
「デュエルスタートだ。先攻は譲ってやるよ後輩だからな」
「そうですか。ではお言葉に甘えて、ドロー!」
村野は迷わずあるカードに手をかけた。
「モンスターを裏守備表示でセット。ターンエンド」
次は大塚の番。
「俺のターンだ。ドロー」
引いたカードを見て大塚は眉をひそめた。
いきなりレベル5のルード・カイザーが手札に来たか。
こいつを出すには場にいる自分のモンスターを一体生け贄にしないといけない。
このままじゃあ出せない。
ならば・・・
その隣のカードに手をかけた。
「ヂェミナイ・エルフを攻撃表示で召喚!」
ヂェミナイ・エルフ。生け贄が不要なレベル4までのモンスターの中で最も高い攻撃力を誇る下級のエースモンスター。
設置期間が曖昧なカードダスでしか手に入らなかったため、当時は破格の値段で取引されていた。
「ヂェミナイ・エルフで裏守備を攻撃!」
かかった・・・!と村野が心の中でほくそ笑む。
「守備モンスターは人喰い虫です。表になったことで効果が発動。その効果で先輩のヂェミナイ・エルフを破壊させてもらいます」
人喰い虫。ヂェミナイ・エルフほどではないが、このカードも当時の必須カード。
リバース効果のため、効果発動はおそいものの、裏表問わずモンスターを1体破壊できる優秀な効果を備えていた。
「ふっ、俺のヂェミナイ・エルフをすぐに処理するとは中々じゃないか」
「いえ、ヂェミナイ・エルフをあえて捨てるという先輩の温情には感謝しますよ」
な
「わざとかかってくれたんですよね?人喰い虫に」
こ、こいつぅ~~・・・!!生意気なボーズが、叩き潰してやる・・・・!!!