謎の実力者
数日後、高杉は3年の森田宗兵の前を訪れた。
森田はこの学校の中でも随一のデュエリストと聞いたからであった。
加えて森田はすでに予選落ち、暇そう(失礼)だからなにかアドバイスでも貰えるかと森田の前に現れたのだ。
休み時間に森田が座る席の前で、頭を下げた高杉だったが、森田は気乗りしなさそうだった。
「来てくれて悪いが高杉、俺は人にものを教えるのが苦手なんだ。他をあたってくれ」
「そう・・・ですか・・・・」
「だが、心当たりのある人物はいる。教えてやるからソイツの元に行ってみろ」
「あ・・・ありがとうございます・・・・!」
森田が紹介したソイツとは、香月影丸という男だった。学年は森田と同じ3年。
デュエルの実力は森田に引けを取らないレベルだが、現在の大会には興味を示さず不参加である。
森田によると過去に吉川拓也や野口徹平や黒澤貴也らそうそうたるメンバーを難なく撃破している。
「ここが香月さんがいる3年2組の教室か・・・」
一人で教室まで来た高杉。加藤と村野は別行動中である。彼ら二人はまだ大会に参加中の身なのだから。
森田情報によると香月は一番うしろの窓際の席にいると聞いたが、そこに香月の姿はなかった。
「香月影丸さんはどこですか?」
高杉はその教室にいた上級生を捕まえて訪ねた。
「香月?あいつ昼休みになるといつもどっかふらついてるから知らねえよ」
書き忘れていたが今は昼休み真っ最中である。
こりゃ探し出すのが面倒だぞ、と考えた高杉。ふと教室に目をやるとデュエルが行われていた。
おそらく3年同士のデュエル。
決闘の場に座していたのは決闘数28戦13勝15敗の西野明、それに対するは決闘数32戦10勝22敗の織田成道。
西野のライフポイントは300。それに対して織田は200。
ライフポイントの上では互角。
そして西野の場にはブラック・デーモンズ・ドラゴンを始めとして音楽家の帝王、魔装騎士ドラゴネス、雷神の怒りと融合モンスターがずらりと並んでいた。
対して織田の場にはカードは0。手札もなかった。
「織田、お前ももう終わりだな」
余裕の表情を見せる西野。
「まだ勝負は決まってねえさ。次のドローカードを引くまではなぁ!」
「ふっ、強がりを。ならば次はお前のターンだ。さっさと引け」
「ドロー!」
引いたカードは・・・!?
「引いたぜ、キャノン・ソルジャー。攻撃表示だ」
それを見てあざ笑う西野。
「そいつはたった攻撃力1400じゃないか。そいつを出してどうするつもりだ?」
「慌てるな。こいつには特殊能力がある。自分モンスターを1体生け贄にするごとに相手に500のダメージを与えるんだ」
「な・・・!まさか!」
「もう遅いさ。キャノン・ソルジャー自身を生け贄にして西野に500ポイントダメージ!」
「んぐぅ・・!負けた・・・」
あれだけ攻撃力の高いモンスターが並べられて、カードもない状態から逆転する勝ち筋があるのだと、高杉は感心した。
「って、デュエル見てる場合じゃないな。さっさと香月さんを探さないと」
高杉は教室を後にした。