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第一話 兄妹と書いて姉妹と読む。

 雌しべと雄しべ。

 植物の世界では雌雄同体などといい、雌雄を一挙に自身に宿す例が広く知られている。また植物以外にも性別の区別がない生物などは多く存在する。しかし人間の世界ではあり得ない。例えば、凸と凹を両方持っている人間など見たくもないどころか想像すらできないものである。

 しかし、今の高宮数馬はそれに近い状態だ。彼、いや彼女と言うべきだろうか。とにかく数馬はこれまで高宮家の一人息子として育ってきたはずなのに、朝起きると自分の体に異変を感じ、紆余曲折を経て鏡を見ると女の子になっていた。


 長い髪に大きな胸、細くて綺麗な指、水面のようにつるりと光る肌。またその他にも女性としての魅力が数馬の体には大量に搭載されていた。それに加えて一糸まとわぬすっぽんぽん。女の子の体が鏡を通して視界を支配する。せっかく女の子の全てをじっくりと見る機会なのだから、もっとより深く情景を記憶していたいものだが数馬の思考は一点に集中していた。だが、それは寝坊助の兄を起こしに来る妹の心配などではない。もっと数馬の気を引くものが目の前にはある。


「な、なんて大きな胸だ・・・・」


 本来は胸の評論をする前に、もうすぐやってくる妹への対応や女体化現象自体の心配等しなければならないのだが数馬の視線は鏡に映る自分の胸部に集中してしまっていた。


「す、すごい!胸ってこんなに柔らかいのか・・・・・」


 性的思考を省いても、数馬の知的好奇心は留まることを知らない。そして思考を支配された数馬には刻一刻と妹の襲来が近づいていることは知る由もない。


「D寄りのEか・・・?それともG寄りのFか・・・?それとも・・・」


 勿論カップ数を推測している数馬の貞操はD寄りのTである。だからこんなにも初な男子の反応を示しているのだ。しかし、そんな今の数馬の性別はmanでもないしwomanでもない。間をとってomanだろうか・・・これはいけない。


「いや・・・・これはGだ!!!!」


 律儀にトップとアンダーの差を測って、Gという結論を出した頃には、タイムリミットはもうデッドラインに差し掛かっていた。やっと数馬は我に帰る。


「・・・・・って!!そんな事言ってる場合じゃねぇ!そろそろあいつが・・・・・」


 やっと現実に戻ってきた数馬は迫りくる妹の襲来について考えを巡らせる。不平不満を漏らしながらも毎朝単身赴任中の両親に代わって家事全般に加えて、朝起こしにまで来てくれる妹こと寿々すずね。例え妹の寿々音といえども、自分ですら理解できていないこんな姿を他人に見せてしまうのは明らかに不味い。


「ちょっともう!毎朝、毎朝早く起きろって言ってるのに、なんでアンタはいつまでたっても・・・・・!こっちは朝ごはんまで作ってやってるのに!!」

「き、来た!!!」

 寿々音は日々の怒りのあまりドンドンとわざとらしく音を立てて、階段を上がってくる。螺旋状の階段を上がって右手にはもう俺の部屋がある。もうそこまで来ているのだ。


「いつまで惰眠を貪ってんのよ!昨日も深夜五時まで煌々と電気ついてたし!!今日という今日は許さないから!!」

 最早昨日というよりかは今日であるが、怒りに渦に飲み込まれた妹に対して為す術はない。そんな彼女に対して、反射的に弁明をしようと試みるが、自分の声は女の子になっていることがその選択肢を潰す。


(ってそうなると、いっその事隠れるか?いや、駄目だ。どうせ隠れてもこの家にいることは玄関の靴でバレる・・・・なら逃げる?それも駄目だ。この部屋には寿々音が入ってくるであろう扉と窓しか逃げ道がない。窓から逃げても流石にマンションの10階から飛び降りると怪我じゃ済まない・・・)


目まぐるしく変わる環境に思考力を奪われながらも、数馬は考えた末に第三の案を採用する。それは・・・・・・。


(元から女だったと考えればいいじゃない!!)


五時までぶっ通しでネトゲに勤しんでいた代償というべきか。起床時点で数馬の思考力は殆ど皆無だった上に、環境の変化によるストレスで思考力が格段に低下していた。所謂馬鹿になっていたのである。その結果、彼には元から女だったと接する以外の対案が思い浮かばない。やっていたネトゲがパラレルワールド的シナリオだったのも原因の一つかもしれない。


怒りの足音とは対照的に、ゆっくりと深呼吸して覚悟を決める。


(今日から姉妹として関係を改めよう・・・寿々音・・・)


「入るから!この馬鹿兄!!着替えてても知らないから!!!!」

 その甲高い激昂と共に目の前の扉が開かれる。ゆっくりとスローモーションのように扉の隙間から見える、彼女の黒髪。非常にきめ細かい上に大和撫子のように長く、そして一房一房が優雅に空中を泳ぐ。その黒髪ロングを始めとして、彼女の全貌が徐々に見え始める。華奢な腰回り、主張が控えめな胸、比較的長い脚は黒のパンストを履いているのが、より長さを印象づける。まるで頭から脚まで一本の縦線を引いたようだ。

顔立ちは非常に端正に整ってはいるが、やや切れ長の目がかなり気が強い印象を抱かせる。まさにその出で立ちは委員長キャラといった所だ。


「全く・・・・・・って・・・えっ?」

 数馬を視線に捉えた彼女は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐさま困惑の色に染まる。訝しむように睨む寿々音と対峙する。やってくるまでの轟音と比べると、異常なまでに沈黙が続く。こちらから何かを話すと大惨事を招きかねない。あくまでも、後手を選択して即時対応していくことが大切だ。そして寿々音がやっとその重い口を開く。


「えっと・・・・・・・・ど、どちら様ですか・・・・・?」

「え、えっとだな寿々音・・・・・お、俺、いや違う、私は・・・・その、あの~・・・・・・」


 予想外の反応に数馬はしどろもどろになってしまう。内心、妹は驚きのままに叫ぶのではないかと想定していた数馬は思ってもいない反応に困惑してしまう。この妹との会話が今後、今後の家族の関係を握る重大な選択のように感じて、数馬は自分の胸元で軽く手を組みもじもじと考え込んでしまう。


「えと・・・・その俺、いや私は・・・えっと・・・・・・」


 もじもじと考えている数馬は気づいていないが、今の彼の姿は女体化している上にすっぽんぽんなのである。それに加えて体を右へ左へとくねくね曲げている。寿々音の目には、見知らぬ女性がナイスバディをくねくねと妖艶に動かしているようにしか見えない。

 寿々音は自分の持っていない物を多分に体に持っている数馬の体からどことなく視線を逸らす。そしてこの状況に困惑しつつも、クネクネと妖艶に体を動かす数馬に対して、頬を桃色に染めてしまう。

 

「あの・・・・どっ・・・・どなたか分からないんですけど・・・・・・」

「はっ、はい!なんでございましょう!!!」


「と、取り敢えず、服貸しましょうか・・・・?」

 勇気を振り絞った寿々音の頬は薔薇のように真っ赤に燃え盛っている。実の妹の恥ずかしがる様子に珍しさを感じながらも、数馬は、首をこくんと縦に振る。

 この時をきっかけに数馬は得ずして女としての道を歩み始めることになってしまう。そしてその事が、今までの日常を大きく揺るがすことをこのときの数馬はまだ知らない。ブラのカップ数すら実はGどころかHもあったことをこの時の数馬はまだ知らない。因みに寿々音はBくらいがいいところだ。

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