74話
遅くなりました。すいません
1人で来いとの事なのでリーゼとアールには部屋で待っておく様に伝えた。
カーティルとシャドーアサシンの数体が隠れてクヴァルムの護衛に付く。
使用人に案内されて宰相の執務室に通される。
使用人がノックする「クヴァルム様を御案内致しました」すると中から「通せ」と返事が来たので「失礼します」と言ってから使用人が扉を開けクヴァルムを中へと通す。
「失礼します。お呼びにより参りました。クヴァルムです」
頭を下げる。
「ああ、良く来てくれたね。頭を上げてくれ」
マーク宰相の声で頭を上げる。
マーク宰相は何やら書類作業をしていた。
部屋の中にはクヴァルムとマーク宰相しか居ないが護衛が影に入る事がカーティルからの念話でわかった。
向こうの護衛も腕も立つがカーティル達隠密型魔導人形の方が隠密能力が高く気付かれて居ない。
流石は古代魔法文明が作り上げた者達だと感心して居た。
「すまんが少しそこのソファに掛けて待ってくれ。おい!誰か紅茶でも出してくれ」
クヴァルムはマーク宰相に言われた通りソファの下座に座った。
マーク宰相に呼ばれすぐにメイドが入って来て紅茶と御茶菓子を置いて退室して行った。
暫く待つと漸く一区切りついたのか「ふぅ」と息を吐いてマーク宰相は席を立ち上がりクヴァルムの対面のソファへと腰を下ろした。
「ふぅ、待たせたの。改めて自己紹介しとこうかの。儂がオルトメルガ王国宰相マーク・ロトカルフ・フォン・ヘトバンクじゃ」
マーク宰相は60代で髪は白髪に染まっては入るが背筋はピンとしておりまだまだ現役だ。
だが流石による年波には敵わないのか近々侯爵家の当主の座を息子に譲り渡し宰相の仕事に専念するらしいと王城内で噂されていた。
「クヴォルム・ドゥーエです。宰相閣下」
一つ頷き「うむ。それで呼んだ理由は先も陛下が仰っておられた様にお主を…いや、お主ら黒鴉傭兵団に対軍演習に参加する様に命じられただろう?」
「はい。その様に伺っております」
「そうじゃ。ここに呼んだのはそれが理由じゃ。それでまずお主ら黒鴉傭兵団は東軍所属になる。そこで東軍の主だった将官達に御主らを紹介するのがまず一つ。二つ目はもし御主らが認められればクヴォルム御主には騎士爵が授けられ部下達は騎士の位が授けられよう。そして御主の傭兵団は多分シャルロット王女殿下の要請で第三王女付き騎士団となる可能性が高いのう」
「何故シャルロット王女殿下は私達を自らの騎士団へとしようと推測されるので?」
好好爺然とした顔から笑みが消え目は鋭くなり此方を見据える。
これがマーク宰相の本当の顔だろうと思った。
「これより先は政治に関わるので聞いたら後戻りは出来んぞ?御主が関わる事を拒否するなら儂が掛け合って例え御主が対軍演習で好成績を残しても騎士爵の叙爵を回避させる事も可能じゃ。それかオルトメルガ王国の臣になったとしてもこれには関わらない様にできるだけ配慮してやっても良いぞ?」
「それには何をお求めですか?」
タダでそんな事をしてくれるとは思ってもいない。
「ふむ。そうだな前者の騎士爵の回避なら別に何も求めんわい。その代わり金貨を追加で渡してやるわ……だが後者の場合は御主ら黒鴉には儂の下に付いてもらう事になるかの。そうしなければ儂も庇えないからの」
「何故そこまで気にかけて下さるのか理由をお聞きしても?」
マーク宰相は少し考えてから口を開いた。
「他言無用で頼むぞ。儂はシャルロット王女殿下の事を孫娘の様に感じておる。シャルロット王女殿下は儂の事をじいじと呼んでくれるしの。その王女殿下を窮地から救ってくれた御主には多少の恩義を感じておるんじゃよ」
「では、何故シャルロット王女殿下の力になれる第三王女付きを回避出来る様に手を回してくれるんですか?」
「ふむ、それはな。確かに第三王女は確かに今回狙われる事になったがこれで自身の戦力を確保すれば他の殿下達を刺激して余計に危険に晒されると考えておる。おっと因みに儂は中立の立場を守っておる。シャルロット王女殿下に味方したいのは山々だがそうすると参加したくも無い後継者争いに参加させてしまう事になるからのぅ」
て事は今は王子、王女達の間で後継者争いが起こっているという事か。
今回の派閥同士の争いが深刻化して来たのもこれが原因か?
まあ、俺が考えても仕方ないな。
さて、如何するか?マーク宰相の話を信じても良いのか……それとも と考えているとカーティルから念話が届いた。
『主様恐らく宰相は嘘をついてはいないかと思われます。某のスキルには反応しなかったので』
そういえば確かカーティル達隠密型魔導人形は相手が嘘を言ったか如何かを見分けるスキルを備えているとか言ってたな。
この場合はカーティルのスキルを信じるかそれともマーク宰相がスキルを上回る交渉術を持っていて本心を隠しているか……
まあ良い出たとこ勝負だ。
面倒な政争に巻き込まれるのはごめんだがこの世界の事や戻り方、他にも同じ様な目に遭った者が居ないかの調査にはやはり個々人では限界がある。
ならば此処はシャルロット王女殿下に協力する見返りとして情報の収集を行なって貰うのが最良か。
「いえ、ご好意はありがたく存じますが此処は自身の力で何とかしていきます」
「そうか、わかった」
マーク宰相はそれ以上追求しなかった。
「そうじゃ。3日後再び城に訪ねて来てくれ。東軍の者達との顔合わせをしたいのでのぅ」
「わかりました。では失礼します」
ソファから立ち上がり頭を下げる。
「うむ。部屋の外にいる者に案内を頼むが良いぞ。それと2週間後迄は宿を取ってあるのでそこを利用するが良い」
「重ね重ねのご配慮感謝いたします」
その後部屋の外にいた執事に元の部屋へ案内され黒鴉傭兵団員を全て集めて城を出て用意されていた馬車に乗り込み宿へと案内される。
馬は宿についている様だ。
それと今回の護衛依頼は達成とされその報酬も城の外にいたルーセント辺境伯の騎士に渡された。
本当はギルド迄行かなければならない事なのだが今回は王からのお呼びとあり特別だ。
◆ ◆
◇ ◇
宿は高級な部類に入る物であった。
各部屋にはそれぞれ専用の使用人が付き大抵の物なら用意出来るとあってまさに至れり尽くせりの宿だ。
だがこの宿も最高級では無くその二つランクの低い宿だという。
最高級の宿は貴族でも高位の者や商家だと最大手でも泊まれるかどうかの値段で一市民ではとても泊まれるような宿では無いらしい。
部屋に案内される。
「ふぅ〜疲れた〜」
正装を脱ぎ部屋着に着替える。
「お疲れ様でした。主様」
リーゼが果実水を持ってくる。
「ん、ありがとリーゼ」
「いえ、当然の事をした迄です」
「アールは何処に行ったんだ?」
「アールは現在我々黒鴉の団旗を製作するに相応しい店を探しに行きました」
「ああ、そういえば団旗作ってなかったな。マークは鎧に付いてる紋章と同じで良いよ」
「畏まりました。………伝えました」
「了解。疲れたから今日はもう横になるよ。夕食の時間になったら起こしに来てくれ」
「畏まりました。ではお休みなさいませ」
リーゼは一礼して部屋から退出する。
クヴァルムはベッドに横になり眠りについた。
出来るだけ早く投稿出来る様に鋭利努力します。




