70話〜第三王女〜
タイトル通り王女の登場です
翌日問題なく領都パルシオンを発ち王都へ向けて一行は進んだ。
パルシオンから4日傭兵ギルドで仕入れた通り深き森が見えて来た。
ここは予定通り迂回する手筈だ。
そしていざ迂回路を進もうとした時深き森の中から戦闘音らしき物が聴こえてきた。
最初は魔物同士の争いの音かと思ったがこれは剣戟の音だ。
もしかしたら商隊などが盗賊に襲われているのかもしれない。
どうするか指示を仰ごうかと辺境伯の馬車へと向かおうとする前にラケシル副団長が此方にやって来た。
「クヴァルム、辺境伯様が貴殿らにこの戦闘音の確認に行って貰いもし商隊などが盗賊に襲われていたら、これを駆逐をせよ。との事だ」
「助けた後は?」
「そうだな。取り敢えず怪我人などがいたら処置出来ればしてくれ。その後一旦伝令でも送ってくれその後判断する」
「了解した」
黒鴉51騎は深き森へと進む。
暫く駆けていると剣戟の音が大きくなって来た。
もう少しで到着するなここで偵察を出すか。
「全体止まれ」
二体のレイスを偵察に出した。
数分後レイスから思念が送られて来た。
どうやら襲われているのは商隊ではなく貴族の馬車らしき物で襲撃者は盗賊などではなく訓練された集団だ。
想定と違いどうするか数秒考えたが見捨てるのも憚れるので助ける事にした。
それに早く行かないと間に合わないだろう。
護衛とおもしき騎士達は大半が地に伏している。
何より襲撃者の人数が多いなんとか奮戦しているがそのうち数の差で敗れ去るだろう。
「これより奇襲突撃に入る駈歩」
駈歩である程度近づき襲撃者の姿を捉えると
「襲歩!」
襲撃者は突然の騎馬突撃に驚き対処が遅れて端から斬り伏せられる。
護衛の騎士達はこの隙に隊列を整えてこの一団の1番豪奢な馬車を中心に円陣を組む。
流石に一回の騎兵突撃では襲撃者達を倒しきる事は出来ず大半が残った。
襲撃者達は全員黒尽くめで顔にも布を巻きつけて目の部分以外隠れている。
持っている剣には毒とおもしき液体が塗られている。
今まで毒を持った敵と戦った事は無いので注意が必要だな。
「リーゼ15騎を率いて右側面をから援護しろ」
「はっ!畏まりました」
「俺は20騎を率いて中央突破をする。それをアールは残りを率いて援護しろ」
「承りました主様」
「では、行動を開始せよ!」
三隊に分け再び突撃を開始する。
襲撃者達は混乱から素早く立ち直り乱入者たる黒鴉を見据えて半数の100名を此方にさし向ける。
残りの100前後は再び馬車を狙う。
馬車の護衛の騎士達は約30名迄に減っていた。
馬上の戦闘はこれが初めてになるがなんとか危なげなく戦えた。
これも的確にリーゼ率いる部隊とアールが率いる部隊が援護してくれるお陰だ。
それにゴーレムナイト達に毒は効かないので襲撃者達は人間だと思い的確に鎧の隙間に刃を通しているのにキィンと金属音がなり弾かれるので困惑している。
その困惑の僅かな隙も見逃さずリーゼとアールは襲撃者達を切り裂いていく。
それにしてもミスリルソードは良く切れる。
ミスリルソードを受け止めようと剣をバターの様に剣ごと切り裂いていく。
馬上の為に上からの振り下ろしが主な攻撃方法になるがそれでも十分だな。
その為敵は受け止めるのではなく避けなければならず避ければ後ろのゴーレムナイトが槍を振るうのでそれも回避せねばならず次々と討ち取られていく。
15分程で此方に割り当てられた襲撃者達を一掃すると馬車を襲っていた者達もこれ以上は不利と見たのかさっと森の茂みの中へと逃げ込む。
怪我で動けない者達は奥歯に仕込んでいた毒を含み自決する。
周囲にゴーレムナイト達を散開させて周辺の警戒に当たらせクヴァルムとリーゼ、アールは馬車に近づく。
護衛の数も更には減り残りは20名程だ。
馬車に近づくクヴァルム達を警戒し一応は、剣を構える。
一応なのは彼らを助けに現れたからだ。
騎士の中から1人前へ進み出て誰何する。
「そこで止まれ!助太刀には感謝する。貴殿らは何者だ!」
どうやら声からして女の様だ。
「我らは黒鴉傭兵団。今はルーセント辺境伯様の護衛任務に就いており此方から剣戟の音が聴こえてたので、偵察に参った次第。そこで貴殿らが襲われているのを発見し助太刀した所存だ」
「わかった。だが念の為に何か身分を証明する物は持っておるか?」
そう言われ懐(正確にはアイテムボックス)からルーセント辺境伯家の紋章入りの手形を出す。
それを女騎士に渡すと「確かにこれはルーセント辺境伯家の紋章だな。返そう暫し待て」
女騎士は馬車の主人に何か話している。
残念ながらここからは聴こえない耳に魔力を宿して強化したら聞こえるだろうがそんな事をしてバレるとややこしくなりそうなのでしない。
暫く様子を見ていると女騎士が驚いた顔になる何か諌めている様な雰囲気だがやがて女騎士が折れたのか渋々と頷いている。
馬車の扉が開かれる。
中にいたのは豪華な白のドレスを着ている女性である。
だがその豪華な白のドレスもその人物を飾り立てる一要素にしか過ぎず他の装飾品もどれも高価だとわかる一品だが派手すぎずシンプルでその女性にすごくフィットしている。
頭には金色のティアラを乗せている。
中から姿を現したのはまさに深淵の令嬢に相応しい容貌の銀髪紫瞳の十代前半の愛くるしい容貌の女の子だ。
それの人物をジィっと見ていたら女騎士が
「殿下の御前である跪かぬか!」と一喝されたので素早く跪き「はっ!失礼いたしました。あまりに姫殿下がお美しく見惚れておりました」と言い訳をしといた。
実際は姫様なんて見た事もないから知らずただ可愛らしい子供だな…と思って見ていただけだ。
「よいのじゃ、メリアこの者達は妾の命の恩師たちよ。少しの無礼ぐらい笑って許そうぞ」
何か少しの年寄り臭い話し方だな。
「はっ殿下がそうおっしゃるならば」
女騎士ーーメリアーーは深々と頭を下げ了承の意を示す。
「それとメリアよ。いつもの様に名前で呼んでもいいのじゃぞ?」
冗談交じりにそう問いかける姫殿下にメリアは
「姫殿下。今はその様な時では御座いますまい」
「相変わらずそちは真面目よのぅ。まあ妾はそんなところも気に入っておるがな」
「有り難く存じます」
コホンと軽く咳払いをする。
「おお、すまなんだな。まずは妾の名を告げとこうかの。妾はこの国オルトメルガ王国が第三王女シャルロット・ロゼ・ブルトール・フォン・オルトメルガじゃ」
「で、この者は我が守護騎士のメリア・フォン・トリニコスじゃ」
「紹介に預かったメリアだ。この度の事は感謝する」
「そうじゃな。何か褒美を渡したい所じゃが今はそれどころでは無さそうなのでな。今は一刻も早く王都に戻らねばならぬ」
年相応の顔からどこか大人びていて真剣に王都の方角を見据えていた。
「それでそちの名はなんと申す?」
「はっ。私はクヴァルム・ドゥーエと申します。この黒鴉傭兵団の団長を務めております」
「後ろに控えますは私の副官のリーゼとアールで御座います」
2人は軽く頭を下げる。
その反応に何か言おうとしたメリアだがシャルロットが軽く手を上げ止める。
「そうか、クヴァルムよルーセント卿に伝令を向かわせてはくれぬか?」
「すぐにでも」
クヴァルムが軽く手を上げルーセント辺境伯がいる方角に手を振ると騎兵が二騎伝令として向かって馬を駆けて行った。
それだけの動作で動かした事にシャルロットは軽く目を細めメリアも目つきが変わり周りの黒鴉のメンバーを流し見る。
その後軽く談笑していると物凄い速度で馬を駆るルーセント辺境伯自身とそれに追随する騎士達。
シャルロットを見ると素早く馬から降り近づいて来て跪く。
他の騎士達もその後ろで畏まっている。
「シャルロット殿下。御身の身に何か御座いませんでよう御座いました。クヴァルム良くやった」
「はっ、ありがとうございます」
「すまぬがルーセント卿よ王都まで随伴させてもらえぬか?何せ護衛の騎士達が奮戦虚しく倒れてしまってのぅ」
悲しそうにシャルロットはルーセント辺境伯に提案する。
「はっ!勿論でございます。御身の身は責任を持って我らがお護り致しますゆえ御安心召されて下さいませ」
こんなに畏るルーセント辺境伯は初めて見るな。
「では、頼んだぞ。それとちと妾を護って死んで行った者達を後で供養したいのは山々だが、時間がないのでな後で迎えによこすので道の端に纏めて安置して置きたいので手伝ってはくれぬか?」
「わかりました。お手伝い致します」
♢
その後手分けして騎士達の遺体を移動させる。
作業の途中で残りの騎士と使用人や馬車が到着した。
襲撃者の遺体から何か手掛かりがないか探したがこれといった物は無く。
何も手掛かりを掴むことは出来なかった。
後で派遣する者にも調べさせる予定だ。
一応剣に塗られていた毒だけ採取して小瓶に詰めといた。
全ての騎士達の移動が終わると姫の馬車を中心にして王都へ向けて出発した。
誤字脱字気をつけていますがあれば指摘などお願いします。
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