69話
今日は傭兵ギルドの方に行く事にした。
宿の受付に傭兵ギルドの場所を聞き行ってみると、今までで1番小さかった。
中に入って受付に理由を聞いてみるとこの辺りはパルシナ騎士団が定期的に魔物や盗賊の討伐を行なっているので平穏その物の為に冒険者ギルドや傭兵ギルドの需要があまりないのでそれに伴って規模も縮小したらしい。
代わりに商業ギルドは1番規模も大きく需要と供給が盛んとの事だ。
その為かこれといった危険がなく唯一の注意点はここから王都までの境に深い森があり急がなければ迂回する事を勧められた。
一応騎士団も度々訓練の為に森へ入るが浅い場所のみの為に奥に魔物が少ならいながらも存在する為に、森の道を通った方が近いが多少遠くても迂回する事を勧められた。
他にはこれといった情報はなくこれ以上ここにいてもする事がないので傭兵ギルドを後にした。
この街で見かける傭兵や冒険者は駆け出しが多くこれといった人物もいなかった。
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そうして大通りをアールとリーゼを連れて歩いていると人垣が出来ている所があったので興味本位で覗いてみると、何やら腕相撲をしており店が用意した大男に勝てば賞金が出るらしい。
参加料金は高めの銀貨一枚で勝てば今までの参加料金プラス賞金があるのでこぞって力自慢が参加している。
だが大男は人族ではなく獣人だ。それも力が強い熊族だ。
身長も2m10cmぐらいで腕も丸太みたいに太い。
次に挑戦したのは狼族の男性だ。
「では、挑戦料の銀貨一枚頂きます」
そう言ったのはヒョロっとした背の低い人族の男性だ。
どうやら2人はコンビらしいな。
「ほらよ」狼族の男性は銀貨一枚を渡した。
「確かにでは始めましょう」
「てば…よーい…スタート!」
審判役の人族の男性の合図で狼族と熊族の男性は腕に力を込め押し合う。
まわりも『いけー』『勝て!』『頑張れ!』などの声援が狼族の男性に飛ぶ。
だがジリジリと狼族の男性は押されてもう少しで手の甲がテーブルに接触しそうだ。
顔は汗を滲ませ必死の表情で腕に力を込めるが巻き返せず結局熊族の男性の勝利に終わった。
この勝負を持って今日はお開きになった。
ふーんこんな催しもあるのか。
その後特にあてもなくぶらぶらと街を散策しているとどうやら貧民街の方へ来てしまった様だ。
大通りの活気ある姿を見た後なので余計にここが貧相に見える。
ボロボロの家屋やホームレスそれに明らかに堅気ではない者達がいる。
元来た道を戻ろうと踵を返そうとしたが数人の男達が路地裏から出て来て行く手を阻む。
「あぁ一応聞いとくが退いてくれないか?」
めんどくさく思いながらも一応会話を試みる。
「ああ、いいともその立派な鎧とそこの姉ちゃんを置いてけばお前らはすぐに通してやるよ」
「いや、待てこの2人も中々の美形だ売り飛ばせば結構な額になるぜ」
何やら仲間内で相談し始めた。
帰っていいかな。
「答えが出たか?」
「ああ、逃さねぇ事にした。大人しくしたけば怪我はさせねえが抵抗するなら骨の二、三本目は覚悟しろよ」
ドスの効いた声で脅しをかけて来てこれ見よがしにナイフをチラつかせる。
面倒だなと思いながらも一歩前へ出ようかとするとアールとリーゼが「お待ちを彼らの相手は我らで十分です。主様はどうぞお待ち下さい。すぐに終わらせますので」
その言葉に周りの男達は馬鹿にされたと思い一斉に殴りかかって来た。
アールは目にも留まらぬ剣さばきで次々と襲いかかる男達の腱を切っていき動けなくする。
リーゼはどこに隠し持っていたのか短剣を出しそれを男達の足えと投擲して行く。
ものの1分程で総勢19名が戦闘不能に陥った。
予め街で絡まれたら殺すなとは言ってたが、アールの方はもう二度とまともには歩けなさそうで、リーゼの方も数ヶ月はまともには動けないだろう。
「ご苦労2人とも」
「いえ、この程度は誇る事にも値しません」
「ええ、当然の事をしたまでです」
「…そうか……」
「くっ、この化け物共め。畜生が俺たちのバックにはランボウ一家がいるんだぞ。手ェ出したんだ覚悟しとけよ」
そう言って来た男の元へリーゼが近づき男の股間へ向かって蹴りをぶち込んだ。
男は泡を吹いて気絶した。
リーゼは笑顔で振り返り「ゴミを排除しました」と良い汗をかいたとばかりに袖で額を拭う動作をする。
それを見て股間のあたりがヒュウってした。
これ以上ここにいてもまた絡まれるだけなので貧民街から出たが一応レイスを数体放ちランボウ一家について調べさせた。
明日ここを立つがそれまでにちょっかいをかけて来ないとも限らない。
帰る途中墓地により使役を使いボーンソルジャーを作成した。
彼らにはボロい黒マントを着させてランボウ一家の縄張り近くに待機させ。
俺たちが出発するまでに縄張りから出て来ようとしたら邪魔をする様に命じた。
すぐさまボーンソルジャー達は貧民街に向かって走り出して行った。
もし真夜中に出会ったら悲鳴をあげるだろうな。
その後は寄り道をせずに真っ直ぐ宿へと戻り部屋で着替えてから夕食を取るために食堂へと向かった。
中は階そう一つ分を使っているので広々としており照明はランプや蝋燭ではなく魔道具を使っているので明るい。
空いてる席に座るとウェイターが来たのでオススメのコース料理を3人分頼み飲み物は赤ワインを頼んだ。
銘柄を聞かれたがこの世界のは知らないので適当に料理に合うやつを頼んだ。
料理が運ばれて来るまで周りの客を観察していた。
どうやら貴族は居らずに富裕層が主な客層だ。
これは嬉しい今までの宿は少なからず貴族が宿泊していたので時々勧誘などがあり面倒だったが、パルシナ伯爵はそこら辺も機敏に察して貴族が宿泊せずに富裕層が主なこの宿を
選んでくれた様だ。
その後は運ばれて来る料理を食して部屋へと戻り就寝した。
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余談だがその日貧民街に悲鳴がこだました。
その後ランボウ一家は逃げるようにこの街を去っていき貧民街に悪霊が出ると噂された。
パルシナ伯爵は貧民街の中心的なランボウ一家が消えたので貧民街の犯罪者の一掃に乗り出した。