8話〜ロベルトとの出会い〜
さて、どうするか観察してみると荷馬車の近くには護衛らしき人たちの死体が5人ほど倒れていた。
それに対して狼みたいなのは12体も倒されていた。
鑑定をしてみると狼みたいなのは
-ハウンドウルフ-という魔物らしい。
その中の一際大きいのは
-ハウンドハイウルフ-
如何やらハウンドウルフ達のボスらしい。
人間で生き残ってるのは商人らしき男だけだ。
状況をある程度確認した俺はその商人を助け出すべく動き出した。
敵はハウンドウルフ五体にハウンドハイウルフ一体正面から闇雲に挑んだら危険だ。
まずは敵の注意を逸らすところからだな。
まず地面に手を置き使役を使用すると土が動き出した固まり30cmぐらいの土人形が出来た。
その土人形にありったけの魔力を込めハウンドウルフに向かって駈け出させた。
土人形の存在に気づいたハウンドウルフが一斉に囲んでその中の一体が噛みついた瞬間土人形が爆発した。
噛みついたハウンドウルフは頭が吹き飛び即死し近くのハウンドウルフは、土人形の硬くなった破片が飛び散り大小様々な怪我を負いその中の一体は、運が悪かったのか目に思い切り破片が刺さって死んでいた。
さながらさっきの土人形は手投弾みたいな威力だった
何故こういったことができるのかというと本当に偶然の産物だ。
使役のスキルを食後のあと他にも何かできないかと、試しに地面に試したら土人形が出来たのだ。ただ、30cmとあまりにも小さかったのでこれは使役のスキルLvが足りないのか魔力が足りないのかわからなかった。そのため試しに魔力をもう少し加えると土人形が崩れ落ちたので、今度はもっと魔力を込め離れてみると爆発し、これは使えると思ったのでさっきハウンドウルフに試したのだ。
何故爆発するのか細かい原理などはわからなかったのでそこはもうファンタジーだと思う事にした。
自分なりに考えたところ、土人形が魔力に耐えられなくなりそれが少しだけ許容範囲より多いと徐々に崩れていくが多すぎると一気に爆発するのだろう。
土以外にも岩や木などにもかけてみたがかからなかったので多分スキルLvが足りなかったのだろう。
まあこういう経緯があり土人形型爆弾をこれからは戦法に加えていくつもりだ。でもこれ結構魔力を使うんだよな。
大体200前後、距離によって増えたりするからあまり多用は出来ないな。
だが、これのお陰でハウンドウルフは残り3体の内2体は重症で一体は軽症、ハウンドハイウルフは無傷かまだまだ厳しそうだな。
俺は商人風のおっさんに向かって
「おい!あんた今の内に逃げろ!」
「無理だ荷馬車の車軸が折れて動けないし馬が逃げたのでどの道荷馬車は動かせない!それに積み荷には、大事な物があるから置いて逃げれない!」
ちっ面倒な
「なら荷馬車の上に登って大人しくしとけ!」
「わ、わかった!すまない」
おっさんは素直に従って荷馬車の上に登っていった。
商人風の人が上に登ると繋がれていた馬が暴れて自分を繋いでいたロープなどを引きちぎり逃げ出して行ってしまった。
馬の事は後でどうにかすれば良いだろうと思い正面のハウンドハイウルフ達に向き合った。
「ようお前らの相手は俺だ」
実際には、俺もそこまでの余裕がある訳では無かった
だが今は余計な事は考えずに目の前のこいつらに集中しないと1つのミスで死ぬかもしれないからな。
何気に対多数は初めてだな。
一応剣術道場ではやった事があるがこう命のやり取りだとこうも、プレッシャーが違うとはな。手汗が止まらないな。
自分に喝を入れるためにも叫んだ!
「掛ってこいオラァ!」
その声に反応してハウンドウルフの軽症の奴が突っ込んで来たのを躱し、その後ろの重症を負っている左側のハウンドウルフをすれ違いざまに斬り、斬り返す刃でもう一体のハウンドウルフを斬った。直後ヤバイ!という直感に従って慌てて横に倒れこむようにかわすと少し前まで俺の頭があったあたりをハウンドハイウルフの前爪が通りすぎていった。
ふぅ危ない危ない油断大敵だな。
残ってるハウンドウルフも背後に回り込もうとしてるので牽制に地面に落ちている石を頭めがけて蹴ったが、その瞬間を狙ってハウンドハイウルフが飛びかかって来たので、身体を捻って躱しショートソードで奴の腹を斬ってやった。
傷が浅かったようで余計に苛立たせただけだが冷静さを失ってくれるとありがたいので、挑発した。勿論ハウンドウルフの位置もちゃんと確認して何時でも対応できるようにしてから
「おい!犬っころそんなもんか大したことねぇな」
挑発するとそれに苛立ったのかハウンドハイウルフが吠えた。それに反応してハウンドウルフが飛び掛かりハウンドハイウルフも真正面から突っ込んで来た。
ハウンドウルフを避け、そのままハウンドハイウルフの方へ横っ腹に蹴りを入れた。
ハウンドハイウルフは予想してなかったのかキャウンと音を出してぶつかり倒れた。すかさず俺は反応して首を斬り落とした。
その後俺の蹴りを喰らいぐったりしてるハウンドウルフに止めを刺し辺りに他に危険がないか確認して
「もう大丈夫ですよ!」
落ち着いたので丁寧に商人風のおっさんに声をかけた。
「いゃ〜お見事!ありがとう御座いました。お陰様で命拾いしました」
「護衛の冒険者の皆様は残念ではありますがいや、貴方を責めてるわけではございません!」
「いえ別に大丈夫ですよ」
「そう仰って頂いて助かります。彼らは我が商会の専属をして頂いていた方達でしたね。まだまだ駆け出しをようやく終えこれからだったという時にこの様な事になって残念です」
「まあ普通の商会では駆け出しを終えたばかりの冒険者を専属にはしないとお思いでしょう、その通りなんですがねまあ駆け出しを雇うとしても信頼できる人の紹介だったり縁がある人達なのでしょうが彼らとはまだ会ってそんなに経ってはいないのですが」
「私が困っている時にたまたま出会い助けて頂いてから、何度か食事を共にしてる内に気に入りましてね。今回辺境都市まで訓練も兼ねて護衛をして頂いていたんですよ」
「勿論辺境ですから危険度も高いですがこれからの糧にもなるとおもいベテラン冒険者を1人雇っていたんですがね」
「まさかハウンドハイウルフまで出てくるとは思いませんでした。私の認識が甘かったばかりに彼らを死なせてしまいました」
「いや、すいませんこんな長話に付き合わせてしまって」
そう言い商人は頭を下げた。
「いえ大丈夫です。そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はユウマと言います」
「これは私とした事が失礼しました。私はアイラ商会会頭のロベルト・ブルーノと申します」
「アイラ商会?」
俺が疑問を口にするとロベルトさんは
「ああアイラとは私の妻の名前でしてね妻の名前を商会名にしたんですよ」
ロベルトさんは照れ気味に答えてくれたその後少し話してわかった事だが、ロベルトさんはかなりの愛妻家らしく
今回の商談も本当は部下の方が行く予定だったのを自分が代わりに行く事にしたらしい、理由はこの先の辺境都市ウラカには女性に人気の高い香水が発売されたそうでそれを聞き自分で調達するためだったそうだ。
「ユウマ殿すまないが辺境都市まで護衛を引き受けてくれないだろうか?」
俺は少し悩んだがここで初めて知り合ったロベルトさんを見捨てるのをなんだしとてもいい人そうだから引き受ける事にした。
「わかりました。引き受けましょう」
「おお!ありがとうございます。」
「荷馬車と彼らは如何します?」
「そうですね。荷馬車の方はもう壊れてしまいましたので此処に棄てて行きます逃げた馬を見つけてこれれば少しは荷物を持てるでしょう。彼らは残念ではありますが此処に置いて行くしかありません」
とても悲しそうにロベルトさんは答えた。
「ロベルトさんはアイテムボックスは使えないのですか?」
疑問に思い聞いてみると
「いえ無理ですねあれは持ってる人は少ないですからね残念ながら私は使えません。代わりと言ってはなんですがアイテムバックは持っては居ますがこうなるとは思いませんでしたのでアイテムバックもアイテムバック(小)しか用意してませんでしたので大半の荷物は棄てて行く事になりますね」
そうなのかアイテムボックスはあまり使える人が少ないのか。何人ぐらいか聞いてみるかな
「因みにアイテムボックスは何人ぐらいが使えるのでしょうか。私は田舎から出てきたばかりのなのでその辺の事情が分からなくて」
「そうですね、アイテムボックスが使える人は1万人に1人の割合の希少スキルらしいですね」
そうなのかこの世界の人口などはわからないが確か設定では地球で言うところの中世あたりらしいから、そんなに人口も多くないだろう。そうなるとアイテムボックスが使える人は大分少ないだろう。どうしよう使える事を教えない方がいいのか?
しかし此処でロベルトさんとはしっかりとした縁を繋いでおきたいしな。この先何があるかわからないからな。よし話すか。
「実はですねロベルトさん私はアイテムボックスが使えますのでもし宜しければ荷物を私のアイテムボックスに入れませんか。あと彼らも入れれるかわかりませんが入れれるなら入れますよ」
ロベルトさんに提案してみると
「本当ですか!ありがとうございます!彼らも死んでしまいましたから入ると思うのでお願いします。先に彼から入れてもらえないでしょうか?荷物の方は入りきらなくても大丈夫なのでお願いします」
ロベルトさんやはり良い人で自分の商品よりも彼らの遺体を優先してくれと頭を下げられた。
「わかりました。多分荷物も大丈夫だと思いますよ」
早速遺体に近づきアイテムボックスにしまったあと荷物のいれまだ余裕があるので、ハウンドウルフとハウンドハイウルフも入れた。
「ありがとうございます。ユウマ殿では馬を探しに行きましょう」
その後そんなに時間がかからずに逃げた馬は見つかった。
「どうどう落ち着け落ち着け良しもう大丈夫だぞ」
ロベルトさん慣れたもんで直ぐに馬を落ち着かせて怪我が無いか確認をした。幸い怪我が無かったようですぐに俺に声をかけてきた。
「馬は見ての通り大丈夫そうなので馬に乗って辺境都市まで行きましょう」
俺は頷いた。
やっと人と出会いました。
次は、ようやく街です