65話〜傭兵ギルド・リパーゼ支部〜
リパーゼの傭兵ギルドはウラカの物よりも一回りほど小さかった。
リパーゼの傭兵ギルドの主な依頼は護衛依頼だ。
魔の森産の物を運ぶ行商人達を安全に目的地まで運ぶのが依頼だ。
クヴァルムは受付に行き近隣の情報を聞く
「すまない」
「はい!ようこそ傭兵ギルド・リパーゼ支部へ。本日はどう言った依頼をお求めですか?」
クヴァルムは現在鎧に身を包んでいる。
その為に依頼を受注しにやって来たとおもわれたのだろう
「いや、依頼は既に受けている。今回はこの街へ初めて来たので周辺の情報が欲しくてね」
「わかりました。そうですね、リパーゼ周辺は草原が広がっていますね。草の長さは大体足首ほどなので見晴らしはよく盗賊などは滅多に出ませんね。この辺りの魔物ですと足が速いウルフ系の魔獣が多いですね。他にはスライムなどもいますが脅威ではないでしょう。それとウルフ系の魔獣にオススメの刺激臭を発するクサーラ草を煮詰めたポーションが御座いますよ。あちらの販売コーナーで売っておりますので是非ご利用下さい」
「ありがとう。助かるよ」
そう言い販売コーナーに向かう。
そこにはクサーラポーションというものが置かれていた。
瓶の中は緑色の液体である。
店員に聞くと臭いの持続時間は蓋を開けてから2時間程もするらしく誤って自身にかかるとなかなか取れないらしいのでセット販売している。
フローラルな香りの香水を一緒に買う事を勧められた。
クヴァルムは試しに2セット購入し傭兵ギルドを後にした。
◆◆◆◆
〈傭兵ギルド受付嬢達の会話〉
「はぁ今日は暇だなぁ〜」
「そうボヤかない」
「何んか今日はお偉い貴族様が来行するらしいから衛兵達がいつもより気合が入ってピリピリしてて疲れるのよねぇ〜」
「それはそうね」
その時休憩から1人の受付嬢が戻って来た。
「あら、おかえり」
「ねえねえ、どうやら貴族様が来たらしいわよ。今は門の所にいるらしいわ。まあ何処の門かは分からなかったけどね」
「へぇそうなんだ」
「何よ、折角仕入れて来たのにその反応は?」
「だってねぇ、私達には正直関係ないじゃない貴族様が態々傭兵ギルドに足をお運びになるわけないし」
「うーん、それはそうだけどお付きの騎士がもしかしたら周辺の情報を聞きに来るかもしれないわよ?」
気だるそうに1人の受付嬢がそう呟いた。
現在の時刻は昼を少し過ぎた頃、この時間帯は依頼を受けに来る傭兵は極端に減るその為に受付は暇なのだ。
「いや、来るとしてももっと下っ端の従者じゃない?」
「それに周辺の事なら領主様が伝えるんじゃない?」
「それもそうね」
「ところがどっこい何と今回の護衛には傭兵が雇われているらしいわよ。冒険者の方はいつもの事としても傭兵を雇うのはその傭兵団は規律が行き届いて身なりも立派って事よ」
つまり何が言いたいかというとこのギルドにも足を運ぶ可能性があり万に一つの可能性だがその者に見初められたら玉の輿になれる可能性もある。
傭兵とは危険も多いが活躍もすれば見返りも多い現にある国では活躍が認められ貴族に叙された。
その為に身なりも良いとなると有名どころだろう。
「ねえ、何処の傭兵団なの?」
「流石にそこまでは…でも見た人達の話を聞くと傭兵団なんていなかったって言ってたけどなぁ」
「どういう事よ、それ?」
「うーん、何でも冒険者っぽい見た目の人達は6人いてそれ以外は色違いの騎士しか、いなかったって言ってたけどなぁ」
「あれ?でもそれっておかしくない?普通貴族の騎士団って装備は統一されてる筈だよ」
「そうなんだよね、何でも銀色の鎧の騎士に純白の白騎士だったらしいよ。それに全員が騎乗してたし」
「って事はどちらかが傭兵団って事?ならその傭兵団は統一した全身鎧を装備できるほど裕福って事?さらには馬まで所有しているなんて」
「でもさ、そんな装備が整っている傭兵団なら有名な筈なんだけどなぁ」
「それもそうね…不思議ね」
3人はそれぞれ憶測を述べ合った。
やれ貴族の子弟で構成された傭兵団。
やれ亡国の騎士の成れの果て
やれ何処かの騎士団が鍛錬のために傭兵をしているなど様々な憶測を3人で語り合った。
「ごほん…3人とも暇なのはわかりますが今は職務中ですよ」
3人が振り返ると上司の男性職員が立っていた。
「「「申し訳ありません」」」
「まあ、以後は気をつけるように」
そう言いその場を離れて行った。
「ふぅ、もっと叱られるかと思ったけど注意だけで済んだね」
「そうね」
「そろそろ、真面目に仕事しないと怒られるわね」
そんな話をしているとまた1人傭兵ギルドに入って来た。
入って来たのは2人の純白の騎士だった。
2人とも整った顔立ちで多分金髪碧眼の者が上位なのだろう。
銀髪緑眼の者は斜め後ろを付き従っているので従者だろう。
そんな美形の2人が現れたのだ女傭兵は熱い視線を向けて男達は嫉妬の視線を浴びせている。
2人はそんな視線など意に返さず堂々と受付へ歩いて来る。
話しかけられたのは先ほど3人で話してた受付嬢の1人だ。
「すまない」
「はい!ようこそ傭兵ギルド・リパーゼ支部へ。本日はどう言った依頼をお求めですか?」
まずは決まり文句を言うが違うだろうな…とは思っていた。
「いや、依頼は既に受けている。今回はこの街へ初めて来たので周辺の情報が欲しくてね」
やはり思った通り先ほど話題に上がった貴族の護衛の者達だ。
「わかりました。そうですね、リパーゼ周辺は草原が広がっていますね。草の長さは大体足首ほどなので見晴らしはよく盗賊などは滅多に出ませんね。この辺りの魔物ですと足が速いウルフ系の魔獣が多いですね。他にはスライムなどもいますが脅威ではないでしょう。それとウルフ系の魔獣にオススメの刺激臭を発するクサーラ草を煮詰めたポーションが御座いますよ。あちらの販売コーナーで売っておりますので是非ご利用下さい」
受付嬢はいつもより丁寧にそして笑顔を顔に貼り付け接客する。
「ありがとう。助かるよ」
そう笑顔で言われて思わず顔が赤くなるが彼はそれに気付かずに販売コーナーに行ってしまった。
もう少し話したかったなと少し残念に思った。
それから2人の白騎士達は販売コーナーでクサーラポーションセットを買い傭兵ギルドから出て行った。
それを見送ってから周りに受付嬢達が集まる。
「あぁ〜良いな話しかけられて」
「見たあの2人の見た目まさに聖騎士って感じね。まあ、聖王国の聖騎士より断然彼らの方が良いわ」
聖王国の騎士団は聖騎士と呼ばれる光魔法と剣の使い手達だ。
だが西方諸国からは彼らは蛇蝎の如く嫌われている。
それもその筈ルパメント聖王国は人間至上主義国の中でも特に苛烈で知られオルトメルガ王国など西方諸国を亜人を囲う劣等諸国と、声高に叫び彼らは邪教徒と蔑む国だ。
なので西方諸国の不倶戴天の敵国だ。
彼らに滅ばされ西方諸国の国は悲惨な目にあう。
亜人と呼ばれる者やその家族はみな拷問された後に殺され人族も亜人が配偶者にいれば同様に処され、そうではない者達も皆奴隷落ちされ日々酷使される。
その為に西方諸国はルパメント聖王国こそが邪教の国と断罪し争っている。
更にこの度は勇者を独断で召喚すると言う暴挙に出た。
同じく北方に位置するラガシール皇国も勇者召喚を行なった。
彼の国はエルフ種の国で人間を下等生物と断じている国で今回は同じ人族である勇者を召喚し、その類稀なる魔法を持って勇者を傀儡とし人族の国へと侵攻の最前線に立たせて戦わせている。
これには各国も非難声明を出すが悉くこれを無視される。
その為に経済制裁を加えようとしたがかの国は自給自足な生活の為に意味がなくその国土の大半を森林に覆われている為に何処から出陣するかもわからず侵攻しようにも自然の要害が立ちはだかる為に容易にはいかない。
「それはそうよね」
とその後も談笑していると上司がやって来てコッテリと説教されるはめになった。