62話〜白髪の猛将〜
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ルーセント城に戻った。
そこでラインバック騎士団長から「出発は明後日の明朝だ、それまではゆっくりすると良い」
「わかりました。ではこれで失礼します」
「ああ、ではな」
クヴァルムからユウマへと戻ると宿に向かう。
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宿の女将のエレスさんに娘のミアそして旦那さんのアンソンさんに王都へ行くことを告げて明日宿を引き払う事を伝えた。
「そうかい、わかったよさびしくなるねぇ」
「ええ、またウラカに来た時は了解させてもらいますよ」
「何言ってんだい?あんたはCランクになったんだよ?ならもっと良い宿に泊まるべきだよ。そうすると下のランクの者達の希望になるんだからさ」
「わかりました。でも時々は寄らせてもらいますよ」
「そうしな。楽しみにしとくよ」
「ユウマさん行くんですね。また戻って来て下さいね」
「ありがとう。またウラカに戻って来るよ」
「うん♪」
「また来な」
「ええ、食事美味しかったですよ」
「ふっそうか」
相変わらずアンソンさんは無口だなぁ〜と思いながらも部屋に戻った。
次の日は薬草の採取依頼や常時依頼の討伐依頼などをこなして少しでも経験を積む事にした。
それに急激にレベルが上がったので体を慣らして最適な動きに調節して行く。
そして昼に宿を引き払いウラカの外へ出る。
ウラカからある程度離れた森の中へ入りそこでクヴァルムにチェンジする。
そしてウラカへと入ると近場の宿に入り部屋を取る。
周りからの視線が凄いので鎧を脱ぎ街へと繰り出す。
♢
傭兵ギルドの訓練場に足を運んだ。
中には訓練している傭兵達が居る。
どうやら昨日鎧姿だったので自分が昨日登録した者だとは皆思ってないようだ。
素振りでもするかなっと模擬刀が置いてある場所まで行くと年嵩の傭兵が声をかけて来た。
「ん?おめぇさん見ない顔だな新米か?」
「ああ、昨日登録したばかりの者だ」
その言葉遣いに近くの若い14、5歳ぐらいの傭兵が食ってかかる。
「おい、お前ドーベルさんに何て口の聞き方だ!この人は俺達【漣の灯り】団団長だぞ!新入りが生意気な口を聞いて良い人じゃねえ!」
「おい、トム良い」
「でも!」
「トム!」
「わかりました」
此方をひと睨みしてから訓練にトムは戻った。
「すまねぇな悪い奴じゃないんだがどうも俺の事を英雄か何かだと思ってるようでな」
「いや、それほどドーベル殿の事を尊敬しているのだろうよ羨ましい限りだ。申し遅れたが私はクヴァルム・ドゥーエと言う。以後お見知り置きを」
クヴァルムの時は口調を少し尊大にしている。
「ほう、というと昨日の純白の騎士様かい?」
「止してくれ純白の騎士様だなんてしがない一傭兵に過ぎないよ」
「まあ、でもしょうがあるめいあんな見事な武装をしてると高名な騎士様だと皆思うってもんよ」
「そういうものかね?あの鎧は譲り受けた物なのだがね」
「ほう?誰からか聞いても」
目を若干鋭くし問いかけて来る。
戯けるように肩をすくめ
「ご想像にお任せするよ」
「ふっそういう事にしとくよ。俺も藪をつついてドラゴンに出られたらたまったものじゃあないしな」
藪をつついて蛇と同じ意味かな?
「そうか」
「ところで此処へ来たんだ訓練するんだろ?良かったら俺とお手合わせしないかね」
挑発的にドーベルは言ってきた。
「良かろう、その挑戦受けて立つ」
そう言い2人は模擬刀を取り相対した。
距離はおおよそ10m程だ。
周りの傭兵からも注目を集める何せ片やこの世界の重鎮の1人である〈白髪の猛将〉の異名を持つドーベルと無名の新人の訓練とはいえ一騎打ちだ。
自然と周りに人が集まるものだ。
クヴァルムはドーベルのステータスを見てみる。
ーステータスー
名前:ドーベル・マイース
職業:戦士(レイピア使い)
レベル:68
種族:人族
性別:男
年齢:56
体力:32505/32505
魔力:27542/27542
筋力:26254
耐久:20623
敏捷:29065
精神:30012
器用:24523
-スキル-
刺突術LV32
剣術Lv29 格闘Lv24
盾術Lv20 弓術LV12
水魔法LV23 斧術LV9
馬術LV21 遠見LV13
気配察知LV25
危険察知LV16
罠発見LV14
軍団指揮LV28
生活魔法Lv6
身体強化Lv19
-固有スキル-
予見LV14 対魔法LV8
魔法切りLV17
-称号-
白髪の猛将 漣の灯り団団長
歴戦の戦士
今まで会って来た人物で多分一番高いステータス保持者だな。
額を一筋の汗が流れる。
それに対して此方のステータスは
ーステータスー
名前:クヴァルム・ドゥーエ
職業:騎士
レベル:40
種族:人族
性別:男
年齢:23
体力:10572/10572
魔力:12654/12654
筋力:10092
耐久:9652
敏捷:7254
精神:6542
器用:7542
-スキル-
剣術LV10 格闘LV7
盾術LV4 馬術LV5
雷魔法LV12
風魔法LV9
-固有スキル-
なし
-称号-
なし
ユウマの方のステータスよりは少し低くなりスキルの数も絞り称号と固有スキルを外してはいるがそれでも大分開きがある。
♢
相手は待っていても動きそうにないので此方から仕掛ける。
地面を全力で蹴りドーベルへと突きを繰り出す。
周りの者はそのスピードに驚き目を見開いているが対するドーベルは冷静沈着に突きの軌道を見切り刀身に少し剣を当て軌道を逸らす。
クヴァルムは予めこうなる事を予測しておりそのづれた突きから足を止め流れる様に横に剣を一閃させる、がそれも読まれており剣を斜めにされ勢いを逸らされ腹に膝蹴りを喰らった。
咄嗟に後ろに飛んでいたお陰である程度は威力を減衰させたがそれにしても強烈な膝蹴りだった。
「ほう、良く今のを耐えたな。感心感心最近の若い者は骨が無かったが久しぶりに良いもんを見つけたわいガッハッハ!」
一頻り笑い終わった所で顔を鋭くし今度はドーベルから仕掛けて来た。
それを必死に捌くが全てを捌ききれず擦り傷が増えていく。
防戦一方だがクヴァルムは反撃のチャンスをひたすら待つ。
遂にその時が来た!
ドーベルの猛攻が止んで一息息を吐いた瞬間を狙い胴に薙ぎ払いの一撃をお見舞いした。
防がれたが少し体調を崩したドーベルの左頬に右ストレートを叩き込んだ。
それと同時にクヴァルムは地面へ倒れ込んだ。
「ふぅ今のは効いたぞ、中々良い一撃じゃぁたわ」
その言葉に周りの男達は雄叫びに近い歓声を上げた。
それ程に今の闘いは見応えのあるものだった。
クヴァルムとドーベルの元へ傭兵ギルド備え付きの治癒士がやって来て2人の傷を癒す。
クヴァルムは治癒士にお礼を言いドーベルに向き直り。
「手合わせ感謝する」と一礼した。
「儂も久し振りに良い運動になったわい」
「そう言えば気になっていたんだがその老人口調は何だ?最初話しかけて来た時と口調が変わってるぞ」
「おりょそうかの?まあ気にしなさんな」
「まあ、良いか」
何処と無く不思議な感じの人だなと思った。
捕らへどころがなくそれでいて確かに此処にいるという存在感を併せ持つ人だ。
「では、私はそろそろ宿に戻るとするよ」
「そうかの?明日も来るのかい?」
「いや、明日は依頼で王都までの護衛があるので暫くはウラカを離れる事になるよ」
「そうかい、お主の様な面白い男と久し振りに出会ったんでもう少し手合わせしたかったんだがな」
「勘弁してくれ、私の身が持たんよ」
フフッと笑う
「まあ、儂らも遠征の影響が落ち着いて来たのでな、そろそろ新たな仕事探しに動こうかと思っとった所だ。此方も王都へと行ってみるかな」
「ではまた王都で…だな」
「そうなるかいの…おい!トム!」
「は、はい…何でしょうか?」
「ほれ、言うこう事があるだろう」
ドーベルに促されトムはおずおずと話し出した。
「あ、あの…さっきは…その…すいませんでした!」
そう言い深々と頭を下げる。
「何気にしてないよ、それに確かに私の方が礼儀を欠いた行動だった。此方こそすまない」
そう言い此方も頭を下げる
「ならこれで和解かの?」
「ええ、そうですね」
「は、はい!ありがとうございます!」
もう一度トムは頭を下げた。
「ではもう私は行くよ」
「はいよ、元気でな」
「そっちこそ息災でな」
そうしてクヴァルムは訓練場を去る。
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後に残された傭兵達は興奮したまま先ほどの闘いについて熱く語り合い。
上の酒場で観ていなかった他の傭兵仲間に自慢気に話し次第にこの話が広がっていき。
周囲からは期待のルーキー現ると言われ始めた。
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