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ゴーレム使い  作者: 灰色 人生
第2章〜王都へ〜
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61話〜傭兵登録〜

 

 ♦︎


 傭兵ギルドは冒険者ギルドと並ぶ五大ギルドの1つだ他に商業ギルド、鍛治師ギルド、魔術師ギルドが存在する。


 遥か昔傭兵ギルドと冒険者ギルド、商業ギルドは1つの組織だったが構成員の人数が増えるに従って組織構造が複雑化し過ぎた為に内部分裂が起きて今は3つの組織に別れた。


 傭兵ギルドと冒険者ギルドの最大の違いは相手にするのが魔物か人かの違いだ。


 まあ、兼任する時もあるが大体は魔物と人で住み分けが行われているのであまりトラブルは起きては居ない。


 基本的に旅の護衛なら冒険者が雇われる事が多いその理由が魔物が蔓延る地域が多く盗賊などより魔物に出会う確率の方が高くなる為だ。


 しかし要人の警護に雇われるのは傭兵が多い。


 更にそこに冒険者数名が加わる。



 傭兵が、一番雇われる理由はズバリ紛争や戦争などの争いだ。


 現在この国オルトメルガ王国は隣国のラーバント帝国と緊迫した状況下になりつつある為に多数の傭兵がこの国に集まり出している。


 後は南方のバハンタールに冒険者と傭兵が集まっている。


 国ごとに冒険者ギルドと傭兵ギルドは少し特色が変わるが概ねは一緒なので移動しやすいという要因もある。


 結局何が言いたいかというと冒険者ギルドと傭兵ギルドはあまり変わらないという事だ。


 建物もギルドを表す看板の紋章と建物の色が違うくらいであまり大差はないこれは元が同じ組織の名残でもある。



 ♢



 そしてラインバック騎士団長と2人で連れ添って傭兵ギルドを訪れた。


 中に入ると傭兵達の視線が集まる。


 それも無理からぬ事だろうただでさえ傭兵達は自分と肩を並べる存在の事は気になるしかもそれが見た事もない人物だと余計にだろう。


 冒険者にもこれが当てはまる。


 当然だろう何せ自分の命が掛かるのだから、信用出来ない人物に自分の背中は預けられないだろう。


 後ろから刺されたらたまったものではない。


 なのでこういう場では相手を隅から隅まで観察し、腕は立つか信用出来るかを見定める場とも言える。


 しかも現れたのがこのウラカの領主の騎士団である所の団長のラインバックと見事な鎧に身を包んだ男だ。


 隣接した酒場に飲みに来ただけの傭兵でも無い、男達の視線も自然と集まるだろう。


 そんな視線を異に返さず颯爽と歩くその姿に見惚れてる者もいる。


 特に受付嬢達は良質の物件の登場に色めき立つ。



 こういう世界の男達は上に行くほど金と権力に結びつきやすい為にその横のポジションに納まろうとする者も存在する。


 受付嬢も一応は公平な存在として接するがそこはやはり人間の性だろう。


 見るからに見すぼらしい外見の者と立派な仕立ての服装をしている者を見比べるとどうしても立派仕立ての服装をしている方を贔屓してしまうだろう。


 まあ、中には清廉潔白な人物もいるだろうが極小だろう。


 それに全身甲冑(フルプレートメイル)を着ているだけでその人物の評価が上がる。


 言うまでもなく鎧とは高い者だそれを揃える事が出来るのも一種のステータスになる。


 中には自分の好みなどで革鎧などの装備しかしない者もいるがそれも極小だろう。


 そして全身甲冑(フルプレートメイル)はその中でも高位の防具だ。


 それに見るからに高価そうな各種の装備に意匠をしている事から貴族の嫡男かはたまた高名な騎士様だと想像するだろう。


 だが此処で疑問が出てくるそんな者なら何故傭兵ギルドに来るのだろう?依頼の発注だろうか?それなら納得も出来る。


 仮に貴族の嫡男か騎士でもなければあんな見事な鎧を装備出来ないだろう。


 仮に出来る人物だとしても普通は軍か貴族の私兵に士官しそうな者だ。



 だが次の瞬間驚く事がラインバック騎士団長の口から放たれた。


「この者の傭兵登録をお願いする」


 まさかあの者が傭兵登録するとはまさか修行の為かなど近くの者や仲間と話し合う。


 そしてまだ何処に入団するかチームを組むか決めて無いのなら早速勧誘しようとラインバック騎士団長と受付嬢の話が終わり手続きが完了するのを今か今かと皆固唾を呑んで見守ったが次に放たれた言葉で皆諦める。


「そしてこの者を団長に新たな傭兵団の登録も頼む」


 つまりもう決まった団があると言う事だ。


 そしてソロの傭兵や少数のチームは新たな団に入団するかと考え傭兵団を率いる団長や傭兵団に所属する傭兵達は彼の者の傭兵団と知己になるか悩む。


 まだ出来立ての傭兵団ならその練度等は気になるがあの見事な仕立ての鎧に騎士団長とも知己らしい人物だ。


 金回りは良さそうに見えるが下手に接触して怒らせたらもしかしたらいや、もしかしなくても辺境伯に睨まれるだろうそうするとこの東方では仕事がし難くなるだろう。


 何せこの街の支配者である領主のルーセント辺境伯はこの東方の盟主的立ち位置だ。



 同じ東方にも公爵家や侯爵家など高位の貴族家も存在するがそういった家はちゃんとした私兵を持っている為に傭兵が雇われる事は無い。


 雇われるとしたら大体が子爵家以下の貴族家だろう。


 そしてそんな弱小貴族等は寄親である貴族家にある程度譲歩しなければならず寄親に睨まれた傭兵団はその地域では商売上がったりになる。


 そしてルーセント辺境伯家は隣に魔の森という危険地帯が存在する為にこの国でも重要な立ち位置の貴族家になる。


 そして魔の森は資源の宝庫でもある為に冒険者や傭兵が多数集まる地域でもある。


 冒険者ならわかるが何故傭兵も…と思うかも知れないがそれは警備として雇われるからである。


 傭兵は争いがなければ活躍の機会が無くそうなれば金が稼げない。


 そうなれば傭兵団なら解散の危機にもなるがこの魔の森の警備は常時募集しており普段なら警戒するだけの簡単な仕事として知られる。


 この間の遠征などの非常時は本当に忙しくなるが基本は平凡で暇な役職だ。


 だが気は抜けない万が一があるし時折魔の森から魔物が出て来る為にその対処なども契約に含まれている為だ。



 そして安定した仕事があると傭兵は集まりやすい。


 その為にルーセント辺境伯に睨まれると非常に辛い立場になる為に迂闊に現れた純白の騎士に話し掛けられない。



 そうこうしているうちに手続きが終わり何やら騎士団長が依頼を出してそれを純白の騎士が受けるらしい。



 そして用が済んだら2人は此方に一瞥もくれずに出口へと向かう。



 そして2人の姿が完全に見えなくなった後受付に殺到してどんな人物やどんな依頼を受けたのか矢継ぎ早に質問を担当した受付嬢に繰り出す。


 受付嬢は、困惑して上司に助けを求める。


 上司がやってきてこの騒ぎを何とか治めてくれたがまだ興奮冷めやらぬのか仲間同士で色々な憶測を彼方此方で話し合っている。



 受付嬢はそんな様子を見て「はぁ」と1つ溜息を漏らしてから通常通りの業務に戻る。





 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

 〈受付嬢との会話〉


「この者の傭兵登録をお願いする」


 受付嬢は笑顔で対応する。


「はい、畏まりました。では此方に記入をお願いします。もし代筆がご所望でしたらお申し出下さい」


 代筆が必要かと聞いたが必要ないだろうとは受付嬢は思ったが規則通りの謳い文句を言う。


 時々見た目は立派でも代筆が必要な者も来たりする為だ。



 受付嬢の思った通り純白の騎士は淀みなくスラスラと記入していく。



「はい、ありがとうございます。クヴァルム・ドゥーエ様ですね」


「ああ」


 何て爽やかで美しい声だろうきっとその兜の下も綺麗なんだろうな〜と受付嬢は思ったが決して顔には出さずに対応する。


 彼女もこの道のプロであるのだからこの程度出来なくてはこなせない。


「それとこれを辺境伯様からの紹介状だ」


 これには予想していたとしても流石の受付嬢も驚く。


 ルーセント辺境伯は大変人物評価が厳しく例え自派閥、自分の子息でも実力が無いと推薦状である紹介状は決して書かないだろう。


 つまり目の前にいるこの人物はルーセント辺境伯に認められた一握りの内の1人と言う事だ。


 これには受付嬢の目にも欲望の火が灯る。


 こんな優良物件逃してたまるもんですか…としかしこの場には騎士団長も居るので食事に誘ったりするのは難易度が高いその為に次も自分の受付に来てもらえるように誘導するのが正解だろう。


「畏まりました。……確かに辺境伯様の紹介状でございますね」


「それと申し遅れましたが本日受付を担当しましたソレイユと申します。次回のご利用の際も是非私をご指名頂けますとこれほどの名誉は御座いません。どうぞよろしくお願いします」


「ああ、わかったではそうしよう」


 この言葉にソレイユは心の中でガッツポーズをしてよっしゃぁぁと叫び出したい衝動に駆られたが流石それをしてしまうとドン引きされるので自制した。


 ソレイユは緑の髪をボブカットにしており同じく緑色の瞳は柔和な表情を作り出しており親しみやすい。


 胸も大きく机の上に自然と乗っかっている程だ。


「ありがとうございます。それとこれにて傭兵登録終了しました。此方がギルドカードになりますので失くさない様にお願いします。

 再発行には手数料がかかりますので悪しからずお願い申し上げます」


「ああ、了解したありがとう」


「いえいえとんでも御座いません」と心の底からの笑顔をする。


 すると「素敵な笑顔だ」と言われて飛び上がる程嬉しい感じた。


 チラリと横を見ると他の受付嬢が嫉しそうに此方を見ていた。


 後で大変だなぁと思ったが今はそんな事どうでも良かった。


「そしてこの者を団長に新たな傭兵団の登録も頼む」


「畏まりました。では規模と団名と団の紋章をお願いします。もしまだ作成できていなければ出来るだけ早くの登録をお勧めします」


「ああ、了解だ。それとその心配には及ばないちゃんと用意しているさ」


 少しだけソレイユは残念に思ったもしまだならまた来てくれると思ったがそれはしょうがないか…と諦めた。


「規模は私を入れて51た…失礼51名だ。

 そして団名は黒鴉とこれが紋章だ」


「確かに確認しました。復唱させて頂きます。団長はクヴァルム・ドゥーエ様、規模は51名に団名は黒鴉…と間違い御座いませんか?」


「ああ、間違いないでは少々お待ちくださいませ」


 ♦︎




 10分程すると受付嬢が戻ってきてその手にはトレイがありその上に51名分のギルドカードが乗せられていた。


「此方が傭兵団黒鴉様達のギルドカードになりますのでお確かめ下さい」


 二、三枚手に取り「確かに確認した。ありがとう」


「いえ、これで登録は完了ですね。他に何か御座いますでしょうか?」


「ああ、傭兵団黒鴉に依頼をしたい」

 そう言いラインバック騎士団長の懐から一枚の羊皮紙が渡された。


「王都までの護衛依頼ですね。畏まりました」



 その後団名であるクヴァルムのギルドカードに何やら判が押されると他の黒鴉のメンバーのギルドカードにも同じ判が浮かび上がった。


「これで登録は完了しました」


「ありがとう、これで用は全て済んだよではな」


 そう言い2人はギルドを後にした。



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