56話〜次なる目的地は〜
新章です。
ウラカに戻ってから数日が過ぎた。
その間に様々な出来事が起こっていたが特に話題になったのが以下の通りだ。
大陸中央部のルパメント聖王国とラガシール皇国の二国が勇者召喚を実行し見事に成功させた様だ。
だがこれには各国が猛反発した何せ勇者召喚には代償があり更に条約では人類の危機にのみに発動を大陸会議にて決議する。ーと明記されているのだから。
大陸会議とは人類の危機に大陸各国が集まり軍事同盟等をしてそれに立ち向かう為の組織だ。
まあ、それは此処数百年起きてはいないが。
他の話題は先の遠征で犠牲を出したオルトメルガ王国を見て隣国のラーバント帝国が国境付近に軍事演習と言う名目の元に兵を集結させた。
これを見て王国側は国境砦に多数の増援をしこれに備えた。
王国側の迅速な対応に帝国側は演習を軽くした後に解散した。
暫く王国側は様子見をした後に増援した部隊を順次元の駐屯地に戻した。
この他に南のバハンタール公国に遂に各国が武力介入し内乱をしている両公爵に停戦をさせ魔物の対処に当たった。
他にも細かいものは、いくつかあるが目ぼしいものは以上の三点であろう。
この中でまず一番気になったのは勇者だ、此処は当初ゲームの中だと思っていたがもしかして違うのか?と疑念が生まれた。
それともこれはイベントの一種なのか?ーとそこで情報収集の為にも王都へ行こうと決めた。
この国の首都だウラカより多くの情報があるだろうと考えて、その前にデリアとドリスにこの後どうするのか聞きに2人が泊まっている宿屋に向かった。
コンコン
「ユウマです。デリアさんドリスさんいらっしゃいますか?」
「居るわよ、どうぞ」
入室許可が出たので扉を開けて中に入る。
「2人とも荷物を纏めて何処かに行くのですか?」
「ええ、ドリスは冒険者を辞めて教会本部勤めになるそうよ」
「はい、ユウマさんが下ったこの神聖属性が付与された杖のおかげと遠征に参加して生き残った事を評価されまして、初めは司祭になり経験を積んだら司教、大司教へと昇格する予定です」
「で、私は一旦故郷の里へ帰って一から鍛え直しに戻るわ」
「そうなんですか、自分は王都へ行こうかと思っているので此処でお別れですね」
「そうね…まあ、これが今生の別れとは限らないしまた会いましょう!」
「そうですよ!また会えますよ!」
「そうですね、では最後に食事でもどうですか?」
「そうね、行きましょう」
「わかりました」
その後3人は再会を祈って高級レストランで食事をした。
その後まずドリスが教会からの迎えが来て場所で一路教会本部がある、セイルン教国へと旅立った。
次にデリアは高速馬車に乗り故郷がある西へと旅立った。
残ったユウマはまずは食料と野営道具等この先必要になる物を買いに商業地区へと向かう。
ウラカは幾つかの地区に分かれている。
ウラカには外壁と内壁の2つに分かれていて外壁は立派で魔物用だが内壁は人間用で高さは5m厚さ30cm程だ。
内壁は富裕層や大手商会それに貴族邸がある。
こちらの地区は警備が厳重で常に衛兵が巡回している。
門には門番が常時8名が詰めて入り中に入るには内壁内の者の同伴か許可証が必要だ。
その為に大手商会は中は私邸で外壁内に店を構えている。
外壁内には全部で5つの地区に分かれている。
西門のある場所は住居地区でこの街の住人が住んでいる。
この地区に冒険者ギルドが置かれている。
次に南門のある方角は商業地区、様々な商会が店を構えている。
北門の方角は職人地区、様々な職人が日夜切磋琢磨している。
そして魔の森がある東門は宿場地区で冒険者や旅人、行商人が利用する宿屋、屋台、雑貨屋などが揃っている。
この地区に冒険者ギルドも置かれている。
そして宿場地区と商業地区の間の小さな場所が貧民街と呼ばれる地区だ。
此処には犯罪者や浮浪者が集まり出来た地区だ。
倒産した宿屋や店を勝手に占拠し始めて出来上がった。
当然衛兵が巡回したりするがこの地区の者は狡猾で中々尻尾を掴ませない。
辺境伯の悩みの種の1つだ。
そしてユウマがやって来たのは商業地区だ先ずはアイラ商会にやって来た。
先ずは支店長のブライアンさんに挨拶をした。
そうしたら無事の帰還を喜ばれ商品を値引きして貰った。
お礼を言い必要な分だけ買い次は武器の新調に向かった。
「ハウリさーん!いらっしゃいますか?」
「むっ!その声はユウマじゃないか!?無事だったのか?」
そう言うや奥からハウリさんが飛び出して来た。
正直筋肉隆々でヒゲモジャのドワーフが槌を片手に走って来るのは結構迫力があって怖いな…っと思ったが何とか顔には出さなかった。
(心配してくれてる相手に流石に失礼だろうからな)
こんな事を考えている時点で十分に失礼だと、ユウマは気付かなかった。
それからハウリはユウマの身体を上から下まで見て「うむ、五体満足だな」と言った。
「ええ、何とか無事です」
「今日はちょっと武具の手入れをお願いします」
「おう、見せてみろ」
腰に下げていたロングソードを渡す。
ハウリは鞘から引き抜き一目見て
「うーむ、これは駄目だな芯にヒビが入ってやがる」
「買い換えるしかないなこりゃ」
「そうですか、残念ですこいつのお陰で何とか命拾いしましたからね」
「まあ、そこまで愛着を持たれると職人冥利に尽きるってもんだ、よし特別に材料があればタダで一振り打ってやるよ、無ければまあ、値引きしてやる」
まさかドワーフの口から値引きが出るとは、ドワーフには絶対に値段交渉をしてはならないと暗黙の了解がある。
彼らは自らの作る物に誇りを持っている為に値引き交渉しよう者なら、これにはそんな価値は無いと言っているものだ。
なので絶対にしてはならないが相手から言うのは問題が無いらしい。
「あ、ありがとうございます実は魔の森で希少な鉱石を見つけたのでこれでお願いします」
出したのはミスリルだ、勿論これは例の遺跡で見つけた物だ。
ハウリは目を見開いてミスリルを見つめた。
「ほぅこりゃミスリルじゃねえかしかも純度も高そうだな」
「これをロングソードにお願いします」
「おう任せとけ、そうだな二、三日したら取りに来い」
言うが早いかハウリは工房の方へと足早に向かって行った。
それを見たユウマは思わず苦笑した。
店員も「親方が忙しなくてすいませんねぇ」と苦笑気味に頭を下げて来た。
ユウマは「全然大丈夫ですよ、それより防具の方を見ても宜しいですか?」
「勿論です、本日はどの様な物をご所望ですか?」
店員は人族の男性だ見た所弟子の様だ。
前にロベルトさんに聞いた所ハウリは弟子が3人いて1人は店番もう1人は工房で槌を振るい、もう1人は良質な鉱山が見つかった為にハウリの命で確認しにそして良ければ手に入れに出かけたらしい。
「そうですね、次は王都へ行こうかと思っているんですが何かオススメってありますか?」
「そうですね、王都迄は結構な距離がありますので軽めの方が良いですね、それに王都近郊は定期的に王都所属の格騎士団が魔物を討伐しに巡回してますから比較的安全ですので、そこまで凶暴な魔物は出ないので軽くて丈夫なこちらの物はどうでしょうか?」
差し出されたのは黒のジャケットと黒のズボンに黒のブーツと黒づくめだ。
「こちらのジャケットはブラックウルフの皮で出来ておりましてとても軽くそして斬撃等にとても強くなっております。そしてこちらのズボンは黒大蜥蜴の皮を使用しておりまして今の時期ですと涼しくて快適かと思います。更に黒大蜥蜴は火に強く大変燃えにくくなっております。最後にこちらのブーツは底に薄い鉄板を使用して下からの攻撃をある程度防いでくれます。以上になりますがいかがでしょうか?」
「では、それを下さいあとはこれとこれと、あとそれも」と他にも幾つかの武具を買った。
「〜〜以上で合計金貨5枚と銀貨35枚になります」
「はい、丁度頂きました。またのお越しをお待ちしております、ありがとう御座いました」
ユウマは魔の森の遠征で金貨20枚と銀貨50枚を報酬として受け取った。
また、後で知ったのだが冒険者カードはクレジットカードの役割も持っており銀行にお金を預けるとそこから引き落としになる様だ。
今回は偶々手持ちがあったのでそれで購入した。
他にも商人カード等も同じく利用できる様だ。
その為に街に住む住人も冒険者に登録する人が後を絶たなかったのでギルドは新たに枠を設けてHランクを作った。
このランクはカードを利用する為だけの為の物で冒険者とは見なされない。
その為に殆どの住人が利用している。
一応年齢制限があり10歳以上ではないと作れないらしいこれはあまりに幼いと失くす者が多い為である。
冒険者カードもタダでは無いのだ。
次に向かったのが魔道具店だ、正直古代文明の物の方が優れているがこれはこれで面白いのや遺跡ではなかった物を発見できるかもしれないからだ。
一通り見て回ったがどれもこれも古代文明の劣化版もいいところだ。
だが1つだけ面白いのがあったと言うか現代で言うところのカラーリングの様な物だ。
それは見た目はヘヤピンでそこに魔力を込めるとヘヤピンと同じ色に変わるらしい。
全部で7色あるがどれも金貨2枚と高い。
まあ、買わないがな
その後宿に戻り眠りについた。
明日は久しぶりにギルドに顔でも出して王都方面の依頼がないか見てみるか。