49話
-翌朝-
まだ薄暗い時間にユウマは起きテントから出て周囲を伺う。
何も問題はなさそうである。
一応ミノタウロスから報告を聞く事にする。
「何か以上はあったか?」
「イエ、ナニモモンダイハアリマセン」
ダミ声で不快だがそれでもまだ話せるだけ助かる。
他の召喚獣達は下位の為話せず知能も低いので簡単な事しか命令出来ない。
「そうか、引き続き警戒を頼むよ」
「ワカリマシタ」
そう言いミノタウロスは元の持ち場へと戻っていく。
ユウマは泉まで歩き手で水を掬い顔を洗う。
その後2人が起き出す前に軽く剣を素振りして形稽古をする。
今回の遠征で自分の未熟さを痛感しもっと自分が強くならないと近しい人を救えないと分かり、鍛錬にも身が入る。
鍛錬をしているとどうやら大分時間が経ったようでドリスとデリアも起きてきた。
「おはようございますユウマさん」
「おはよう…ユウマ…昨日はその……迷惑かけたわね」
「…ごめんなさい」
デリアはどうやら一晩寝て正気を取り戻したようだ。
「おはようございます。ドリス、デリアさん」
「昨日の事は気にしてませんよ」
「…そう」
デリアはそう言い恥ずかしいのかそっぽを向き泉の方に顔を洗いに歩き出すそれをドリスは微笑ましそうに笑後に続く。
俺も泉に向かい汗を流す。
その後アイテムボックスからスープを出しそれにパンを浸して食べる。
「これから、どうしますか?」
「ここから魔の森を抜けるにはどれくらいかかるかわかりませんし、その方角も太陽の位置からして多分あちらの方だとは思いますが確信が持てませんね」
「どれくらいかかるかわからないし、ここは魔の森だからしっかりと準備しないと危ないわね、でも準備しようにもここには食べ物と飲み物以外何もないからね〜」
3人で顔を突き合わせ考えるが良い考えが中々浮かばない。
取り敢えず周辺の事を調べる事にした。
ドリスは神聖魔法で魔物が襲って来ないように軽い結界を張りに泉の外周に向かい、デリアは精霊魔法で精霊に周りを偵察するように頼むと言い呼ぶ準備をする。
俺は鳥を数羽使役で操り周辺の探索へそれとバードゴーレムを数体作り他に遠征軍の生き残りが居ないか探しに行かせる。
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エトワール達は必死に非戦闘を護衛しながら魔の森の出口に向かって走っていたが遂に追いつかれ周りを囲まれていた。
「…団長」
「皆、覚悟を決めろ一体でも多くの魔物を斬り伏せろ!」
そう言い「突撃!」と叫ぶ前に魔物の集団に多数の魔法と矢が炸裂した。
何事かと飛んで来た方向を見るとそこにはウラカからやってきた救援部隊の姿があった。
「突撃ぃぃ!!」
と聞こえ男達が「「「オォォ!!」」」と叫びながら突撃して来た。
先頭を走ってきた集団と魔物の集団が激突し魔物は瞬く間に殲滅されていく。
エトワールも「我らも行くぞ!」と号令をかけ魔物に突撃する。
その後数十分で追いかけて来た魔物約1000匹が殲滅されて漸く一息がつく。
エトワールの元へジルロが歩いてくる。
「大丈夫かの団長殿?」
「これはジルロ殿お陰様で助かりました!ありがとうございます」
エトワールは深々とジルロに頭を下げ周りの騎士や兵士もそれに続いて頭を下げた。
「なんのなんの当然の事をしたまでじゃ」
「グンナイ負傷者の手当てをさせよ、動けぬ者は荷台に乗せ歩ける者はそのまま出口まで護送せよ」
「わかりました」
グンナイは一礼して素早く動き出す。
ジルロはエトワールに向き直り
「無事で何よりじゃ」
朗らかな笑みで話かけるその後顔をキリッと引き締めて
「して、他の遠征軍の者達は?」
「それは…わかりませんし我々も逃げるのに必死で他の者の事は……」
エトワールは悔しさで手を血が滴る程握り締めた。
その後何が起こったのか一通りの事を話した。
「そうか、その様な事が……して、エラキスのアホタレはどうなった?」
普通は貴族にこの様な言い方をしたら不敬罪に当たるが誰も気にした風な事もなく寧ろその程度といった態度である。
「ええ、奴は真っ先に砦に逃げ込みました。頑丈に作ったとはいえ、あまり長くは持ちますまいそれに奴の事です転移石でもうとっくに逃げ延びてるでしょうよ」
転移石とは離れた場所に移動できる魔道具である。
しかし、制限あり1日目一回しか使用できず移動できる場所はあらかじめ魔法陣を描いた場所のみで使用すれば1週間は期間を開けないと再び使用出来ない。
「そうじゃろうな、彼奴の事じゃもう逃げているだろうな」
「まあ、生き延びた所で奴に待つのは死罪じゃろうがな」
その言葉に周りも当然と頷く。
この無謀な遠征計画を立てたのは貴族派でエラキスはその派閥の重鎮の1人で今回は手柄欲しさに自ら指揮官を勝手で出来たのだ。
「お主はどうする?儂等はこのまま進み他に生存者が居ないか確かめに奥へと行くが?」
「お供させて下さい残して来た部下がまだ生きているかもしれません!それに死んでいたとしても彼等の亡骸をあんな場所に捨てては置けません」
ジルロは暫く考えた後「よかろう、ついて参れただしまともに動ける者だけじゃぞ」
「わかりました、ありがとうございます」
エトワールは深々とジルロに頭を下げる。
こうでも言わないと怪我をしている騎士もついて来るだろうからだ。
その後救援部隊を再編成して魔の森の奥砦跡を目指して進む。




