45話
ゴーレムが作った退路を走り前を向くと、先頭のゴーレムがどうやら魔物の包囲網を突破したようだ。
抜けたゴーレムはその場で反転して退路の維持に努める。
俺は走る速度を上げ一気に駆け抜ける。
魔物の包囲網から抜け出しそこで初めて後ろを振り返ると先程までいた場所は凄惨な場へと変わり果てていた。
魔族達に冒険者が嬲り殺しにされ、魔物に生きたまま喰われたりととても目も当てられない光景になっていた。
俺はケンタウロスゴーレムを8体出し一体に一人一人乗りその場を後にした。
残したミノタウロスに出来るだけ追手の数を減らす様に命じて……。
それからどれ位走っただろうか?魔物の追手から逃れる為に縦横無尽に森を駆け抜けて、方向感覚さえわからなくウラカの方へ行っているのか?それともさらに奥地へと向かっているのかわからなくなった。
体力の限界が近づいた時、目の前に泉を見つけた。
そこは魔の森だというのに清浄な気に満ちていてとても心が安らぎ何時までも見ていたい不思議な気持ちにさせるそんな場所だ。
だが体力の限界でそこで俺の視界はブラックアウトした。
「…ウ…さ……き………」
「ユ………ん……」
何か聞こえる、それに体が揺すられてる。
「ユウマさん起きて下さい」
ドリスの声で目が覚めた。
「ふぅ良かった〜目が覚めた様ですね」
ドリスは安心した様な笑顔を向けてくる。
「ああ、ドリスもう大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です!助けて頂いてありがとうございます」
ドリスはそう言って頭を下げる。
「いや、無事ならそれで良いんだそれでデリアは何処に行ったんだ?」
あたりを見渡すとそこにはデリアは居ない、周りには俺が気絶した為魔力のラインが切れたのか?制止しているケンタウロスゴーレムだけがある。
「デリアさんでしたら泉の方へ行きました」
ドリスに指差された方を向くと確かに泉の近くにデリアの姿が見えた。
俺は立ち上がり近くのケンタウロスゴーレム達を仕舞いデリアの方に歩き出す。
ドリスも続いて付いてくる。
デリアは体育座りをして虚ろな瞳で泉に映った自分の顔を眺めている。
声をかけてみる「デリアさん大丈夫ですか?」
反応はない
「私がさっきから話しかけてもずっとこのままの状態でして…そのどうやら心を閉ざしてしまっているみたいです…」
「そうか…」
正直俺もキツい。だがガイルスに頼まれたんだ。しっかりしないとな。
そう決心しデリアに話しかけようとした時デリアは顔を上げ前を向く。
それにつられて俺とドリスはその方向を向くと、
泉の上を金色の鹿が歩いて来る。
俺は身構え腰の剣を抜こうとしたがドリスが「大丈夫ですユウマさん…多分あれは聖獣です」
聖獣それは魔物ともモンスターとも違う生き物で三大獣の一角の1つで神聖な生き物として語り継がれている。
だからか、何故魔の森の一角が清浄で魔物に襲われないか不思議だったが魔物は襲わないんじゃなくて、襲えないのだったのか。どうやら此処は聖獣の縄張りらしい。
『主らは何の目的で我の領域に訪れた?』
その声はとても澄んでいて中性的な声色だった。
「私達は此処が聖獣様の領域とは知らずに入ってしまったのです、無断での侵入は平にご容赦願います。それととても厚かましいお願いではございますが何卒今しばらくは滞在をお許しくださいませ」
ドリスは傅き首を垂れる。
俺もそれを真似て頭を下げる。
デリアはぼうっと聖獣を見つめるだけで動かない。
『…であるか』
聖獣は暫く考えから『良かろう滞在を許す』
それだけ言うと聖獣は元来た道を戻る様に振り返り泉の上を歩いて行く。
聖獣が見えなくなると「ふぅ何とかお許し下さいましたね」ドリスはそう言い尻餅をついた。
俺も妙な圧迫感から解放されて安堵の息を吹いた。




