42話
防御壁の扉の前には、冒険者、騎士、王国兵が勢揃いしていた。
その後魔法士と弓使いは防御壁の上に登りそこから援護射撃をするようだ。
俺は魔法士として選ばれ同じくデリアも選ばれたので一緒に配置に着く。
まずは冒険者が突撃する為、第二防御壁を抜け第一防御壁の扉の前に移動する。
その後に騎士、王国兵が続く予定だ。
エラキス将軍が馬上から号令をかける。
「全兵士に告げる!この戦を生き残り見事魔族を倒した者には金貨100枚を約束しよう!さあ、者共か「ズズーン」…何だ…何の音…だ?」
その後も断続的にズズーン、ズズーンと音が聞こえる。
「おい!原因を調べ「ズガーン!!」…なんだ!?」
あたりを見渡すと王国軍の真下の地面が陥没した。
「ぎゃあー」「助けてくれぇー」「ぐわっ」
王国兵の悲鳴が聞こえる。
空いた地面の穴から突如ワームが湧き出した。
「くそ!ワームだ!!」
「敵襲!!」
「武器を構えろ!」
指揮官の必死の指示にも王国兵はパニックを起こし聞いていない
その間も次々とワームが王国兵を襲っていく。
異変に気付いた冒険者達が引き返そうとするが、その時魔物が一斉に攻め寄せ第一防御壁があっさりの崩壊した。
冒険者達は助けるどころではなくなり目の前の魔物に定いっぱいの状態になる。
騎士達は直接襲われた訳では無いので比較的落ち着いており王国兵の救助に当たる。
「撃て!エラキス将軍をお助けせよ!」
エラキスの腰巾着の一人が喚き散らしてるがしかし、こう混戦状態だと味方に当たる恐れがある為迂闊に撃てない。
「しかし、中隊長殿付近には味方も居ますので当たる恐れがあります」
「そんなの関係無い!エラキス将軍が討たれれば私にも責任が来るだろうが!」
この中隊長はこの様な時にも自分の保身しか考えていないのか
俺はその様子を酷く冷めた状態で眺めていた。
「ユウマ!」
その時デリアに話しかけられ思わずテンパってしまう。
「えっ!あ、はいどうしました?」
「私みんなの所に行くわ、此処は任せたわよ」
「ちょっデリアさん今彼処は混戦状態で迂闊に近寄ると危ないですよ」
「でも彼処には【緑の風】のみんながいるわ!だから私は行くわ、また会いましょう」
デリアは防御壁から飛び降りて混戦状態になっている冒険者達の元へ走って行く。
「くそ!俺はどうすれば良いんだ」
悩んでいる間にも状況は刻一刻と深刻になっていく。
騒がしかった中隊長は副官に気絶させられ端に寝かされている。
副官は周りに味方のいない場所の魔物に矢を射かける様に指示を出し、残りの者には階段から登ってくる魔物に対処する様に指示を出し、自身も弓を手に射かける。
エラキス将軍は供回と共に砦の中に避難した様だ。
騎士団長のエトワールは部下と共に王国兵を何人か救ったのち「もう此処は終わりだ!皆この場から逃げろ!ウラカへ!」そう言い残しウラカがある西へ向かって馬を走らせる。
その言葉にウラカへ逃げる者、砦に逃げる者、魔物の少ない方へ逃げる者など各々に逃走を開始した。
最早組織立って動けているのは、冒険者の一団と防御壁の上にいる此処だけだ。
どうやらここ数日魔物達の攻勢が弱まっていたのは、穴を掘り地下から迫っていたからの様だと今更ながらに気づかされた。
今攻めて来ている魔物もどれも上位個体とわかる者ばかりだ。
俺は考えた末に【緑の風】のメンバーを救いに向かう事に決めた。
早速防御壁から飛び降りて、アイテムボックスからケンタウロスゴーレムを10体出しその内の一体に乗り【緑の風】がいる、第一防御壁のあった辺りに向かわせる。
何故大量のゴーレムを出さなかったのかそれは魔物達の注意を引く行動だと思ったからだ。
だから少数の足の速いケンタウロスゴーレムを出し向かった。
「頼む、間に合ってくれ!」
必死にケンタウロスゴーレムを操作して近づく魔物には牽制の矢を放ち魔物の間を駆け抜けて行く。
何とか到着した。
10体中6体が此処まで来る途中に失われた。
そこはまさに地獄だった、倒しても倒しても次から次に魔物が襲いかかりキリが無く、
怪我をしても手当をする暇もない。
ケンタウロスゴーレムを仕舞い、通常のゴーレムを5体出し囮にビックウッドアーマーゴーレムを10体出し派手に暴れさせ魔物の注意を引かせる。
意識が逸れた隙にすかさず目の前の魔物を斬り伏せ【緑の風】のメンバーを探しに混戦状態の中に飛び込む。
「くそ!何処だ⁉︎おーい!ベックさーん!デリアさーん!ガイルスさーん!ラントー!ドリスー!何処だー!」
必死に呼びかけるが返ってくるのは悲鳴ばかり。
叫んだからか近くの魔物が一斉に襲いかかってくる。
それをゴーレム達の盾で防ぎその隙に剣で斬り伏せ魔法で撃ち抜く。
それを数回繰り返し襲いかかって来た魔物を全て倒してから、再びみんなを探しに駆け出す。