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ゴーレム使い  作者: 灰色 人生
魔の森編
39/238

36話

 


 数十分後


「まだですかねぇ」


 ユウマは待ち疲れていた。


「どうせあの将軍が渋っているんでしょう」


 と二人で愚痴っているとノックの音がした。


「はい」


「お待たせしました。エラキス将軍がお会いになるそうです」


「わかりました」


 二人は席を立ち扉を出て案内の兵士に従って砦内を進む。


 案内されたのは最上階の会議室だ。


「では、私はここまでですので失礼します」


 兵士は敬礼し立ち去る。


「じゃあいこうか」


「ふぅそうですね」


 緊張しながらも扉を叩く



 コンコン



「入れ」


「失礼します」


 扉を開け中に入るとそこには、騎士団長のラインバックとその副官、隊長たちが左側の席に、右側は王国軍の幕僚達が、そしてユウマ達の正面の上座にエラキス将軍が座していた。



「Eランク冒険者のユウマと申します、この度敵情についてご報告をさせて頂きます」


 ユウマとデリアは頭を下げる。


「ふん、まあいいそれでラインバック騎士団長からある程度の概要は聞いた、お前達にはその補足をしてもらう、そこの席に座れ」


「わかりました」


 言われた通り正面の席に腰を下ろす



 その後これからの対応について協議し合った。


 エトワール騎士団長達、騎士団は撤退を主張し王国軍は籠城し、援軍を待って反撃にでる事を主張し、お互いに引かず話は平行線のまま、1時間が経った。



 この会議の間も散発的に魔物は砦に攻め寄せて来ているが、どういう訳か昨日より攻撃は激しくなく、現場指揮官だけで何とか対応出来るだけの余裕がある。



「相手は魔物だけではなく、その背後には魔族もいるのだぞ!」



「それはわかってはいるが、今作戦がどれほど我が国にとって大事かわからんか!」


 騎士団は何が我が国にとって大事かと思った。この作戦は貴族派が手掛けた作戦であり、追い詰められた貴族派の逆転をかけた作戦である。現にこの王国軍の幹部全てが貴族派である。


 もしこの遠征が失敗に終われば、貴族派は一気に失脚するだろう。



 そのため彼らはなかなか首を縦に振らない。


 一方の騎士団は偶々魔の森が、領地の横にあるだけという理由で、領主である、カルパトネ辺境伯である、騎士団である彼らが派遣されたのである。


 普通なら彼ら騎士団は派遣されないのであるが、それは貴族派である、大臣の要請で首を縦に振るしかなかった。


 彼らの思惑としては王権派であるカルパトネ辺境伯の手勢を、この遠征で少しでも減らしたかったのだろう。



 その為カルパトネ辺境伯は私財を投じて冒険者を、雇い少しでも彼らの負担を減らそうとしたのである。



 エラキスはそんな貴族派の重鎮の一人であるため、やはり首を縦には降らなかった。



「撤退は却下だ。それに今は周りを魔物共に包囲されてるのだ。それは無理というものだろう」


 確かに周りは魔物に包囲されてはいるが、決して突破出来ない訳ではないが、少なからず犠牲は出るだろう、だが今脱出しなければじわりじわりと数を減らされて、最後は全滅するだろう。


「ならば逆にこちらから打って出て魔物を統率している、魔族共を打てば魔物は統率を失い、散り散りになるだろう、あとはそれを打てば事足りる」



「なっ!?それは無茶だ!確かに魔族を打てれば魔物は散り散りになり、打ちやすくはなるだろうがまず打てる保証は何処にもないぞ!」


 エラキス将軍は太々しい態度でエトワールを見下ろすと鼻で笑い一笑にふした


「ふっそんなのやってみなければわからん、それに我が王国軍は精強だ、必ず成し遂げるだろうよ」



「なっそんな理由で無謀な突撃をするのか!?」


 エトワールは顔を真っ赤にして反論したがエラキスは鬱陶しそうにエトワールを見て。


「黙れこの遠征軍の最高指揮官は俺だ!それ以上言うと営倉にぶち込むぞ!」



「クッ‼︎」


 エトワールはそれ以上反論できなかった。


「ふん、わかればいい」


「では、我が遠征軍は明日の朝、魔族に向け攻勢にでる。まずは冒険者が最初に突撃し、魔族までの魔物を排除。そしてそれを騎士団がサポートし、空いた所を我が王国軍が突撃。そのまま一直線に魔族まで突撃、そして打つそれだけだ」


 ユウマはそんなに軍事に聡い訳ではないが、この作戦がめちゃくちゃだとはわかる


 隣を見ればデリアも顔を青ざめさせていた。


 エトワールや騎士団の面々も最早開いた口が塞がらない状態だ。


 王国軍の幹部達はエラキス将軍の作戦を絶賛していた。


「おお!なんと見事な作戦ではないですか、流石はエラキス将軍ですな」


「しかりしかり、我々王国軍の力を持ってすれば魔族なぞ鎧袖一触ですぞ!」


「よし!これにて会議を終了する!明日に備えて英気を養え」


 その後追い出される様に騎士団とユウマ、デリアは会議室を後にした。



 騎士団の面々の顔には怒りを通り越して呆れが浮かんでいた。



「くそ!あの無能がなんて出鱈目な作戦を考えつき、あまつさえ実行しようなぞ狂気の沙汰ぞ!」


 エトワールは怒り一色手をきつく握りしめ体を震わせていた。




 その後エトワールは深呼吸して心を落ち着かせ、ユウマとデリアに向かって頭を下げた。


「すまなかったな、まさか奴があそこまで無能とは思わなんだ」


「いえ、そんな自分が魔族の事を伝えなければこんなことには…」


「それは違うぞ!君は貴重な情報をもたらしてくれたのだ、ただそれを生かすも殺すも指揮官次第と、いうことさ」


 エトワールは悔しそうに呟いた。



「とりあえず、君達は明日に備えて休んでくれ。私達はなんとか作戦の取り下げを願い出て見る。それかもう少しまともな作戦を考えてもらうよ」


 エトワールの顔には疲れが出ていた。


 ユウマは苦労しているんだなと思った。


「わかりました、ではこれで」


「ああ」


 別れの挨拶を済ませてみんなの所へ向かう。


「はぁそれにしても大変な事になったわね」


「そうですね、まさかこんな事になるとは思いませんでしたよ」


「とりあえずこの事を他の冒険者にも伝えて明日に備えなければね」


「ええ」


 ユウマは明日どうすれば良いのか必死で考えたが良い考えが未だ浮かばない。




 そうこうしているうちに砦の外に出た。






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