32話〜魔物の襲撃〜
「左から来るぞ!」
「うえだぁ!!」
「う、腕がぁ俺の腕がぁ!!」
数時間前までは緊張感はあるが、平和な場所だった魔の森の簡易砦は、今やそこかしこで怒号や悲鳴が飛び交う混沌とした場所に変わった。
ー数時間前ー
「デリアさん俺に魔法を教えてくれませんか?」
「どうしたのユウマ急に?」
「いえ、前の魔物の襲撃の時にデリアさんや他の冒険者達が、使っていたのを見て自分でも使ってみたいので」
「うーん教えるのは良いんだけど、そう一朝一夕では習得出来ないわよ」
真剣な目でデリアの目を見つめ
「お願いします!」
頭をさげる
「良いんじゃねえかデリア?ユウマが魔法を使える様になれば戦力アップは間違いねえしよ」
ベックも賛成する
「わかったわ、教えるけどまずは適性があるかの確認ね」
「みんながみんな使えるわけじゃないし、ベックも使えないしね」
シニカルな笑みをベックに向ける
「俺はこいつがあるから魔法は必要ねぇよべ、別に羨ましくなんてねぇからな!」
ベックは顔を背けてしまう
「はい、はいわかったわよ」
「じゃあユウマ適性の確認をしましょうか」
「あのデリアさん一応生活魔法は使えるんですが?それじゃあ駄目なんですか?」
自分のステータスを確認してみる。襲撃で何体か魔物を倒したので上がっているだろう。
ーステータスー
名前:ユウマ
職業:1使役師・2剣士・3未設定
レベル:24
種族:人族
性別:男
年齢:19
体力:3687 魔力:4029
筋力:1629 耐久:1280
敏捷:1095 精神:1587
器用:1246
-スキル-
鑑定Lv4 魔力回復率Lv3
隠蔽Lv4 アイテムボックスLv4
剣術Lv7 生活魔法Lv3
マップLv2 軍団指揮Lv2
鍛治Lv1
-固有スキル-
幸運Lv6 使役Lv4
-称号-
異世界人 小鬼殺し
となっていた。
「そう、じゃあ魔法の適性はあるわね、あとはそうねぇ属性の確認かしらね」
「属性ですか?」
「そうよ、自分が得意な属性、苦手な属性はちゃぁんと把握しといた方がいいわよ」
「私達エルフは精霊魔法と風属性の魔法が得意で、私も例に漏れず属性魔法は風が得意よ」
「属性はいくつあるんですか?」
デリアは顎に手を当てながら
「そうねぇ基本は四大属性に分かれていて風、火、水、土に分かれていて後は派生属性と言われるものと特殊属性、後は希少属性の光と闇だわ。ああ忘れてた後は無属性って言う基本誰でもが使える身体強化魔法があるわ。でもこの無属性魔法は魔法とは言うけど魔法適性がない者も使えるから魔法じゃないんじゃないかって物議を醸し出してるわ、現にベックも使えるしね」
その言葉に落ち込んでいたベックが反応して
「なんだとぉ俺が使えたら可笑しいのか!?」
「はいはい、可笑しくない可笑しくないから」
「そうですよベックさん普通です何処にでもいる平凡な人ですよ」
「いや、ドリスそれフォローになってないから」
ラントは苦笑しながらツッコむ
ベックはドリスの言葉が止めになったのかその場で、体育座りをしてブツブツと言い始めた。「そうか、そうだよな俺は其処らへんに転がる石と同じだ……いや、俺よりも石の方が価値があるよな、それに比べて俺は価値がないんだ、きっとそうだ…」
ちょっと危ない方向に落ち込んでいく
それをフォローするドリスは的確にベックにダメージを与えていた。
「ベックさん、そんな事ないですよほらベックさんは邪魔なぐらい背が高いじゃないですか」
「おい、ドリスそれ以上はやめてやれ」
ラントが見かねて止めに入る
「何でですか?私は一生懸命励ましてるだけですよ?」
何か可笑しいのだろうかとドリスは人差し指を顎に当て首をコテンと可愛らしく傾ける
ガイルスはそれをただ傍観するだけに留めている。
「あの、デリアさんベックさんをあのままにしていいんですか?」
「いいのよ、そのうち立ち直るでしょうし、それよりも今は貴方の事よ」
「そうねぇちょっと待ってね」
そう言いデリアは自分のリュックから水晶を出しユウマに手渡す
「あの、これは?」
「簡単な適性のチェック方法よ、その手に持った水晶に純粋に魔力だけを集めてみて」
そう言われユウマは右手に魔力を集める様にイメージすると水晶の表面がが次第に冷たくなり、遂には凍りついてしまった。
「あの、これは?」
「これは水の派生属性の氷ね、ユウマは氷属性に適性が一番ある様ね、続けてまだ魔力を集めてみて」
言われまた魔力を集めるとだんだんと氷が溶け水晶の表面が黄色くなりバチバチ言い始めた、水晶の表面を雷が走っていた。
「どうやら雷属性にも相性がある様ね、この簡単な属性のチェック方法だと一番得意な属性と二番目に得意な属性しかわからないわ、後はギルドでお金を払えば調べて貰えるわよ、其処で自分が他にどの属性が使えるかと、何の属性が苦手かを確認した方が良いわね」
「わかりました、ありがとうございます」
デリアに頭を下げる
「良いのよ、でも困ったわね」
「どうしたんですか?」
「私は氷と雷の両方使えないのよねぇ」
「そうですか、それは残念です」
がっくりと肩を落とす
「ごめんなさいね、戻ったら使える人を紹介してあげるから、それかここにいる他の冒険者で使える人に教えてもらうかね、でもお勧めはしないは冒険者は自分な飯のタネの技を基本は教えたがらないからね、ましては自分の生命に直線する攻撃手段である、魔法だとね」
「そうですか」
はぁやっぱり人生は甘くないか、帰ったら紹介して貰えるらしいからその人におねがいするか
「まあ、其処まで落ち込まないでよ、私が持っている魔法書を貸してあげるわよ、でも私が持っているのは自分の属性の事の魔法書が殆どだから、それ以外の属性の魔法は、ほんの初歩的な魔法しか載って無かったと思うけどいい?」
「ええ、是非貸して下さい!」
「了解、はいどうぞ」
そう言いデリアは自分のリュックから一冊の魔法書を出し手渡してくれた。
「ありがとうございます」
デリアに頭を下げる
「良いのよ、でも失くさないでよね高かったんだからね」
顔は笑顔だが目は笑ってない、本当に高かったんだなと思った、失くさないのは当然としても汚さない様にも気をつけないとな。
「わかりました、ありがとうございます」
もう一度お礼を言いさっそく魔法書を開いて(この魔法書のタイトルは『魔法大全』と書かれている事から大体の魔法の事は書いてあるのだろう)目録を見て氷と雷が書かれたページを開く。
まずは氷魔法だな
氷魔法、水属性魔法書の派生属性魔法である。
氷魔法の使い手は寒さに耐性ができる。
ここでは簡単な説明だけだが詳しく知りたければコーラン・フェリスポッフ著の氷魔法シリーズの『氷魔法の初級編』『氷魔法の中級編』『氷魔法の上級編』を読もう。
と書かれていた。
次のページには氷魔法の初級魔法が3つだけ乗っていた。
他には載っていない様だ、他の属性の魔法呪文を見ても3つしか載っていなかった。
内容は
【アイスシールド】自分の正面に氷の盾を作成する。
【アイスニードル】地面から氷の棘を生やす。
【アイスボール】氷の球を撃ち出す。
と書かれている。
さっそくアイスシールドを試すために周りに人が余りいない場所に移動する、もちろん周囲は十分に警戒しながらだ、なにせ此処は魔の森なのだから
まあ単独行動はこの場合褒められた事ではないが何せ初めての(生活魔法は覗く)魔法の発動だ、何が起こるかわからない可能性が高い。
それに切り札になるかもしれないため大勢の前では使いたくはない。
もう此処ら辺で良いだろう、さっそく使ってみるか。
「我が眼前の敵の攻撃を阻め《アイスシールド》」
呪文を唱えると縦2メートル、横1メートル、厚さ5cmの氷の盾が出来上がった。
へぇこれが魔法かさっそくステータスを確認してみる。
ーステータスー
名前:ユウマ
職業:1使役師・2剣士・3未設定
レベル:24
種族:人族
性別:男
年齢:19
体力:3687 魔力:4029
筋力:1629 耐久:1280
敏捷:1095 精神:1587
器用:1246
-スキル-
鑑定Lv4 魔力回復率Lv3
隠蔽Lv4 アイテムボックスLv4
剣術Lv7 生活魔法Lv3
マップLv2 軍団指揮Lv2
鍛治Lv1 氷魔法Lv1
-固有スキル-
幸運Lv6 使役Lv4
-称号-
異世界人 小鬼殺し
おお!ちゃんと追加されてるな。
よし他のも試すか
「我が敵を撃ち抜け《アイスボール》」
手の平から直径、約15cmほどの氷の球を前方に打ち出す。
目の前の木にぶつかり穴をあける。
「おお!出た」
手の平を思わず見つめるが、変わりはない。
「よし、次だな我が敵よ刺し貫け《アイスニードル》」
唱えると地面から氷の棘が数本地面から突き出した。
ふむこんな感じか。
上級の魔法はもっと威力も上がるらしいしな、それに比例して呪文も長くなるらしいけど
もっと魔力を込めたら威力も上がるのかな?
いや今はまずいな上がり過ぎて大変な事になると魔物の襲撃と勘違いされるな。
そうだこれ呪文を略式出来ないか試してみるか、
「《アイスニードル》」
地面から氷の棘が突き出した。
「………」
うん、あっさり出来たね、まあ良いけど何だろうこの虚しさはもっとこう、努力した末にたどり着くみたいな、そんな感じを求めてたのにまあ、文句言う事ではないけど、なんかこう釈然としないよね
ステータスを見てみると
ーステータスー
名前:ユウマ
職業:1使役師・2剣士・3未設定
レベル:24
種族:人族
性別:男
年齢:19
体力:3687 魔力:4029
筋力:1629 耐久:1280
敏捷:1095 精神:1587
器用:1246
-スキル-
鑑定Lv4 魔力回復率Lv3
隠蔽Lv4 アイテムボックスLv4
剣術Lv7 生活魔法Lv3
マップLv2 軍団指揮Lv2
鍛治Lv1 氷魔法Lv1
略式呪文
-固有スキル-
幸運Lv6 使役Lv4
-称号-
異世界人 小鬼殺し
となっていた。
その時魔物の襲来を告げる銅鑼の音が鳴り響いた。
急いで砦に戻と夥しい数の魔物が迫っていた。
しかも今までの襲来と違い足並みを揃えてまるで軍隊みたいだ。
【緑の風】のみんなと合流する。
「まずいわよ、これは多分だけどあの魔物たちは魔族に率いられているわよ」
魔族とは数百年前に邪神が率いた軍勢である。
魔族にも色々種類はあるが、我々人間種の人族、エルフ族、ドワーフ族などと敵対する種族をひと纏めにした、呼び方である。
魔族は邪神が創造した魔物たちを率いる、能力があり魔族に率いられた魔物は、通常の魔物よりも強化される。
素早く王国軍、騎士団、冒険者が振り分けられた場所に配置する。
非戦闘員と開拓団は砦の地下に避難させ、そこに少数の冒険者を護衛につける。
まず王国軍は外側の防御壁の木で出来た柵に配置し、長槍で柵の隙間から近く魔物を刺し貫く部隊と、石で出来た防御壁の上から弓で援護する2部隊に分かれた。
騎士団は騎馬に乗り何時でも突撃する様に準備をする。
残った冒険者も防御壁の上から魔法と弓で援護をする。
迎撃態勢が整った所で、魔物達はこの砦の周りをぐるっと囲んだ。
勿論ウラカには早馬と伝令鳩も飛ばしている。
砦の上からはエラキス将軍が顔を出し兵士を鼓舞する。
「勇猛なる王国軍よ、今こそ貴様らの日頃の訓練の成果を発揮する時だ!奴ら獣共に我々王国軍の精強さを見せつけてやれ!」
エラキス将軍の鼓舞王国軍は、戦意を高める。
まず、魔物の軍勢は様子見の様にグレイウルフとゴブリン、スライムなどの低級の魔物で攻めてきた。
幾ら低級の魔物達とはいえ数はとてつもなく多い。
防御壁からは弓や魔法を撃ち援護する、バリスタもあるがそれは強力な魔物用に使う様だ。
まさかこんなに早く習得したばかりの魔法を使うとは、思わなかったなと思いながらユウマも魔法を放つ。
「えっ⁉︎ユウマもう魔法を放てる様になったの⁉︎しかも略式呪文で⁉︎」
デリアは驚愕し弓での攻撃を止めてしまう。(魔法はまだ温存する様だ)
「おい!デリア今はそれよりも一体でも多くの魔物を射ぬけ!」
ベックの声にはっとして、デリアは弓に矢を番えて放つ。
見事にゴブリンの眉間に命中させる。
上からもファイヤバードやビッグバットやハーピーも襲来する。
第1波が終わると魔物は此方を休ませない様にすぐさま第2波を放つ。
第2波にはオーガやトロールなどの大型の魔物も含まれ、より一層攻防が激しくなるだろう。
魔物の数の暴力は凄まじく、遂に外側の木で出来た柵が一部壊されそこから魔物が突入してくる。
「魔物が入ってきたぞぉ!!白兵戦用意!剣を抜けえぇ!」
防御壁の門が開き騎馬隊が出る
柵の中に入って来た、魔物を一撃離脱戦法で足止めしその間に柵の補強をする。
そんな攻防が数時間続いた。
ー数時間後ー
日が暮れ始めた頃に漸く魔物が退いていった。
だが魔物の中に入って夜目が利く種類もいる為、夜襲を警戒しなくてはならない。
ユウマ達Fグループの歩哨の順番は朝方になったので、素早く夜食を済ませて就寝する運びとなった。
「ふぅ何とか今日一日を乗り切ったな」
ベックの言葉に皆頷く。
「よし、さっさと食って寝て明日に備えるぞ」
ベックの意見に賛成して素早く夜食を済ませて就寝する