31話
部隊の再編も終わり、予定を少し変更し先に防御壁の構築をある程度完成させる事にする。
王国軍は無事な者や軽傷の者600名が周辺の警戒に当たり、残りの重傷者とそれを看護する者は陣の中央へ、騎士団の重傷者や冒険者、開拓団の重傷者も同じく陣の中央へそして残りの者全員で防御壁の構築を急ぐ。
まだ石材などの資材は届いてないので伐り倒した木材を使う。
この魔の森は魔素と呼ばれる空気中の魔力が多分な為、木の成長が異常で普通の木の3倍の大きさと太さ、そして丈夫さを併せ持っている為、高値で取引される。
今回はその魔の森の木を使う。
ある程度こまめに休憩も挟みながらも、日が暮れるまで作業は続き、ある程度柵が完成したので作業を切り上げ用意していた、晩御飯を配り就寝する。
「んん〜今日はよく働いたなぁ、あぁ疲れた疲れた、ホントしんどかったぜ」
ベックは肩のコリをほぐすように腕を回しながら呟いた。
その声にラントが返事をした。
「そうだなぁ、でもベックはまだ人族だか俺みたいなホビール族より力と耐久力があるからいいだろう?俺とデリアの種族は力があまりないからなぁ」
「そうよねぇ、まあその分私達エルフは魔力と感知力に優れてるし、ラント達ホビール族は素早さと危機察知能力が優れてるからね、どの種族にも一長一短があるわよ」
「まあ、俺たち人族の場合どれもが平均だからあまり、これが優れてるって者はないなぁ、強いて言えば適応力か?」
ベックの疑問にガイルスが答える。
「ああ、そうかもな俺たち人族はこの大陸に広く分布しているものな、そう考えれば俺たち人族以外の種族はまあ、国柄以外にもいない地域とかが多いものな、例えばエルフ族は基本森林地帯にいてドワーフ族は山脈、ホビール族は洞穴と大体がその辺りを根城にしている種族だからな、それに比べて人族は大体何処にでもすぐに自分達の居場所を作るからな」
「へぇ、いつもは寡黙なガイルスにしてはいやに饒舌じゃねえか?」
ドリスも加わる
「そうですよ、珍しいですね?」
「ガイルスさんは普段そんなに寡黙なんですか?」
「おう!そうだぜユウマあまり、喋るタイプじゃないな」
「別に俺だって喋りたかったら普通に喋る」
「おうおう、そう拗ねるなよガイルス」
「そうよガイルス」
「ガ、ガイルスさん元気出して下さい」
慌ててドリスもフォローする
「そうっすよガイルスさん、あんたみたいな大男が拗ねると気持ち悪いので元気出して下さい」
「あ、ラントそのフォローは「なんだと!ラント誰が気持ち悪いだと!」あぁ〜あ」
「ちょっ何で俺だけ⁉︎しかもいつも物静かなのに⁉︎」
その後ラントはガイルスに追いかけられホビール族の健脚を活かして逃げていたがガイルスの動物的勘によってその後数分で捕まり折檻をうけた。
その後解散し、各々のテントで休んだ。
-翌朝-
起床用に予め通達された銅鑼の音が鳴り、皆起き始めた。
その後朝食を食べまた昨日の様に作業に入る、昼頃になると後発組と物資が到着した、後発組である王国軍の数はおよそ3000人程で、新たな開拓団の数は1,000人程である。
その後重傷者をウラカに送り届ける事にそして、その護衛に王国軍から200名ほど抽出された。
それを見送り、配分された昼食を食べ新たに加わった、開拓団と共に作業を開始した。
-2週間後-
あっという間に2週間が過ぎ運び込まれた、資材を使い防御壁が完成した。
最初に作った柵はそのままで二重の防御壁ができた事になる。
防御壁の高さは4m程でこれなら比較的大きな魔物でも、容易くは超えれない筈だ。
まあ、それでも油断は出来ない魔の森の魔物は普通の森に生息している、同じ種族の魔物よりも狡猾で強いのだ。
その後更に1週間かけ簡易の砦が出来上がった。
その間にまた魔物の襲撃があったが、最初の時よりも人数が多く警戒も万全だった為に、比較的容易に撃退できた。
それに追加で今度はウラカ近辺の街から、冒険者が依頼書を見て参入したので戦力は寧ろ上がった。
だが順調に進んだのは其処までだった。
その光景を遠くから見つめる紅い瞳には誰も気づく事なくその日を迎えた。
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