30話
翌朝
朝食を済ませテントの片付けにはいる
いよいよ今日は魔の森に入っていく。
皆入念に武器、防具の手入れを行う。
そうこうしてるうちに出発の時間が来た。
今回は王国軍が先に先行して開拓予定地を定め、その周辺の魔物などの一掃を行う。
予定通りに王国軍が先行し、俺たち冒険者と開拓団、騎士団は合図があり次第騎士団を先頭にして進む。
3時間程待機していると、王国軍の合図の白の狼煙が上がった。
狼煙は今回3種類用意しており白が安全の確保、黄色が苦戦や警戒、赤が撤退や危険を表している。
今回は白つまり安全が確保されたのでそこが開拓予定地という事だ。
合図のあった狼煙の方角へ進路をとり一団は進む。
暫く進むと王国軍の姿が見えた。
何人か怪我人は出たが死者は出なかったらしい。
魔の森と言ってもここはまだ、ほんの入り口の為そこまで強力な魔物は出ないが、警戒は怠れないなにせ数が違う。
それから開拓団は荷台に積んでいたゴーレムを降ろし、斧をもたせてきの伐採をさせていく。
それにあれは馬型のゴーレムか?それに倒れた木を引きずらせ集積場所に運ばせる。
ある程度木が伐採したところで開拓団がシャベル片手に、残った木の根元を引き抜き、整地させていく。
それを俺たちEランク以下の冒険者達も手伝う。
はあ俺もゴーレム使おうかな?いやそうすると余計に酷使されそうだな。
それにゴーレムを使うと怪しやられそうだからな。
ゴーレムは基本1人に付き一体しか動かせない、それに使役を使ったゴーレムとは体格、動きの良さや馬力などが違うので新型のゴーレムかと、疑われる可能性もある、そうすると研究所や軍からも目をつけられそうだからな。
まあ地道に頑張るか、周りは俺たちよりも高位の冒険者や王国軍それに騎士団が周囲の警戒をしてくれてるし、大丈夫だろうもしもの時には使うがそれがない事を祈るばかりだな。
作業がひと段落して休憩に入ってると、開拓団達の会話が聞こえた。
「いやぁ一時は村から連れてこられて、魔の森に行くと聞いたときは命がないと思ったがどうやら大丈夫そうだな」
「そうだな、それに賃金も悪くないしな」
「ああ、そうだなこれで稼いだ金で恋人にプロポーズ用の指輪を変えるぞ」
「はは若いっていいなぁ」
「今のカミさんも昔は良かったんだがなぁ、今はすっかりおばちゃんだぜ」
「「はっはっは」」
「ちげぇねぇ、わぁはっはっは」
楽しそうな会話が聞こえたが何かフラグが聞こえたような?いや俺は何も聞いてないぞ、そうだうん、きっと聞こえてないな。
心の中でそう言い訳してると外縁部の王国軍から警報が鳴った。
彼らは笛を持ち緊急時などに笛を鳴らし警戒を促す。
ピーピーピー
「魔物共が来たぞ、全員戦闘準備」
馬上から騎士が辺りに指示する声が聞こえてくる。
俺たちも急いで戦闘準備に入る
「魔物多数接近中、構成はブラッドベア、クレイジーモンキー、ファングボア、他多数!」
ブラッドベアはランクCクラスの凶暴な熊に似た魔物で、体毛は血のように赤く火属性の魔法を使う、厄介な魔物だ。
クレイジーモンキーはランクDクラスの魔物で体長は1m50とそれほどでかくないが、恐れを知らず我武者羅に集団で突撃してきて、例え腕を斬られ様が腹を裂かれ様が御構い無しに此方の息の根を止まらせぬ限り襲いかかってくる、とても厄介な魔物である。
それが大挙して押し寄せてくるから流石魔の森とも言えなくはないが、今はそれよりも自分の事だ少しの油断で死に繋がる場所にいるのだから
ベックが指示を出す。
「よし、何時ものように俺とガイルスが前衛、ドリスとデリアが後衛に分かれる、そしてユウマとラントが遊撃だ!」
言われた通りに素早く動く、俺とラントはベックとガイルスが抜かれたらそれを阻止し、2人が危なくなればそれを助ける、重要なポジションだ。
そうこうしているうちに、一番外縁部にいた王国軍と魔物の群れがぶつかる、怒号や剣戟の音、何が潰れる音そして悲鳴も時折聞こえてくる。
その時背後からも悲鳴が聞こえて振り返ると、そこにも魔物が大挙して押しさせてきていた。
王国軍は全て前から来る群勢に当たっており、騎士団はそれの援護をしていたので直ぐに反転はできないだろう、だがそれに高位の冒険者は素早く反応して開拓団を守るべく行動を開始していた。
「おらぁ」
「せいっ」
「くらえ!」
次々と襲いかかる魔物達から開拓団を守る。
俺と【緑の風】のメンバーも開拓団を守るべく魔物に斬りかかる。
まずはデリアが前方から来る魔物に弓を射る、撃ち漏らした魔物をベックとガイルスが迎撃し、ドリスが支援魔法を掛け援護する、ラントが投げナイフを投げベックやガイルスの死角の魔物を牽制する、俺も剣を抜きデリアとドリスに魔物が近づかないように魔物を斬る。
ベックを抜けてきたゴブリンを正面に見据え棍棒を振りかぶろうと腕を上げた所を素早く距離を詰め横に一線、振りかぶったままゴブリンは地に倒れ伏す。
それから数分後突撃体制をとった騎士団が魔物にに騎兵突撃を敢行する。
蹂躙される魔物中には反撃して騎士を馬上から叩き落とす魔物もいたが直ぐにそいつも別の騎兵に槍で貫かれ絶命する。
その後暫くして魔物が引いていき辺りに静寂が戻る。
直ぐに周りを警戒する者と救護に当たる者に分かれて行動する。
俺たちFグループは、救護を担当する事になった。
今回遠征軍には非戦闘員である医者や助手も、連れてきているのでその者達の指示に従い迅速に手当をしていく。
中には助からない者もいたが一命を取り留めた者もいる。
➖騎士団長エトワール➖
「被害報告を」
「はっ王国軍は死者34名、重軽傷者248名、冒険者は死者29名、重軽傷者127名、開拓団は死者は0名、重軽傷者67名、騎士団は死者12名、重軽傷者43名、非戦闘員は全員無事です。」
「そうか、ご苦労下がってよい」
「はっ失礼します」
報告に来た騎士は敬礼して司令部の天幕から出て行く。
この場には、騎士団の騎士団長のエトワールとその副官、部隊の隊長が参加している、王国軍からは今回の遠征軍を率いてきたエラキス将軍にその副官、それに大隊長、中隊長が出席している。
この国の軍の階級は
元帥→大将軍→将軍→軍団長→師団長→旅団長→大隊長→中隊長→小隊長→兵士長→上級兵士→兵士となっている。
因みに兵士長は軍に入ってから10年、上級兵士には5年経ったら自然と昇格する事が出来る。
士官学校を卒業してたら小隊長からのスタートになるが基本士官学校には貴族の子弟しか通ってなく、平民が通って卒業しても小隊長からのスタートだがそれよりも出世するのは時間がかかり旅団長止まりだ。
基本平民は旅団長止まりであるが中には優秀な才能を持っていて師団長になった者もいる。
だが中には突出した才能があり将軍にまで昇りつめた豪傑がいたがその者は例外と言ってもいいだろう。
勿論優秀だったり試験を受けたり武勲を立てたらそれに見合った階級に昇格する。
因みに騎士団は所属する場所により変わるが概ねは
騎士団長→副団長→部隊長→騎士長→上級騎士→騎士→従士となる。
騎士見習いには貴族の子弟なら直ぐに平民なら従士からのスタートになる。
騎士にはだいたい従者から2年前後で騎士長には5年でなる。
従者とは騎士見習い見たいな者だ。
勿論此方も武勲や活躍したら昇格する。
だが基本平民は騎士長止まりでよっぽどの才能がないと部隊長にはなれない。
やはりこの世界は階級社会である。
「ふむ、思ったよりも早い段階で襲撃を受けたな」
エトワールの言葉にエラキスも
「ああ、そうだなだがまだ想定内だこれより周囲の警戒を厳にして早目に柵を建てるぞ」
「「「はっ」」」
エラキスの言葉に各々が了承の返事をし、天幕から出て行く、それを黙ってエトワールは眺めてると横に座っている副官が「どうしました?団長何か気になることでも?」
「いや、何故このタイミングで遠征軍を王国は組織したのか、とな」
普通この規模の軍を興すなら麦などの収穫後だが今回はそれよりもだいぶ早く種蒔きが終わった直後に収集された。
この規模なら貯蔵していた食料で十分に足りるが、だが今回の遠征軍の目的は魔の森の一部を開拓して、そこに砦を建て魔物の我が国への侵入を阻むのが目的だと聞いたがそれにしては派遣する人数も、少ない勿論これは先遣隊で後から追加の部隊が来るとは聞いてるが、それにしてもあまりにも計画が杜撰だ、それに魔の森は北東に位置する帝国に近くいたずらに相手を刺激する事になる。
はぁ、また政治なのだろうな現場の苦労もわかってほしいのだが言うだけ無駄かあのアホ共には、自分の利権の事しか考えてないだろうな。
それでどれだけ辺境伯様が苦労している事か、今回の冒険者の依頼も辺境伯様が自腹を切ったのに中央の奴らは口だけで銅貨一枚も出してないだろうな。
まあでも、今回派遣された王国軍は全員が正規兵なのが唯一の救いか、これが徴兵された農民だと目も当てられん、奴らもそれだけ魔の森の危険性がわかっていることだろう。
まあ、わかっているのに今回の遠征軍があるんだがな。
次送られてく部隊もどうか正規兵であればまだ、いいがな流石に大人数の農兵ではこの魔の森では役立たずどころか足手まといだからな。
「まあ、中央の腐敗貴族共のせいですよね」
「やはり、お前もそう思うか」
「ええ、それしか考えつきません」
辺境伯様や他のまともな王権派の貴族が中央の腐敗貴族共である、貴族派を切り崩しにかかっているがそれが何時になるやら、そう言えばこの前は伝統派の貴族の令嬢が辺境伯様に訪ねて来たな。
いや、今は関係ないか。
「よし、儂等も部隊の再編に取り掛かるぞ」
「はっ」
そう言い天幕から出て部隊の騎士団の方に向かう。