196話〜ウラカ防衛戦⑥〜
勇者達の側には聖騎士達が、周りを固め近付く魔物を倒している間に、勇者達がスキルを放つ時間を稼ぐ。
その間に勇者達がスキルを放つ準備をと唱えて、範囲攻撃を開始した。
それを見て帝国兵達は雑談する。
「やっぱり勇者のスキルは凄いな」
「ああ、普段偉そうにするだけある」
「これでまたルパメント聖王国の影響力が増すんじゃないか?」
「どうだろうな?幾らか献金をして勇者が派遣されたと思うが……王国への侵攻作戦も失敗したし、暫くは復興とかで忙しくなりそうだ」
「ああ、おっとあんまり喋っていると怖い隊長殿に怒られそうだ」
「そうだな」
彼らの隊長と思われる者が近くを通ったので、二人は話すのを止める。
最初の方は順調に討伐が進んでいたが、次第に勇者の一撃では死なない魔物が現れ始めた。
討ち漏らしは、聖騎士が請け負っていたが、それも数が増えてきて、とても聖騎士だけでは捌き切れる数ではなくなって来た。
帝国軍も協力して倒すが、数の暴力の前に飲み込まれてしまう。
最初に犠牲となった部隊は、消耗していた獣人部隊である。
彼らは魔物の波に飲み込まれ、部隊単位で消滅して行く。
ルパメント聖王国の救援部隊は、勇者の安全を第一に考え、帝国軍を見捨てて逸早く離脱を開始した。
その為に何とかギリギリで持ち堪えていた、戦線が完全に崩壊し帝国軍は次々と魔物の餌食になる。
「司令官!ルパメント聖王国軍が逃げ出しました!」
「なっ!クソッタレ!」
「報告します!獣人部隊が全滅!これ以上戦線を維持出来ません!」
司令部には悲報が次々と届く。
「仕方ない。此処を放棄して後方の防衛陣地に退却する」
「はっ!」
「負傷者はどうしますか?」
「動ける者だけ動かせ。他は見捨てる他ない」
司令官が非常な決断を下す。
こうして帝国軍は、魔物の押さえ込みに失敗し領土内に魔物の侵入を許してしまう。




