184話〜東部防衛戦⑦〜
川にたどり着くと小休止を取る。
火を使うとその煙で居場所が判明する為に、火を焚く事は出来ずに日干しした魚などを食べて、活力を回復させる。
冒険者達はまだ余裕があるが、村人達は既に疲労困憊と言った状態である。
だが、それでも動いて貰わなければならない。
10分ほど休むと、移動を開始する。
痕跡は出来る限り隠して来たが、時間がないので万全ではない。
辺境伯も助けを出したいが、出せない状況である為に援軍は期待出来ない。
貴族の中には冒険者を使い捨ての道具だと勘違いする輩もいるが、それは大きな間違いである。
確かにランクの低い冒険者だと、村人と変わらない者達もいるが高位の冒険者になると代わりになる者が少なくなる。
王国内には多くの森や山が存在する。
そしてこの大陸は人だけの世界ではない。
魔物と呼ばれる存在が数多く存在し、日々人々の生活を脅かしているのである。
森や山から出て来る魔物の討伐、あるいは森や山に入って行っての間引きなどを冒険者は行っているのである。
それらの活動により、爆発的な魔物の発生を未然に防ぐ効果があると言われている。
仮に世永冒険者達がいなくなれば、その穴を突いて魔物が森や山から出て来て、生活圏に侵入し街を飲み込むだろう。
実際に過去に冒険者を使い捨ての様に、戦争などに駆り出し、消耗させ魔物により滅びた国も過去には存在する。
その為に各国はそれを教訓に、冒険者の適度で適切な使い方を模索して行ったのである。
中にはそれを理解していない愚か者もいるが、ルーセント辺境伯はその辺をしっかりと弁えているのである。
なので派遣された冒険者達も、見捨てられたとは思っていないが救出が難しい状況だとは理解していた。
「休憩は終わりだ。行くぞ」
冒険者の合図によって、村人達はなんとか立ち上がり動き始めた。




